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17.勇気

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同年10月2日


文化祭が終わって初授業。















今日あったことはそれだけだった。




最近毎日話しかけてくれた永田 美波は、僕に一切話しかけにこなくなった。



約束を破ったことに負い目を、罪悪感を感じてる?


僕のことが嫌いになって避けている?





何があったか分からない。


だけど僕は彼女に話しかけた。




しかし、話題がなさすぎた。



「な、永田さん、おはよう」


「あっ…おはよう」


いつもと同じ笑顔で笑っている。


でもいつもと違う笑顔で笑っている。




間違いなく、僕は避けられている。




「何か、したかな」



「え?」



本音がこぼれた。



「う、ううん、なんでもない、じゃあまた」



誤魔化すようにそそくさと朝井の元へ逃げてきた。






「朝井~…」


「どうした新垣珍しい、お前が甘えてくるなんて」



朝井は優しい言葉をかけてくれた。



「わかんないよ僕…永田さんに嫌われたのかなぁ……」




「……それは僕も分かんないけど、何かおかしいよね、永田さん。後夜祭、告白いえなかったんだろ?」





「…うん、告白いえなかった」





告白いわせて貰えなかった。


















それから月日が流れるように過ぎても、僕と彼女が話すことはなかった。




だが、寂しいことはなかった。




朝井がいてくれれば、他の楽しいことを考えられた。






僕はこの恋から次第に遠ざかるようになった。

















同年12月16日




今日は休日。  



朝井と遊ぶ約束をしていた。




と言っても、朝井の彼女のクリスマスプレゼント選びの付き添いだったりするが。





「彼女、何が欲しいって?」


「聞いてない。何貰えるかわかんない方が楽しみだろ」


なるほど。


「かわいいのが好きだから、ぬいぐるみとか…」


「ぬいぐるみ!?」



「…あぁ、年下なんだよ彼女。 言ってなかった?」




「初耳だよ」




「4つ下。中1かな」



「だいぶ年下だね。どうやって知り合ったの?」



「んー…彼女の姉貴と同級生なの」



「なるほど」




他愛もない話をしていて、僕は感じた。



朝井の彼女への愛情。


そして、僕の羨み。



僕もいつか、永田 美波のことを、あんな風に思える日が来るのかな。



来たら、いいな。





あの恋から遠ざかったと言っても、僕はまだ彼女のことが好きだった。



ずっとずっと、文化祭が終わってから、話したくて堪らなかった。


でも彼女に振る話題もなければ、彼女が教室にいる機会もほとんどなかった。





「…永田さん、どう?」


「…聞かなくてもわかるだろ」





恋って、こんなに辛いものなんだ。










好きな人と話せないって、こんなに涙がこみ上げてくるものなんだ。








「……アタック、しないの?」



「出来ないよ、もう。」




「…したらいいよ、すればいいよ」


「出来ないよ」



「話せないから出来ないって言ってんの?」




僕は頷く。




「じゃあ話に行けばいいよ。」




え?



「永田さん家、行こう」



「は?」



「僕知ってるから。な、行こう今から。」





「いやなんで知って…」



「後で説明する。後悔したいの?初恋」



「……したくない」



「だろ、じゃあ行こう。告白出来なくても、クリスマスデート誘おう」





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