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28.幕開け
しおりを挟む爽やかな秋晴れだった。
僕は今日、これからの人生を共にするパートナーと、一生一緒にいることを誓う。
今日という日を迎えられたことが、本当に嬉しい。
「蒼くん」
「里紗、おはよう」
「おはよう。よく眠れた?」
「うん、僕は遠足の前日はぐっすり寝るタイプだから」
「はははっ、なるほど」
里紗は少し声をあげて笑う。
「私は少し、いつもより眠りが浅かったかなぁ」
「里紗はいつも深すぎるからちょうどいいんじゃない?」
僕は少しからかうように笑いながら言う。
「もーっ、気にしてるのに…」
僕を殴る素振りをして、少し顔が赤くなった里紗を見て、僕は幸せな気持ちが溢れた。
僕は今日、彼女と結婚する。
正式な書類はもう出したし、ちゃんと形は夫婦だが、
身の回りの人に彼女への愛を誓ってはじめて、
ようやく結婚が成立するような気がしていたのだ。
里紗とは大学のサークルで出会った。
総合大学といえど、ばりばりの理系学科の僕は、同じ講義を受ける人の中に女の子はゼロに等しかった。
そこで、テニスサークルに入った所、彼女に出会った(テニスサークル自体は男女半分ずつくらいだった)。
何故高校帰宅部だった僕がいきなり運動部なのかと言うと、小さい頃にテニスを習っていたからだ(高校では色々事情があった)。
小さい頃でありながら、僕はそれなりに身体が覚えていたので、同じ新入生を教える側に回された。
その時、彼女に教えることになった。
彼女は今までずっと文化部で、何か新しいことを始めてみたいなと思ったと言っていた。
初めてながらに頑張ろうとする姿勢やその努力、知らない間に僕は彼女から目が離せなくなっていた。
「ねー蒼くん聞いてるの?」
「えっ、ごめん、ぼーっとしてた」
「もーまた? 式、結局お友達来るの?って聞いたの」
お友達…
正確には、朝井と唯、それから、美波のことだ。
「んー…ひとりは来ない…かな。あとの2人は結局呼んでおいたよ」
「そっかぁ、残念だね…都合合わなかったか」
里紗は美波のことを言っていた。
「…里紗」
「ん?」
「その友達のことで、少し聞いて欲しいことがあるんだ。後で、聞いてくれる?」
「…うん、もちろん!」
何かを察したのか、彼女は空元気で返事をした。
彼女に何も隠したくない。
自分の負の感情も彼女にも知っていてほしい。
僕は式が終わったあと、彼女に打ち明ける決心をした。
心待ちにしていた式はあっという間に終わった。
解散する前に、朝井たちの元へと向かう。
「新垣ーっ!」
「蒼くんー!」
2つの懐かしい声が響いて、僕の胸は高鳴った。
「朝井、唯!」
僕は2人の名を呼んで、2人の元へ飛び込んだ。
「新垣、おめでとう。 これからもお幸せにな」
「蒼くん、おめでとう! 末永くお幸せに!」
「ありがとう2人とも。今日来てくれて嬉しい」
「当たり前だろ。美波は残念だったな、呼んだだろ?来てなかったから」
美波の名が出た瞬間、僕の顔が少しこわばったのを感じた。
このふたりは、しらないんだ。
「…そのことでさ、ちょっとだけ、話があるんだよ。いいかな?」
「…?いいけど…」
2人は不思議そうな顔をして、顔を見合わせた。
心苦しくなった。
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