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13. 私の使命
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玄関前で武井さんと思わしき女の子が、小さく体育座りをして座り込んでいた。
「武井さん……!メール見た?」
「携帯の充電なくて。ごめん」
「ううん、私の方こそ……とりあえず中入って」
服装からして仕事帰りなのだろう。
父親との話はどうなったのか聞こうとしたら、先に質問された。
「デート?」
「え?……あ、ううん。そんなんじゃないよ。それよりお父さんとは?」
「……うん。大丈夫。それよりさ、本当に一緒に住むつもり?」
確かに勢いで言ってしまった感は否めない。
見て見ぬふりをすることも、学校に相談するという手段もあるのに。
どうしても放っておけない自分がいるのも否めない。
「なんか放っとけないっていうか……やっぱ変かな?」
「変だよ。バレたらまずいでしょ?」
「まぁ……でも理由が理由だし。その時はその時っていうか。武井さんは?どうしたい?」
「先生がいいなら」
着ている服やメイクに全く似合わない、とても弱々しい声だった。
なんとなく抱き締めるとその肌は冷えきっていて、どれだけの時間待たせてしまっていたのだろうと申し訳なくなった。
抱き締め返してくる彼女の頭を撫でると、彼女も私の頭を撫でてきた。
なんだろう?と思って、ふと顔を見た。
「先生だって、甘やかされないとだめだよ。学校じゃなかったらいいんでしょ?」
なんかそんな話もしたなぁと思い出して、ただでさえ人への甘え方が分からないのに17歳の少女相手にどう甘えればいいのだろうと考えた。
「とりあえず、先にお風呂入っておいで」
結局なんて答えていいのか分からず、お風呂へ促した。
しばらくしてお風呂からあがってきた武井さんの腕に真新しい傷が見えた。
「ねぇ……それ」
これから一緒に住んでいくにあたって、何度この傷を見ることになるのだろう。
それでは一緒に住む意味がないのではないか?
いちいち突っ込むのも、彼女にとって負担になるのではないだろうか。
新しい傷を増やさないことが今の私の『使命』なような気がして、また心の奥底の怒りが湧き上がる。
「先生もお風呂入ってきなよ」
私の言葉を敢えて無視したのか、武井さんは微笑んだ。
シャワーを浴びながら、大沢先生の言葉を思い出していた。
『あまり、感情を抑えない方がいいですよ』
武井さんを守りたい。
私の今の感情が正しいのかは分からないけれど、武井さんが置かれている環境が間違っていることは分かる。
私に何が出来るのだろうか。
お風呂からあがった後、私は武井さんに「お腹は空いていないか?」と聞いたが「仕事先で適当に食べてるから大丈夫」だと言われた。
まずはその仕事を辞めさせるべきではないか?と思い立ち、彼女に提案した。
「ねぇ、その仕事辞められないの?」
「やっぱ他のバイトより稼ぎいいからさ」
「わかるけど。別にその仕事を否定するわけじゃないけど……」
じゃないけど……と言ったあと、私はこの後に続けようとした言葉に少し戸惑った。
……抱かれてほしくない。
どういう思いで、私はこの言葉を発するのだろう。
余計な正義感からだろうか。
綺麗事に過ぎない思いを、押し付けようとしているのか……
「……けど、なに?」
「……体を大事にしてほしい」
発してみて、やはり違うと感じた。
「ごめん、なんて言うか。私が何を言っても綺麗事にしか聞こえないと思うんだけどさ、とにかくその仕事やめてほしい」
「強引だね。せめて嘘でもさ、もっと違うこと言ってよ。そしたら辞めれられる気がする」
「……違うこと?」
彼女が近付いてきて、甘えるように抱きついてきた。
私は無意識に傷だらけの彼女の腕をさすった。
「まぁ……いっか。考えとくよ」
武井さんは何かを諦めたような寂しそうな表情だった。
