私の王様

ポルテクト

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今日で終わり3

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「うわー、ゆ幽霊」
わたしは声が裏返って叫ぶ、
「し、静かに、先生にバレたら
困るだろ。
相変わらず、かわいいね。」
綺麗な顔をした少年は優しく微笑む
「そうね。ごめんなさい。
でも、わたしは決めたのよ。」
再び窓に足をかけようとするわたしを止める
「それだけはさせないから」
「ほっといてよ。これで全て終わるの」
「終わらせない。」
「わたしは生きていけない。
家にも学校にも居場所がないのよ。」
「僕が君の居場所になる。」
「私は君のこと知らないのよ。」
「知ってるよ。覚えてないかな。
冬秋志季しゅうとうしきだよ。
花夏かなつちゃん」
「どうしてここにいるのよ。
あなた、ずっと不登校だったのに。」
「僕は学校に行かなくても特別に
推薦されることになってるからね。
一応テストだけは受けに来てるんだ。」
「でも待って期末テストはまだ先よ。
ここにくる理由なんてあるの?」
わたしは疑問を、秋冬に聞く。

「SNSで君の情報が流れて、
万が一でも君が死にたくなったら
僕が止めると決めたんだ。
僕は花夏の家も知らない。
だから学校に来た。」
「私が学校に来るなんて、
この教室に来ることが、分かってるのよ。」
「学校しか思いつかなかっただけだよ。
それに教室だってずっといろんなところを
駆け回って探したよ。」
秋冬を見ると息を切らしてる。
「馬鹿みたい。
私に関わるとダメよ。
家にこのまま帰ったら、
間違えなく拷問を受ける。」
「本当かそれ?」
「だったら何」
「あんな仲よかっただろ。
入学式の日、姉と弟、お母さん、お父さん
仲良く話してたろ。」
「もう、いないのよ。
皆、私の大事な家族は交通事故で死んだの
わたしはショックで叫んで
いつの間にか病院だったわ。」
「悪い、思い出したくない事、
思い出させた。辛かったな。」
秋冬は悲しそうな顔をして慰める

「優しいのね。」
わたしは精一杯に笑った。
「やっぱり花夏は笑顔が似合うよ。
これからは笑顔が増えるように
僕がするよ。」
「無理よ。君がそんなに頑張る必要ないの」
「漢が今、頑張らなくて頑張るんだよ。」
「どう言う事?」
「惚れた女性を守るためなら
頑張るしかないだろう。
花夏がこんな状態になってるなんて
知らなかったから、
今まで助けに行けなくてごめん。」
秋冬はわたしに向かって土下座をする。

「何してるのよ。」
秋冬の言葉を思い出し赤くなる私と
思わず口にした秋冬は照れている。
「私は家に行けば地獄の生活が待ってる。」

「だったら僕の家に住もう。」
「暦が黙ってないわ。
全国模試3位よ。勉強も運動もできて
人望が熱いのよ。
頭がキレる
親も相当すごいのよ。」
「暦ね、それなら平気かな。
僕には勝てないから。
僕の父さんなら事情を話せば受け入れる」
「そんなの無理よ。」
「行かないとわからないよ。
悲しみや苦しみで死んだら、
永遠とその悲しみや苦しみを繰り返す。
だったら楽しい思い出を思い出して
死んでも幸せだったって思えるように
何年何十年でも幸せが続くように、
花夏がここで死んだら僕は
後悔や虚しさが残るから、
お願いします。
僕と一緒に生きてください。」
私は勢いの凄さに
「はい」
と思わず返事をしてしまう。
秋冬は嬉しそうに叫ぶ。
秋冬はしまったと言う顔をし、口を塞ぎ
私と目が合う。
秋冬は私の手を掴み、
わたしを背中に乗せて、
校門まで先生に追いかけられながら
走っていく。



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