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#7 パソコンの秘密②
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閉め切った家の中は、うだるような暑さだった。
窓を開けても生ぬるい空気しか入って来ないので、琴子は家中のエアコンをつけて回った。
シャワーを浴びたいところだったが、用事を先に住ませておくことにした。
夫の帰りはどうせ深夜だろうが、用心に越したことはない。
得意先回りの途中で、突然家に寄らないとも限らないからだ。
正一は、3LDKの住居の中の一番狭い部屋を自分だけの城にしている。
妻や子に立ち入ることを許さない、いわば書斎兼仕事部屋のようなものである。
思い切ってドアを開けると、問題のパソコンが机の上に置いてあるのが見えた。
画面は開いたままである。
コードをコンセントにつなぐと、琴子は震える指で起動ボタンを押した。
明るくなった画面の中央の長方形の枠の中に、和夫に教えられた通り、パスワードを入力する。
やがて、”ようこそ”の文字が浮かび上がり、しばらくクルクルが続いた後、メインメニュー画面が立ち現れた。
デスクトップには、仕事関係のフォルダがてんでばらばらに散らばっている。
どれだろう?
目を凝らしてひとつひとつ見ていくと、名まえのないフォルダが右下の隅に見つかった。
クリックして、開けてみた。
日付のような数字のついた、動画らしきものが並んでいる。
全部で10個ほど。
もしこれが日付だとすれば、ちょうど和夫の事故があった直後からのもののようだ。
試しに、一番最近のものを開けてみた。
3日前の日付である。
赤っぽい部屋が映った。
ベッドの上で、何かが動いている。
画面を拡大した琴子は、そこでひっと息を呑んだ。
こちらに背を向けて、裸の男と女が絡み合っている。
女の尻の上に、男が覆い被さっているのだ。
後ろ姿しか見えないが、すぐにわかった。
この体つき。
男は正一に間違いない。
正一の裸体に隠れて、女の顔は見えなかった。
よく発達した尻と、垂れ下がった豊かな乳房が時折画面に映るだけだ。
「なによ、これ…」
気がつくと、琴子は乱暴にPCをシャットダウンしていた。
女の正体を見極めるには、他の動画も確かめる必要がある。
それはわかっていた。
が、今の精神状態では、とても耐えられない。
そう思った。
和夫の暴走。
正一の不倫。
ひどい。
こんなの、ひどすぎる。
もう、踏んだり蹴ったりだ。
いったい私が、何をしたっていうの?
よろめきながら居間に戻り、ソファの上に身を投げ出した。
スマホが鳴ったのは、その時だ。
テーブルの上から拾い上げ、画面をひと目見た琴子は、弾かれたようにソファに座り直した。
和夫からLINEメッセージが来ている。
明日は、とびっきりエロい下着をつけてきて。
いつか親父が海外出張の土産に買ってきたの、あっただろ?
隠すなよ。
俺、知ってるんだから。
じゃ、待ってる。
「よりによって、こんな時に…」
琴子はソファにスマホを放り出すと、両手で顔を覆って泣き出した。
窓を開けても生ぬるい空気しか入って来ないので、琴子は家中のエアコンをつけて回った。
シャワーを浴びたいところだったが、用事を先に住ませておくことにした。
夫の帰りはどうせ深夜だろうが、用心に越したことはない。
得意先回りの途中で、突然家に寄らないとも限らないからだ。
正一は、3LDKの住居の中の一番狭い部屋を自分だけの城にしている。
妻や子に立ち入ることを許さない、いわば書斎兼仕事部屋のようなものである。
思い切ってドアを開けると、問題のパソコンが机の上に置いてあるのが見えた。
画面は開いたままである。
コードをコンセントにつなぐと、琴子は震える指で起動ボタンを押した。
明るくなった画面の中央の長方形の枠の中に、和夫に教えられた通り、パスワードを入力する。
やがて、”ようこそ”の文字が浮かび上がり、しばらくクルクルが続いた後、メインメニュー画面が立ち現れた。
デスクトップには、仕事関係のフォルダがてんでばらばらに散らばっている。
どれだろう?
目を凝らしてひとつひとつ見ていくと、名まえのないフォルダが右下の隅に見つかった。
クリックして、開けてみた。
日付のような数字のついた、動画らしきものが並んでいる。
全部で10個ほど。
もしこれが日付だとすれば、ちょうど和夫の事故があった直後からのもののようだ。
試しに、一番最近のものを開けてみた。
3日前の日付である。
赤っぽい部屋が映った。
ベッドの上で、何かが動いている。
画面を拡大した琴子は、そこでひっと息を呑んだ。
こちらに背を向けて、裸の男と女が絡み合っている。
女の尻の上に、男が覆い被さっているのだ。
後ろ姿しか見えないが、すぐにわかった。
この体つき。
男は正一に間違いない。
正一の裸体に隠れて、女の顔は見えなかった。
よく発達した尻と、垂れ下がった豊かな乳房が時折画面に映るだけだ。
「なによ、これ…」
気がつくと、琴子は乱暴にPCをシャットダウンしていた。
女の正体を見極めるには、他の動画も確かめる必要がある。
それはわかっていた。
が、今の精神状態では、とても耐えられない。
そう思った。
和夫の暴走。
正一の不倫。
ひどい。
こんなの、ひどすぎる。
もう、踏んだり蹴ったりだ。
いったい私が、何をしたっていうの?
よろめきながら居間に戻り、ソファの上に身を投げ出した。
スマホが鳴ったのは、その時だ。
テーブルの上から拾い上げ、画面をひと目見た琴子は、弾かれたようにソファに座り直した。
和夫からLINEメッセージが来ている。
明日は、とびっきりエロい下着をつけてきて。
いつか親父が海外出張の土産に買ってきたの、あっただろ?
隠すなよ。
俺、知ってるんだから。
じゃ、待ってる。
「よりによって、こんな時に…」
琴子はソファにスマホを放り出すと、両手で顔を覆って泣き出した。
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