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第4部 暴虐のカオス

#7 サバト①

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 その夜、由羅は自分の部屋で冬美を待っていた。
 念入りに風呂で体を洗い、香水を振りかけた。
 あえて服は着なかった。
 バスローブの下で、悲しいほど乳首が勃っているのがわかった。

 冬美はかなり遅れてやってきた。
 疲れているのか、かなり不機嫌そうだった。
 スーツを脱ぐと、無言でシャワーを浴びにいった。
 戻ってきたときには、すでに革のボンテージ風の衣装に着替えていた。
「杏里の邪魔したんですって?」
 寝室に入るなり、いった。
 眉間に皺を寄せていた。
 本気で怒っているのだ。
「もう充分だと思ったからさ」
 少しひるんで、由羅は弁解した。
「杏里、その前にひどい怪我したばっかりだったし、ひょっとして、死ぬかもしれないって思ったんだよ」
「あなた、いつからそんなに優しくなったの?」
 そういうなり、冬美の平手が舞った。
 由羅の右頬が派手な音を立てて鳴る。
「その中途半端な優しさが、タナトスの苦しみを長引かせることになる。そのくらい、わかってるはず」
「ごめん」
 由羅はうなだれた。
「うち、駄目なやつなんだ。だから、お仕置きして・・・」
「そうね」
 冬美が由羅のバスローブを剥いだ。
 ベッドの上に準備されている拘束具を、手首と足首に嵌める。
 壁を背に由羅を立たせると、拘束具と支柱を鎖でつないだ。
 由羅は全裸である。
 両手と両脚を大きく広げ、磔(はりつけ)にされている。
 冬美が鞭を取り出した。
 手首のスナップを利かせ、由羅をぶつ。
 乳房と乳房の間に赤い筋が走った。
 由羅がうめく。
 鞭が振るわれるたびに、呻き声が愉悦の喘ぎに変わっていく。
 太腿の間が濡れて光っている。
 愛液が溢れてきたのだ。
 由羅の肌が赤い筋に覆われていく。
 体中真っ赤になったところで、鞭を置き、冬美は由羅に近づいた。
 髪の毛をつかみ、顔を仰向かせると、いきなり唇を吸った。
 由羅の口の端から唾液が漏れ、糸のように顎を伝う。
 舌と舌が激しく絡み合う。
 冬美の指が、むき出しになった由羅の性器を襲った。
 根元まで指を2本突っ込んで、中でくの字に曲げ、Gスポットを刺激する。
 由羅が喘ぎ、細かく体を震わせた。
 冬美の空いたほうの手が、由羅の勃起し切った乳首をつまむ。
 爪を立てて抓った。
 由羅がのけぞる。
 が、冬美は攻撃の手を緩めようとしない。
「あふ・・・も、もう、いっちゃう・・・」
 口と乳首と膣を同時に攻め立てられ、由羅は快感のあまり痙攣を繰り返した。
 そのままぐったりとなり、うなだれて動かなくなってしまう。
 
 失神した少女を自由にしてやり、ベッドに寝かせてシーツをかけると、冬美は風呂場で体中を消毒した。
 人でないものと交わった後は、必ずこうしないではいられないのだ。
 由羅が自分に好意以上の感情を抱いているのは百も承知だ。
 やっかいだ、と思う。
 しかし、今はそれを利用するしかないのだった。
 由羅を一人前の"戦士"にするためには、こうして定期的に相手をしてやるのが一番なのである。
 ヒュプノスの催眠では癒せないほどのねじれを、この少女は抱えているのだから・・・。

 冬美のヒールの音が遠ざかる。
 それを最後まで聞き届けると、黒野零は由羅の部屋のベランダに降り立った。
 どちらを拉致するか迷ったが、結局由羅を先にしたのは、饗宴が始まってから乱入されると面倒だと思ったからだった。
 ここへ来るまでに、例の廃病院に寄って、準備が整ったのを確かめてきていた。
 後は皆を招待するだけだ。
 ベランダの戸には鍵がかかっていたが、サッシ戸そのものをはずしてしまえばどうということもない。
 思った通り、冬美に弄ばれたあとの由羅は無防備だった。
 これまで何度かふたりの情事を観察していた零は、そのことを知っていた。
 行為の後、由羅は朝まで目を覚まさないことがほとんどなのだ。
 が、念のため、麻酔薬を入れた注射器を持参してきていた。
 ベッドサイドにうずくまると、むきだしの由羅の左手首に針を刺す。
 少しうめいたが、起きることはなかった。
 寝息が深くなったのを確認して、用意してきた特大サイズの旅行バッグに、裸のまま由羅を押し込んだ。
 ベッドの端に腰かけると、スカートのポケットからスマホを取り出した。
 零のスマホには、2年1組の生徒の電話番号がすべて登録されている。
 うっすらと微笑み、短い文面をつくった。
 パーティーへの招待状だった。
 時間指定にして、明日の朝一斉に送信するよう、セットする。
 次は杏里だ。
 あの子には、直接伝えたほうが効果的だろう。
 そのためにはまず由羅を先に会場に運び、動画を撮る必要がある。
 
 少女の入った旅行バッグをごろごろと後ろに引きながら、零は夜中の舗道を廃病院めざして歩き始めた。


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