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1. 無限の始まり
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俺はある男に人生を壊された。
爆破に巻き込まれ顔面に炎が纏う。
もはや熱さを感じぬ程の激痛。
気道が焼けて息が苦しい。
誰かが俺に囁く。
『法をすり抜け、罰されることなく復讐できるとしたら……殺すのか?』
ハッと、夢から目覚めた。
2611年。
相変わらず人類はいつも忙しく、時間に縛られ、時間に追われている。
時代は繰り返されるもので、大昔には当たり前のように居酒屋なるものがあったらしいのだが、この時代でもまた、多くの居酒屋が存在し流行の兆しを見せていた。
俺は今、その流行りに乗っかり小さな居酒屋の大将をしている。
新規の客だと思われる男が入ってきて、ビールを注文した。
その男は容姿端麗で、人目を奪うほど美しく気品溢れる人物だった。
俺は常連客の老人に話し掛けられた。
「最近どうだい?忙しいのか?」
「いや、例の通り魔のせいで客足が悪い」
「家が安全とも限らんだろうに」
「まぁそうだが……じいさん怖くないのか」
「余生を怯えて暮らしても楽しくない。こうして外で酒を飲む方が気も紛れる」
「確かにな」
「なんか気が紛れる話してくれよ」
「なんだ、怖いんじゃないか。そうだな、鶏が先か卵が先かってよく言うだろ。あれ、どっちか考えたことあるか?」
「その前にまずは交尾だろ」
「だから、その交尾をする鶏の起源がどっちなんだって話だ」
老人は新規の男性客に話を振った。
「そこの兄ちゃんはどう思う?」
「解明しようのない話だな。毎日忙しくてそんな事考える暇もない」
「そうか、シングルマザーと兄ちゃんどっちが忙しい?」
老人は男性客のその綺麗な顔立ちを茶化すように言った。
「……同じくらい忙しいよ。大体、雌鶏はオスがいなくても卵を産めるじゃないか。無精卵だけどな。卵だけなら交尾は要らない。呑気なじいさんが羨ましいよ」
しばらくして老人は『そろそろ時間だ』と言って帰っていった。
時計の針は19時を指していた。
俺はその男性客と2人きりになった。
無言の空気が気まずくなりその男性客に話し掛けた。
「ここらじゃ見ない顔だな。名前は?」
「産み落とした卵」
「なんだって?」
「俺の小説家としての筆名だ」
「……本物か?あの話題になった小説知ってるぞ。小説家って食っていけるのか?」
「人生なんとかなるもんだ。実際こうしてビールを飲んで生きてる」
「ほら、これだ」
俺は彼が書いたという小説を見せた。
名前なのか小説のタイトルなのかよく分からないところに惹かれ、購入したものだった。
女性目線で繊細な文章構成が印象的だったのを覚えている。
「てっきり女が書いてるんだと思ってたよ。女の思考をここまで見事に汲めるなんて大したもんだ」
「女の思考か」
「女姉妹の中で育ったとか?」
「話してもいいけど、どうせ信じない」
「事実は小説よりも奇なり。この職業柄、信じ難い話は毎日嫌ってほど聞かされてるから慣れてるよ」
「そんな簡単な話じゃない。もっと複雑で不気味で奇妙だ」
爆破に巻き込まれ顔面に炎が纏う。
もはや熱さを感じぬ程の激痛。
気道が焼けて息が苦しい。
誰かが俺に囁く。
『法をすり抜け、罰されることなく復讐できるとしたら……殺すのか?』
ハッと、夢から目覚めた。
2611年。
相変わらず人類はいつも忙しく、時間に縛られ、時間に追われている。
時代は繰り返されるもので、大昔には当たり前のように居酒屋なるものがあったらしいのだが、この時代でもまた、多くの居酒屋が存在し流行の兆しを見せていた。
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俺は常連客の老人に話し掛けられた。
「最近どうだい?忙しいのか?」
「いや、例の通り魔のせいで客足が悪い」
「家が安全とも限らんだろうに」
「まぁそうだが……じいさん怖くないのか」
「余生を怯えて暮らしても楽しくない。こうして外で酒を飲む方が気も紛れる」
「確かにな」
「なんか気が紛れる話してくれよ」
「なんだ、怖いんじゃないか。そうだな、鶏が先か卵が先かってよく言うだろ。あれ、どっちか考えたことあるか?」
「その前にまずは交尾だろ」
「だから、その交尾をする鶏の起源がどっちなんだって話だ」
老人は新規の男性客に話を振った。
「そこの兄ちゃんはどう思う?」
「解明しようのない話だな。毎日忙しくてそんな事考える暇もない」
「そうか、シングルマザーと兄ちゃんどっちが忙しい?」
老人は男性客のその綺麗な顔立ちを茶化すように言った。
「……同じくらい忙しいよ。大体、雌鶏はオスがいなくても卵を産めるじゃないか。無精卵だけどな。卵だけなら交尾は要らない。呑気なじいさんが羨ましいよ」
しばらくして老人は『そろそろ時間だ』と言って帰っていった。
時計の針は19時を指していた。
俺はその男性客と2人きりになった。
無言の空気が気まずくなりその男性客に話し掛けた。
「ここらじゃ見ない顔だな。名前は?」
「産み落とした卵」
「なんだって?」
「俺の小説家としての筆名だ」
「……本物か?あの話題になった小説知ってるぞ。小説家って食っていけるのか?」
「人生なんとかなるもんだ。実際こうしてビールを飲んで生きてる」
「ほら、これだ」
俺は彼が書いたという小説を見せた。
名前なのか小説のタイトルなのかよく分からないところに惹かれ、購入したものだった。
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「てっきり女が書いてるんだと思ってたよ。女の思考をここまで見事に汲めるなんて大したもんだ」
「女の思考か」
「女姉妹の中で育ったとか?」
「話してもいいけど、どうせ信じない」
「事実は小説よりも奇なり。この職業柄、信じ難い話は毎日嫌ってほど聞かされてるから慣れてるよ」
「そんな簡単な話じゃない。もっと複雑で不気味で奇妙だ」
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