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第4部 暴虐のカオス
#10 サバト④
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いつのまにか由羅の出血は止まっていた。
肌はまだパトスのぬくもりを欲しがってヒクヒクしていたが、杏里は未練を断ち切り、体を離した。
由羅はまだ目を覚まさない。
そっとそのスレンダーな裸身を床に横たえると、窓に駆け寄った。
逃げられるなら、由羅をつれて逃げよう、と思ったのだ。
が、窓を開けて杏里は絶望の縁に叩き落された。
ガラス窓の向こうは鉄格子だった。
その奥には更に分厚い鉄の板が打ちつけられている。
健康体の由羅ならなんとかぶち破れるかもしれない。
だが、非力な杏里には無理な相談だった。
「逃げられないっていったでしょ」
ふいに声をかけられ、杏里は危うく叫びそうになった。
振り向くと、戸口に零が立っていた。
黒一色の衣装が、ひどく禍々しい。
「あなた、他人も治せるのね」
気を失ったままの由羅を見下ろして、少し感心したようにいった。
「まあいいわ。さ、準備にかかりましょ」
零は由羅を抱き上げると、ステージの端に運んだ。
太い鋼鉄の鎖が2本、壁から垂れ下がっている。
その先端に、やはり鋼鉄の輪がついていた。
由羅の両手首に、その手錠を嵌めた。
由羅は、両手を鎖につながれて、壁に背をもたせかけ、床に坐る格好になった。
「ここからなら、ショーの一部始終が見えるはずだわ」
鎖につながれてうなだれたままの由羅を見下ろして、零が満足そうに微笑んだ。
「さ、次はあなたの番。まず、これを飲んで」
錠剤を2錠、杏里の掌に乗せた。
「これは?」
「下剤。胃と腸の中をきれいにしておくの。誰に見られても、はずかしくないようにね。出すものがなくなったら、お風呂に入りなさい。シャワーだけじゃだめよ。体中を念入りに洗ってね。ヴァギナもアナルもきれいにね」
杏里は茫然と掌の中の錠剤を見つめた。
そんなにまでして、わたしに何をさせようというのだろう?
鳥肌が立つのがわかった。
目の前の零のことが、不気味でならなかったのだ。
それからの2時間ほどは、苦痛の連続だった。
水のように透明な便が出るようになるまで、杏里はトイレと風呂場を何度も往復しなければならなかった。
素っ裸で廊下をうろつくさまは、自分でもけものになったみたいで恥ずかしくなった。
ようやく便意も治まり、湯船にゆっくりつかっているときだった。
外の廊下が急に賑やかになってきた。
大勢の足音が、奥の"宴会場"へと向かって行く。
「客が来たわ」
風呂場のアコーデオンドアの陰から顔を出して、零がいった。
「さあ、出番よ。体を拭いたら、出てきなさい」
脱衣場には、制服のブラウスと下着、スカートが置かれていた。
「最初は着ててもいいわ」
杏里が下着を身につけ始めるのを眺めながら、零がいった。
「といっても、どうせすぐに汚れちゃうでしょうけどね」
零の後に続き、ホールに足を踏み入れた杏里は、その場に金縛りに遭ったように立ち竦んだ。
右手の観客席は、見慣れた顔でいっぱいだった。
2年1組に生徒たちである。
期待に満ちたまなざしで、杏里と零を一斉に見つめてきた。
予想はしていたことだったが、全員そろっていることが悲しかった。
そんなにわたしが憎いの?
