【同志よ、鉄槌を下せ】~レ〇プ被害に遭い続ける生徒と同棲を始めた高校教師。発見された死体は誰が殺したの?~【完結】

みけとが夜々

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6. 積み重ねの集大成

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 病院へ行くと、骨折との診断がおりた。
 通称ボクサー骨折と呼ばれるらしいが、壁を殴ったとも言いにくいのでぶつけたと誤魔化した。
 あまり大袈裟にならないよう頼んだが、しっかりとギプスで固定された。
 4週間程は固定が必要らしい。

 ボクサーで思い出したが、何度かボクサーになりたいと思うことがあった。
 理由はとても不純なもので『犯罪にならずに人を殴れるから』という、なんとも短絡的な考えであったが結構本気だった。
 もちろん自分も殴られるということも覚悟の上で、それでも私にとってはとても魅力的なスポーツだった。
 テレビ中継なんかを見ていても、油断しているとつい入り込みすぎて腕がピクっと動いてしまうほどで、元々運動神経の良かった私は『そこそこの素質、あるんじゃないかな?』なんて思っていた。

 ……今まで人を殴った時はもちろん問題になったから、余計に思う存分人を殴れるボクサーに憧れたのだろうか。

 その晩、大沢先生からメールが届いた。

『大沢です。手の方は大丈夫ですか?』

『お疲れ様です。病院へ行きました。骨折してたみたいです』

『ボクサー骨折ってやつですかね。眠りやすいように眠剤を処方してもらうのも楽になるかもしれません』

 色々と詳しいなぁと思いながらも、同志としての先輩からの助言はとても有難かった。
 目を瞑るだけでも日々のストレスが流れ込んでくるというのに、夢にうなされるのはそれ以上に疲れる。

『今晩は安眠できるように頑張ります』

『頑張らないでください。ゆっくり休んでくださいね』

 頑張りたくないわけでない。
 ただ、今まで『頑張らないで』と言われた事がなかったからか、私にこんな事を言ってくれる人がいるのだと思い嬉しくなった。
 私は昔からよく口のたつ活発な子供で、正義感が強く、この子になら強い言い回しでも大丈夫だと思われがちで、頑張って当たり前だと思われるような性格だった。

 私の後ろに隠れる物静かなメソメソした子は『この子は気が弱く繊細で傷付きやすい子だから』と、同じ事をしても強く怒られずに過ごしていて、そういった子に限って嫌なことは寝たら忘れられるというような、鋼のメンタルを持っていた。
 こういった小さな『理不尽』の積み重ねの大半で、今の私が形成されているのだと思う。

 ふと、武井さんのことが浮かんだ。
 少し話しただけだが、なんとなく昔の私と重なって、生徒の事なんてどうでもいいはずの自分がまた少し首を突っ込もうとしている事に気付く。

 私が今まで誰かにしてきた事なんて、誰も覚えていないだろう。
 先輩の暴力から庇った同級生も、変態教師からセクハラを受け続けていたあの子も。
 恩を着せたいとは思わないが、いまだに当時を思い出しては腹を立てているのは自分だけだろうと思うと馬鹿らしくなる。
 武井さんを、もし何かから私が救うことが出来たとして、何になるというのだろう。
 大沢先生の言葉が甦る。
 この学校で正義や勇気を出すのは勿体ない。
 本当にその通りだ。
 手がジンジンと痛む。
 痛み止めを飲んで寝てしまおう。
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