創世の先生~抗世の物語~

真白な雪

文字の大きさ
17 / 34
二時限目 家庭教師暇になる

天使のような姿を夢見て

しおりを挟む
 貴族学校を終え帰宅しようと校門をくぐると、ソテル先生は微動だにしなかった。

 抜け殻の様な先生にこっそりと近づき、脇腹をつついた。


「ぬぉおお! な、なんだっ! アリステラか!」

「た、ただいまです先生……」


 先生は大きな声を出してビックリしている。そんな先生に私はビックリしている。


「先生、なにをしていたんですか?」

「ん? あぁ、あまりに暇だったからさ、前に見せた瞑想をしてた」

「お庭をメチャメチャにしたときのあれですか?」


 私の問いかけに先生は頷く。


「アレも実は魔法なんだけど、仕組みとかについてはしばらく説明できそうも無いからアリステラが使えるようになるのはもっと先の話になるね」

「よくわからないですけど、私は早く空を飛べるようになりたいです!」


 あの時先生は瞑想を終えて空高く飛び上がっていた。あの時私もいつか空を飛べるのかなぁ、なんて思ったりして胸が高鳴ったのを今でも覚えてる。

「アリステラならすぐ出来るようになるよ。何なら今度の休みに挑戦してみる?」


 先生からのまさかの申し出に興奮してしまい先生との距離を詰めてしまう。


「私小さな頃から空を飛んでみたいってずっと思ってたんです! 是非!」


 興奮する私に釘を刺すように先生は次の句を放つ。


「申し訳ないけど浮遊の魔法は浮遊するだけで、鳥みたいには飛べないんだ」


 その言葉に私は説明を求めたのだけれども、地面と身体を離すために高難度の力魔法で斥力を地面と自分の間につくり出し風魔法で姿勢制御をすることで浮遊が成立するのだと言われた。

 たしか、先生の話では力魔法は最も高難度の属性の一つだったはずだ。まだ習い始めて三ヶ月の私に使えるのだろうか。


「……魔法への興味が少し薄らぎました。でも! 一応は空は飛べるんですよね!」

「飛ぶ、と言うよりかは空中に居るって感じだけどね」

「それでもまだ見たこと無い景色が見回せるんですよね! それなら私やっぱりあの魔法を使ってみたいです!」

「アリステラならきっとすぐ出来るさ」


 お世辞なのかどうかも解らない言葉を先生はいつも口にする。この人はいつも何処か真意を感じきれない場所で話しているような印象を受けてしまう。悪い人ではないと思う。ただ、何か隠し事をしているような気がしてそこはちょっと悔しい。私は先生のことを信頼したいのに信頼しきれないままにされるのが、たまらなく嫌だ。

 このまま距離が遠いままではきっと先生は今後も見えない壁のような物で私たちを隔てて本当の信頼を見せてくれないかも知れない。そう思ったら急に悲しくなってしまう。そんなことは嫌だ。


「ねぇ先生。そのアリステラと呼ぶのそろそろやめませんか?」

「ん?」

「ステラ、で大丈夫ですよ? もう私たちは知らない仲では無いですし、先生と居ると私も楽しいので愛称で呼んでください!」

「ん、わかった。それじゃあそうさせてもらうよ」


 提案したというのに呼んでくれないのはやはり距離があるからなのかな。先生ならきっと直ぐに呼んでくれると思っていたから少しだけ悲しい気持ちになる。

 俯きながら歩く私の横を歩く先生の歩幅はとても遅くて、小さな私の歩幅に合わせてくれていることに直ぐ気付く。こうしたところは合わせてくれるのにやはり踏み込まれることを嫌っているのかな。私はこの三ヶ月で先生に大分気を許せるようになった。けれどそれは私だけだったんだなぁ。

 なんだか自分一人が懐いているようで物悲しくなって瞳が潤んできてしまった。


「……ほら、帰ろう。ステラ」


 俯いていたから先生がどんな顔をしていたのか解らない。だけど先生は確かに私の事を『ステラ』と呼んだ。先生も私に一歩踏み込んでくれたんだなって思ったら先程まで感じていた悲しい気持ちなんて何処かへ吹き飛んでしまった。


「――はい!」


 潤んだ目元を気付かれないように拭い元気よく返事する。きっと少し不細工な顔をしていたかも知れない。だけどそれでもきちんと笑顔を先生に見せたかったから私は先生の方を向いて笑う。

 私はいつか空を自由に飛んでみたい。絵本に綴られていた天使様のように。
 私はただの人間だけれど、魔法という翼を持っている。

 先生はきっといつか私を空の彼方へ連れて行ってくれるはず、そんな期待に胸を膨らませながら今日も明日も一生懸命勉強する。自分の夢見た姿を求めて。

 先生、これからもよろしくお願いしますね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...