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二時限目 家庭教師暇になる
面談
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「ねぇソテル君、最近ステラの成績はどうなの?」
サウナに入ると唐突にアリシアの口が開かれた。
「勉学の方では相変わらず非常に優秀ですね。ただ魔法に関してはここ一ヶ月練習できていなかったので勘が鈍っていないと良いのですが」
「あら、そんな簡単にコツを忘れてしまうものなの?」
「いえ、身に定着してしまえばそうでも無いのですが、まだ半年です。わずかな魔力の流れの変化やハプニングでいくらでもスランプに陥ってしまう。魔法を上手く使えないことが嫌になって魔力を扱うのが難しくなったりするんです」
「なるほどねぇ。私も練気法を体得するとき大変だったなぁ……」
「そういえばアリシアさんってそこら辺の戦士を超える位には強いですよね。どんな訓練してたんですか?」
「そうねぇ、とりあえず私を抱っこしてみるとわかりやすいかも」
「抱っこ、ですか?」
そう言ってニコニコしているアリシアを抱き上げてみようと立ち上がる。彼女の後ろに回り持ち上げようとしてみるが持ち上がらない。非常に重い……重いと言うより大地に根を張る大木を無理矢理引っこ抜こうとしているのかと錯覚するほどだった。
「重いでしょ?」
「……はい。でもそんな風に見えないのですが」
「そりゃそうよ、だってそういう訓練をしていたんだもの。見ての通りの私は多分一般的な女性の体型をしているけれど、実際の体重は大男二人分よ。たぶんね」
ソテルは絶句した。この小さな体にどれだけの重さが詰まっているのか想像するだけでその修行の過酷さがわかる。
「まず全身を筋肉達磨に仕上げて、それをずっと自分の力で小さく小さくまとめ上げるの。そうするとね、普段はとても小さな筋肉だけど、力を入れると巨大化する筋肉が出来るの。これはシスケドをはじめとする治癒練気術全ての基本なんだけど、中でも私は凄い方なのよ?」
そう言って笑うアリシアにソテルは過去を思い出し震え出す。
「あのぉ、そのご自慢の筋肉で今まで俺に拳骨やブリックスさんにボディーブローをしていたのですか?」
「うん! でも手加減していたし、下手に力が無い人が殴ると痛みを知覚してから気絶したり、酷い場合には気絶しないで痛いだけなんてのもあるから私は良心的よ?」
「あははは……」
何が良心的なのか全く解らない。話の次元があわずそれ以上の事を聞くのは辞めようと再びベンチに座ったところでアリシアは心配そうな声色で問いかけた。
「ステラはとっても良い子だし、頭も良い。ソテル君の話と夫の話を聞く限り魔法も凄いものがあるのでしょう? 多分これからあの子はいろんな人にいじめられる。だけどソテル君、貴方だけはあの子の味方で居てあげてね」
「どうしたんですか?」
「なんとなく、よ」
「大丈夫ですよ。ステラなら喧嘩とかイジメとかになる前になんとか出来ます。それに、もしそうなってもきっと自分で解決できますよ」
「確かにそうね、でもソテル君だけは味方で居てあげてほしいの」
「なんで俺なんですか?」
「なんとなく面白そうだから」
小馬鹿にしたようにクスクスと笑っている彼女を見ていると頭が段々とクラクラしはじめた。夜風にでも当たって涼もうと立ち上がろうとするが、足がもたついて思うように動けず上体が反れて倒れてしまった。
「ソテル君大丈夫?」
「大丈夫です。ちょっと外で風を浴びてきます」
ソテルは外気浴場でベンチに寝転がり体を休めた。
本来サウナは血行を良くし、老廃物や毒素の排出を手助けするのだが、その基本は自身の持つ代謝を良くすることで得られる効果を高めているだけに過ぎない。また、体内の水分が減り、血中濃度は高まるため無理をして入れば体の疲労を回復したとしても、それ以上の疲労感に苛まれる。適度に入ることが一番なのだが今回はアリシアが拗ねていたので致し方ない。
この役目を自分から担ったソテルを称えよう。
ベンチでぐったりしていると頭に冷たい手の感触が伝わる。次第に意識は薄れ行き目の前は真っ暗になり力を失った。
「無理させちゃってごめんね、これできっと明日も元気なはずだから許してね」
