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#7 奇妙な依頼③
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「編集長…今起きたんですか?」
現れたのは神宮寺清磨34歳。
この夢幻社の社長兼編集長だ。
「なんだうずらじゃないか? いたのかおまえ」
生あくびしながら入ってくる編集長。
いたのか、とは失礼な。
まあ、私の場合、まだ入社して間がないから、確かに、記者というより、雑用係に近いんだけど。
「ちょうど今、手が空いてて、きょうはあたしが電話番なんです。あ、ところで、さっきお客さんが」
「客? 誰だその物好きは?」
「これです」
編集長席にどっかり腰かけた清磨に、私は油紙ごと書類をつきつけた。
「ところで編集長、ちょっとお聞きしたいんですが、特攻が行われてたのって、確か終戦間際でしたよね」
そう。
私の記憶では、桜花も回天も、実戦で使われたのは、照和19年になってからじゃなかったっけ。
少なくとも、ミッドウェー海戦やガダルカナルで使われたなんて話は、聞いたことがない。
なのに、名簿は照和17年、聖暦1942年のミッドウェー海戦から始まっているのだ。
「特攻? なんだ朝っぱらから藪から棒に」
「朝じゃありません。もうお昼の2時です。それより中を見てください。それ、特攻兵の名簿と手記なんですけど、ちょっと嘘っぽいというか…」
「特攻隊員の名簿と手記? いったいだれがそんなものを…。むむむ、これは」
編集長が逆さまにして振ると、机の上に、油紙の中から小さな紙切れが舞い落ちた。
「陸軍中野学校分校 事務局長 蒲生辰二郎…。ほお、あの蒲生さんか。これは珍しい」
現れたのは神宮寺清磨34歳。
この夢幻社の社長兼編集長だ。
「なんだうずらじゃないか? いたのかおまえ」
生あくびしながら入ってくる編集長。
いたのか、とは失礼な。
まあ、私の場合、まだ入社して間がないから、確かに、記者というより、雑用係に近いんだけど。
「ちょうど今、手が空いてて、きょうはあたしが電話番なんです。あ、ところで、さっきお客さんが」
「客? 誰だその物好きは?」
「これです」
編集長席にどっかり腰かけた清磨に、私は油紙ごと書類をつきつけた。
「ところで編集長、ちょっとお聞きしたいんですが、特攻が行われてたのって、確か終戦間際でしたよね」
そう。
私の記憶では、桜花も回天も、実戦で使われたのは、照和19年になってからじゃなかったっけ。
少なくとも、ミッドウェー海戦やガダルカナルで使われたなんて話は、聞いたことがない。
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「特攻隊員の名簿と手記? いったいだれがそんなものを…。むむむ、これは」
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