【同志よ、鉄槌を下せ】~レ〇プ被害に遭い続ける生徒と同棲を始めた高校教師。発見された死体は誰が殺したの?~【完結】

みけとが夜々

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15. 嘘は嫌い

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 私たちは今日は何を食べようかと話しながら鍵を開けて部屋を出た。
 ……思わず心臓が止まるかと思った。
 美奈がキャンパスに向かって絵を描いている。

「い、……いつからいたの?」

「……さぁ?覚えてない」

 何も気にしていなさそうな表情で、それでいてとても怒りのこもった声をしていた。
 あの部屋で私と大沢先生が何をしていたのか気付いているのだろうとすぐに分かった。

「一昨日、松井先生と放課後何してた?」

 大沢先生の唐突な問いかけに美奈の手が止まった。

「……呼び出しくらっただけ。見てたの?」

「……呼び出しね。人は1日に約4つの嘘をつくらしい。武井は長澤先生に何か嘘をついてることはあるか?」

「何が言いたいわけ?別にないけど」

「今日、長澤先生のこと借りていいか?」

「……何で私に聞くの。勝手にしなよ」

「長澤先生、今の僕らの会話ですでに嘘が4つあります。先生は嘘が嫌いなタイプでしょう?」

「……えぇ、嘘は嫌いです」

「僕もです」

 静まり返った異質な空気。
 まるで大沢先生がこの空間を全て支配しているような、恐怖すら覚えそうな私の心境は何を意味しているのだろう。
 美奈は一度も私と目を合わせてくれない。
 ここから逃げ出したい気持ちは美奈も同じらしかった。
 持っていた筆を床に投げ付け、美術室から出て行ってしまった。

「こういう時、女性は追い掛けてほしいもんなんじゃないですか?」

「……どうしてあんな挑発的なことを?」

「彼女の僕を見る目、見ました?女性の嫉妬は怖い。反射的な防衛本能みたいなもんですよ」

「あの子と松井先生、何かあるんですか?」

「それは……武井に聞いてあげてください」

 嫌な予感が脳裏を過ぎる。
 美奈を取り巻く環境は私が思っているよりも遥かに複雑なのかも知れない。

「自分が身を削って守った相手が、自分を裏切っていた時、"僕ら"はどうなると思いますか?」

「え?」

「信じていたものが崩れ去った時、越えてはいけない一線を越えるんです。僕はそれを悪だとも間違いだとも思いません。ただ、一線の越えようでは世間が許してくれない。自分の正義を貫くかどうかの判断は自分にあります。その見極めどころは、本当に難しいものです」

 遠くを見ながら話す大沢先生は、一見何を話しているのか分からないようではあるが、少なくとも私にとっては的を射る話をしていた。

 相変わらず永井先生の嫌がらせは続いている。
 正直、そろそろ痛めつけてもいい頃合いだろうとは思っている。
 しかしそれに歯止めをかけるのは、大沢先生と美奈の存在だ。
 この鬱憤を晴らすかのように最近また夢にうなされている。

 一度美奈に「苦しそう」と言われ、「どんな夢を見ているのか」と聞かれたが、大沢先生の前で話したようには、美奈には話すことは出来なかった。
 それは美奈が生徒であるだとか、まだ17だからだとかそんな理由ではなく、"こっち側"の人間ではないことを分かっているから話せなかったのだと思う。
 それほど、今の私には大沢先生の存在は大きく、それと同時にここ何年か感情を押し殺してきた私の中の"本来の私"を目覚めさせようとする美奈の影響も大きなものだった。

 仕事が終わった後、直接大沢先生の自宅へ向かった。

「たまにはこうして家でゆっくりもいいですね」

「……今日、あの子部活に来ませんでした」

「ん?そんなのしょっちゅうじゃないですか?」

「まぁ……そうなんですけど。あと、最近また夢にうなされてて」

「永井先生ですか?」

「永井先生が原因だろうとは思うんですけど、夢の中で制裁を加える相手って上手く反映されないものですね」

「誰を殴ってるんですか?」

「うーん、それがよく分からなくて。靄のかかった誰かを罵ってるというか」

「睡眠不足になりますよ。あ、良かったらこれ。よく眠れると思いますよ」

 大沢先生が処方されているという睡眠導入剤を少し分けてもらった。
 食事を終え、お酒を飲みながら映画を観て、情事に耽った。
 昼間と同様、やはり美奈との行為が思い出され時々集中が切れては、また強い快感に引き戻される。
 寝る前になって『一人で大丈夫?』とメールを入れた。
 大沢先生は先程分けてくれた眠剤と他の薬も合わせて何錠か、スピリタスで一飲みしていた。

「それ、大丈夫なんですか?」

「え?あぁ……長澤先生は絶対やったらだめですよ」

「いや……大沢先生もだめですよ、度数96って……燃えますよ」

「薬だけじゃ効かなくなってて、仕方なく。毎晩この瞬間に、学校燃やしに行ってやろうかなって思ってたんですよ」

「あぁ、例の『燃えればいいのに』ですか」

「はい。……その前に僕が燃えそうですね」

 笑える話でもないのだけれど、何故か私たちはそれで笑えて、大沢先生は私が悪い夢を見ないようにと優しく包み込んでくれた。
 その日は夢にうなされることはなかった。
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