考えておくという言葉はその場しのぎに聞こえたが、それは多分気のせいではないと思う。
「武井さん……!メール見た?」
「携帯の充電なくて。ごめん」
「ううん、私の方こそ……とりあえず中入って」
服装からして仕事帰りなのだろう。
父親との話はどうなったのか聞こうとしたら、先に質問された。
「デート?」
「え?……あ、ううん。そんなんじゃないよ。それよりお父さんとは?」
「……うん。大丈夫。それよりさ、本当に一緒に住むつもり?」
確かに勢いで言ってしまった感は否めない。
見て見ぬふりをすることも、学校に相談するという手段もあるのに。
どうしても放っておけない自分がいるのも否めない。
「なんか放っとけないっていうか……やっぱ変かな?」
「変だよ。バレたらまずいでしょ?」
「まぁ……でも理由が理由だし。その時はその時っていうか。武井さんは?どうしたい?」
「先生がいいなら」
着ている服やメイクに全く似合わない、とても弱々しい声だった。
なんとなく抱き締めるとその肌は冷えきっていて、どれだけの時間待たせてしまっていたのだろうと申し訳なくなった。
抱き締め返してくる彼女の頭を撫でると、彼女も私の頭を撫でてきた。
なんだろう?と思って、ふと顔を見た。
「先生だって、甘やかされないとだめだよ。学校じゃなかったらいいんでしょ?」
なんかそんな話もしたなぁと思い出して、ただでさえ人への甘え方が分からないのに17歳の少女相手にどう甘えればいいのだろうと考えた。
「とりあえず、先にお風呂入っておいで」
結局なんて答えていいのか分からず、お風呂へ促した。
しばらくしてお風呂からあがってきた武井さんの腕に真新しい傷が見えた。
「ねぇ……それ」
これから一緒に住んでいくにあたって、何度この傷を見ることになるのだろう。
それでは一緒に住む意味がないのではないか?
いちいち突っ込むのも、彼女にとって負担になるのではないだろうか。
新しい傷を増やさないことが今の私の『使命』なような気がして、また心の奥底の怒りが湧き上がる。
「先生もお風呂入ってきなよ」
私の言葉を敢えて無視したのか、武井さんは微笑んだ。
シャワーを浴びながら、大沢先生の言葉を思い出していた。
『あまり、感情を抑えない方がいいですよ』
武井さんを守りたい。
私の今の感情が正しいのかは分からないけれど、武井さんが置かれている環境が間違っていることは分かる。
私に何が出来るのだろうか。
お風呂からあがった後、私は武井さんに「お腹は空いていないか?」と聞いたが「仕事先で適当に食べてるから大丈夫」だと言われた。
まずはその仕事を辞めさせるべきではないか?と思い立ち、彼女に提案した。
「ねぇ、その仕事辞められないの?」
「やっぱ他のバイトより稼ぎいいからさ」
「わかるけど。別にその仕事を否定するわけじゃないけど……」
じゃないけど……と言ったあと、私はこの後に続けようとした言葉に少し戸惑った。
……抱かれてほしくない。
どういう思いで、私はこの言葉を発するのだろう。
余計な正義感からだろうか。
綺麗事に過ぎない思いを、押し付けようとしているのか……
「……けど、なに?」
「……体を大事にしてほしい」
発してみて、やはり違うと感じた。
「ごめん、なんて言うか。私が何を言っても綺麗事にしか聞こえないと思うんだけどさ、とにかくその仕事やめてほしい」
「強引だね。せめて嘘でもさ、もっと違うこと言ってよ。そしたら辞めれられる気がする」
「……違うこと?」
彼女が近付いてきて、甘えるように抱きついてきた。
私は無意識に傷だらけの彼女の腕をさすった。
「まぁ……いっか。考えとくよ」
武井さんは何かを諦めたような寂しそうな表情だった。
考えておくという言葉はその場しのぎに聞こえたが、それは多分気のせいではないと思う。
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