そう叫びだしたかった。
零がまず、ひとりで左手のステージに上がっていった。
観衆のほうに向き直ると、意外によく通る声でいった。
「ようこそ、皆さん。私は3組の黒野零。会ったことのある人もいるかしら。私は、皆さんと目的を同じにする者です」
にっと微笑み、お辞儀をする。
「今夜は、皆さんもよくご存知のある少女をサカナに、世にも珍しいショーをお目にかけようと思います。普通では絶対に見られない、美しくて、最高にエロチックなショーです。そのためには、皆さんのほうにも、準備が必要です。ショーの前に、まず、全員、服を脱いでください。ほら、こんなふうにね」
いうなり、零が、スカートを落とし、黒いセーラー服を脱ぎ捨てた。
隠花植物のような、真っ白な裸身が現れる。
つんととがったバスト。
平たい腹。
太腿の間の淡い体毛が、ひどく艶かしい。
生徒たちの中にざわめきが起こる。
零に当てられたのか、最初に女子が数名、裸になった。
ためらっていた男子が、ひとりふたりとそれにつづく。
男子は誰もがすでに陰茎を固くしているようだった。
全員が脱ぎ終えるのを確かめると、零がステージの下に佇んでいた杏里を引っ張り上げ、観衆の前に引き出した。
「皆さん、準備はいいみたいね。さ、こちらがきょうの主役、笹原杏里です。虐待されるためにこの世に生まれてきた女、それが彼女です。彼女のために、私はすてきなプレゼントを用意しました。まずは、これ、『鉄の処女』」
等身大の甲冑の前に、零が杏里を立たせた。
「知っている人、いますか? これはほら、こんなふうに前が開きます」
零の白い手が、甲冑のスカートに当たる部分を手前に引いた。
どよめきが起こる。
杏里は顔から血の気が引くのを感じた。
甲冑の中は空洞だった。
人ひとりがやっと入れるほどの広さである。
が、ただの空洞ではなかった。
内側の壁から、無数の針が突き出しているのだ。
「ここにあるのは、中世ヨーロッパの異端審問で実際に使われた拷問道具ばかりです。人類の邪悪な智恵が生み出した歴史的暴虐に、私たちの杏里がどれだけ耐えられるか、さ、皆さん、私と一緒に楽しみましょう!」
ふいに零の手が杏里を押した。
抵抗する間もなかった。
杏里は背中から『鉄の処女』の中に倒れこんだ。
蓋が閉まってくる。
その蓋の内側にも棘がびっしり生えているのを見て、杏里は悲鳴を上げた。
肌はまだパトスのぬくもりを欲しがってヒクヒクしていたが、杏里は未練を断ち切り、体を離した。
由羅はまだ目を覚まさない。
そっとそのスレンダーな裸身を床に横たえると、窓に駆け寄った。
逃げられるなら、由羅をつれて逃げよう、と思ったのだ。
が、窓を開けて杏里は絶望の縁に叩き落された。
ガラス窓の向こうは鉄格子だった。
その奥には更に分厚い鉄の板が打ちつけられている。
健康体の由羅ならなんとかぶち破れるかもしれない。
だが、非力な杏里には無理な相談だった。
「逃げられないっていったでしょ」
ふいに声をかけられ、杏里は危うく叫びそうになった。
振り向くと、戸口に零が立っていた。
黒一色の衣装が、ひどく禍々しい。
「あなた、他人も治せるのね」
気を失ったままの由羅を見下ろして、少し感心したようにいった。
「まあいいわ。さ、準備にかかりましょ」
零は由羅を抱き上げると、ステージの端に運んだ。
太い鋼鉄の鎖が2本、壁から垂れ下がっている。
その先端に、やはり鋼鉄の輪がついていた。
由羅の両手首に、その手錠を嵌めた。
由羅は、両手を鎖につながれて、壁に背をもたせかけ、床に坐る格好になった。
「ここからなら、ショーの一部始終が見えるはずだわ」
鎖につながれてうなだれたままの由羅を見下ろして、零が満足そうに微笑んだ。
「さ、次はあなたの番。まず、これを飲んで」
錠剤を2錠、杏里の掌に乗せた。
「これは?」
「下剤。胃と腸の中をきれいにしておくの。誰に見られても、はずかしくないようにね。出すものがなくなったら、お風呂に入りなさい。シャワーだけじゃだめよ。体中を念入りに洗ってね。ヴァギナもアナルもきれいにね」
杏里は茫然と掌の中の錠剤を見つめた。
そんなにまでして、わたしに何をさせようというのだろう?
