創世の先生~抗世の物語~

真白な雪

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二時限目 家庭教師暇になる

教師という名の無職のようなもの

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 俺がアスールライト家に招かれて半年の時が過ぎようとしていた。
 
 今、俺は暇を持て余していた。
 
 フェスタがあった時期はアリステラがいつも家にいたので教育係として魔法と勉強を熱心に教えていたものの、彼女の学校が再会すると同時に日常が変化した。

 これまで毎日教えていた魔法はアリステラの休日限定で行われるようになり、ブリックスが家を出るのと同じ時間にアリステラも登校を始めるので学校まで同行する。

 専門課程学校と言われる機関にある商業学科にアリステラは在籍しているのだが、この商業学科は六年制で、本来であれば専門課程学校に入学する前に基礎学校を卒業する必要があるため、一般的な時間背景で言えば専門課程学校を卒業する時は成人目前とそこそこの年数の掛かるものである。アリステラはその賢さ故既に入学も果たし三年を修了、つまり四学年になる。順調にいけば十四歳で卒業する見込みだ。

 恐らく俺と同じく努力を惜しまぬ人間なのだろう。そういった才覚の多彩さはエンデルの英雄たる父親のブリックスによく似ているのだろう。

 専門課程学校を終えると今度は貴族教育課程のある別の学校までアリステラの護衛をする。しかしこの貴族教育課程を受ける学校と専門課程学校はすぐ隣にある為移動時間は一分に満たない。それに加えてどちらの学校の門にも門番らしき屈強な男が常に警備しているため、安全性は確立されているし自分が護衛をする必要なんてないのではないかと疑問を感じずにはいられない。

 学校にアリステラを連れて行くとその日の仕事内容の大半は終えてしまう。その後は学校の前でひたすら夕方までずっと立ったままで暇を潰さなければならない。非常に苦行である。また道行く人の視線が突き刺さるのもこの仕事の辛いところではないだろうか。

 アリステラの他にも従者を護衛に付けて学校に来る生徒達もいるが、多くの場合、と言うよりソテルを除く全ての従者は一度屋敷へと帰り、別の仕事を全うしているらしい。つまり暇を持て余し学校の前で毎日ウロウロしているのは俺だけとなり、その姿は完全に不審者のそれだった。実際何度か取り押さえられ、門番に捕まったりもした。ただウロウロしていただけである。その度アリステラに説明してもらい、事なきを得たがその事件を知らない人、その事件を知っていても俺がアリステラの先生兼従者であることを知らない人から見れば依然として俺は不審者のままだった。

 俺は大道芸をしていた経験もある。小遣い稼ぎに学校の前で一芸を披露しようとしたのだが門番に捕まり御用となった。またもアリステラがその場で釈明してくれたが、その時のアリステラから向けられた『邪魔をしないでください』といった念が強く込められた視線を感じたので本格的に何も出来ずに待ちぼうけする事になった。

 ふと視線を横にずらせば俺と同じくそこに立っているだけのように見える微動だにしない門番の警備員。非常に屈強なその体に一切の油断もしていないその精神、強者である。例えるなら統率の取れた部隊の隊長格である。まぁ俺は実際に軍属していた訳だが、もっぱら開発部隊の引きこもりだったため実際の行軍活動をしたことはあまりない。あっても個人指令ばかりでそのほとんどは工作や狙撃などの援護行動ばかりであった。

 色々無駄な考え事をしているとアリステラが専門課程学校から出てくる。


「先生今日はお利口にしていられましたか?」

「犬みたいな扱いはやめなさい、今日も暇すぎて辛いよほんと」

「何もすることが無いのも辛いですよね」

「そうそう、時間の流れも恐ろしく長く感じるし何か別の仕事を――」

「それじゃあ先生! いってきます!」


 歩きながら会話をしているとあっという間にアリステラは貴族教育課程を学びにまた学校へと入っていった。


「いって、らっしゃい……」


 再び長い一人の時間を手に入れ、暇を持て余し続けた。

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