アリシアはそう言ってソテルをお姫様抱っこで屋敷へ運んだ。
サウナに入ると唐突にアリシアの口が開かれた。
「勉学の方では相変わらず非常に優秀ですね。ただ魔法に関してはここ一ヶ月練習できていなかったので勘が鈍っていないと良いのですが」
「あら、そんな簡単にコツを忘れてしまうものなの?」
「いえ、身に定着してしまえばそうでも無いのですが、まだ半年です。わずかな魔力の流れの変化やハプニングでいくらでもスランプに陥ってしまう。魔法を上手く使えないことが嫌になって魔力を扱うのが難しくなったりするんです」
「なるほどねぇ。私も練気法を体得するとき大変だったなぁ……」
「そういえばアリシアさんってそこら辺の戦士を超える位には強いですよね。どんな訓練してたんですか?」
「そうねぇ、とりあえず私を抱っこしてみるとわかりやすいかも」
「抱っこ、ですか?」
そう言ってニコニコしているアリシアを抱き上げてみようと立ち上がる。彼女の後ろに回り持ち上げようとしてみるが持ち上がらない。非常に重い……重いと言うより大地に根を張る大木を無理矢理引っこ抜こうとしているのかと錯覚するほどだった。
「重いでしょ?」
「……はい。でもそんな風に見えないのですが」
「そりゃそうよ、だってそういう訓練をしていたんだもの。見ての通りの私は多分一般的な女性の体型をしているけれど、実際の体重は大男二人分よ。たぶんね」
ソテルは絶句した。この小さな体にどれだけの重さが詰まっているのか想像するだけでその修行の過酷さがわかる。
「まず全身を筋肉達磨に仕上げて、それをずっと自分の力で小さく小さくまとめ上げるの。そうするとね、普段はとても小さな筋肉だけど、力を入れると巨大化する筋肉が出来るの。これはシスケドをはじめとする治癒練気術全ての基本なんだけど、中でも私は凄い方なのよ?」
そう言って笑うアリシアにソテルは過去を思い出し震え出す。
「あのぉ、そのご自慢の筋肉で今まで俺に拳骨やブリックスさんにボディーブローをしていたのですか?」
「うん! でも手加減していたし、下手に力が無い人が殴ると痛みを知覚してから気絶したり、酷い場合には気絶しないで痛いだけなんてのもあるから私は良心的よ?」
「あははは……」
何が良心的なのか全く解らない。話の次元があわずそれ以上の事を聞くのは辞めようと再びベンチに座ったところでアリシアは心配そうな声色で問いかけた。
「ステラはとっても良い子だし、頭も良い。ソテル君の話と夫の話を聞く限り魔法も凄いものがあるのでしょう? 多分これからあの子はいろんな人にいじめられる。だけどソテル君、貴方だけはあの子の味方で居てあげてね」
「どうしたんですか?」
「なんとなく、よ」
「大丈夫ですよ。ステラなら喧嘩とかイジメとかになる前になんとか出来ます。それに、もしそうなってもきっと自分で解決できますよ」
「確かにそうね、でもソテル君だけは味方で居てあげてほしいの」
「なんで俺なんですか?」
「なんとなく面白そうだから」
小馬鹿にしたようにクスクスと笑っている彼女を見ていると頭が段々とクラクラしはじめた。夜風にでも当たって涼もうと立ち上がろうとするが、足がもたついて思うように動けず上体が反れて倒れてしまった。
「ソテル君大丈夫?」
「大丈夫です。ちょっと外で風を浴びてきます」
ソテルは外気浴場でベンチに寝転がり体を休めた。
本来サウナは血行を良くし、老廃物や毒素の排出を手助けするのだが、その基本は自身の持つ代謝を良くすることで得られる効果を高めているだけに過ぎない。また、体内の水分が減り、血中濃度は高まるため無理をして入れば体の疲労を回復したとしても、それ以上の疲労感に苛まれる。適度に入ることが一番なのだが今回はアリシアが拗ねていたので致し方ない。
この役目を自分から担ったソテルを称えよう。
ベンチでぐったりしていると頭に冷たい手の感触が伝わる。次第に意識は薄れ行き目の前は真っ暗になり力を失った。
「無理させちゃってごめんね、これできっと明日も元気なはずだから許してね」
アリシアはそう言ってソテルをお姫様抱っこで屋敷へ運んだ。
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