鳥肌が立つのがわかった。
目の前の零のことが、不気味でならなかったのだ。
それからの2時間ほどは、苦痛の連続だった。
水のように透明な便が出るようになるまで、杏里はトイレと風呂場を何度も往復しなければならなかった。
素っ裸で廊下をうろつくさまは、自分でもけものになったみたいで恥ずかしくなった。
ようやく便意も治まり、湯船にゆっくりつかっているときだった。
外の廊下が急に賑やかになってきた。
大勢の足音が、奥の"宴会場"へと向かって行く。
「客が来たわ」
風呂場のアコーデオンドアの陰から顔を出して、零がいった。
「さあ、出番よ。体を拭いたら、出てきなさい」
脱衣場には、制服のブラウスと下着、スカートが置かれていた。
「最初は着ててもいいわ」
杏里が下着を身につけ始めるのを眺めながら、零がいった。
「といっても、どうせすぐに汚れちゃうでしょうけどね」
零の後に続き、ホールに足を踏み入れた杏里は、その場に金縛りに遭ったように立ち竦んだ。
右手の観客席は、見慣れた顔でいっぱいだった。
2年1組に生徒たちである。
期待に満ちたまなざしで、杏里と零を一斉に見つめてきた。
予想はしていたことだったが、全員そろっていることが悲しかった。
そんなにわたしが憎いの?
そう叫びだしたかった。
零がまず、ひとりで左手のステージに上がっていった。
観衆のほうに向き直ると、意外によく通る声でいった。
「ようこそ、皆さん。私は3組の黒野零。会ったことのある人もいるかしら。私は、皆さんと目的を同じにする者です」
にっと微笑み、お辞儀をする。
「今夜は、皆さんもよくご存知のある少女をサカナに、世にも珍しいショーをお目にかけようと思います。普通では絶対に見られない、美しくて、最高にエロチックなショーです。そのためには、皆さんのほうにも、準備が必要です。ショーの前に、まず、全員、服を脱いでください。ほら、こんなふうにね」
いうなり、零が、スカートを落とし、黒いセーラー服を脱ぎ捨てた。
隠花植物のような、真っ白な裸身が現れる。
つんととがったバスト。
平たい腹。
太腿の間の淡い体毛が、ひどく艶かしい。
生徒たちの中にざわめきが起こる。
零に当てられたのか、最初に女子が数名、裸になった。
ためらっていた男子が、ひとりふたりとそれにつづく。
男子は誰もがすでに陰茎を固くしているようだった。
全員が脱ぎ終えるのを確かめると、零がステージの下に佇んでいた杏里を引っ張り上げ、観衆の前に引き出した。
「皆さん、準備はいいみたいね。さ、こちらがきょうの主役、笹原杏里です。虐待されるためにこの世に生まれてきた女、それが彼女です。彼女のために、私はすてきなプレゼントを用意しました。まずは、これ、『鉄の処女』」
等身大の甲冑の前に、零が杏里を立たせた。
「知っている人、いますか? これはほら、こんなふうに前が開きます」
零の白い手が、甲冑のスカートに当たる部分を手前に引いた。
どよめきが起こる。
杏里は顔から血の気が引くのを感じた。
甲冑の中は空洞だった。
人ひとりがやっと入れるほどの広さである。
が、ただの空洞ではなかった。
内側の壁から、無数の針が突き出しているのだ。
「ここにあるのは、中世ヨーロッパの異端審問で実際に使われた拷問道具ばかりです。人類の邪悪な智恵が生み出した歴史的暴虐に、私たちの杏里がどれだけ耐えられるか、さ、皆さん、私と一緒に楽しみましょう!」
ふいに零の手が杏里を押した。
抵抗する間もなかった。
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