31 / 71
報告書31「池袋駅ダンジョン、立ちはだかる長城について」
しおりを挟む
世の中の仕組み、つまりは権力を持った政治家と金を持った巨大企業がべったり癒着する事で生み出された巨悪が、この社会を形作っているという事実を知ってしまった俺は、言いようの無いやるせなさに襲われていた。正直、この世界が理不尽極まりないものだなんてBH社時代から知っていたつもりだったが、物事は常に俺の想像の上をいくものだということを思い知らされた。
BH社時代と言えば、ヒシカリはどうしているだろうか。俺を斬った事で今頃昇進しているのだろうか。なんにしても許す気はさらさら無いけどな。
「……以上が次の任務の内容だけど、何か付け足す事はあるかしら?」
「……」
「何か付け足す事はあるかしら!」
「え……?あっ、えーとだな……」
しまった、チトセによる次の任務の概要説明が事務所でされていたんだが、何も聞いてなかった。なんとか誤魔化そうとしていると、ササヤさんがそっと耳打ちしてくれた。
「池袋駅ダンジョンで、幻のリソーサー・オウルを探すって話ですよ先輩」
「あぁ、オウルなオウル!夜しか活動しないという幻のリソーサーだったよな!って、オウルを探すのかよ!ただでさえ見つけ辛いのに、今やオウルを狙う競合他社ばかりで無理だろ!」
「その点抜かりはないわ。今池袋駅ダンジョンは理由はよく分かんないけど資源庁から3日間の立ち入り禁止令が出てるの。だから私達以外に競争相手はいないはずよ」
「いやいやいや、立ち入り禁止なのは俺達も同じだろ!見つかったら厳重注意か下手したら営業停止処分までいくぞ!」
「つまり見つからなければ問題ないって事よ。大丈夫、イクノに頼んで活動記録は改竄しておいてもらうから!それじゃ準備出来次第格納庫集合!解散!」
「あっ、おい!まだ話は……」
俺の話も聞かずに、相変わらずの慌ただしさで事務所から飛び出していくチトセ。何が見つからなければ大丈夫、だ。そう簡単にいったら世の中苦労しないっての。
「全く……相変わらずの爆弾女っぷりだ……」
ササヤさんはと言うと、俺達のやり取りを見て苦笑いを浮かべるどけだった。
「あはは……でも決断力があるのがシャチョーの良い所ですよね」
「決断力っていうか、後先考えて無いだけの気もするけどな……しかし池袋駅ダンジョンか……ササヤさんは行った事は?」
「この仕事で行ったことは無いですけど、あそこはダンジョン化する前から"幻惑の駅"と呼ばれ、不思議な場所だという噂はよく耳にしますね。サイタマから来た人が東京で最初に降り立つ駅なんですけど、例外なく迷うそうですよ」
「幻惑の駅か……」
上野駅ダンジョンでも散々迷ったり驚いたりした俺だが、あれ以上の複雑怪奇さは御免被りたいものだ。
「2人とも何のんびりしてるのよ!さっさと行くわよ!」
そんな話をササヤさんとしていたら、格納庫からの無線から我らがシャチョーの声が響いた。
「一度やると決めたチトセの考えを変えるのは、何人でも無理だしな……仕方ない行くか。あんまり気が乗らないけど」
「はいっ!」
重い足取りで格納庫に行き、出陣のための準備も終わったところでいつものようにコーギー号に乗り込み目的地の池袋駅ダンジョンを目指す俺達だが、ササヤさんに聞いた幻惑の駅と言う通称名がどうにも気になって仕方ない。
「なぁチトセ。その池袋駅ダンジョンだけど、行った事は?」
「もちろんあるわよ。それが?」
「オウルを探すのはいいけど、あんまり複雑だと俺が探される側になっちまわないかと心配でな」
「そうね……ならこの歌を覚えておくといいわ」
「歌?」
「"フシギナフシギナイケブクロ~♪ヒガシハセイブデニシトウブ"~♪」
「それは一体……?」
「古来から池袋駅周辺に伝わる民謡よ。噂では、何でも秘密の財宝部屋の位置を示しているらしいわ」
それを聞き、ぶふっ!と吹き出すイクノさん。言ったチトセ本人も、つられて笑ってやがる。その2人の雰囲気からも、チトセの下らない冗談なのは明白だ。全く田舎者だと思ってバカにしやがって。
「チトセ、意外と音痴だな」
「うるさいわね!ほっといてよ!」
車内でわーわーとそんなやり取りをしている間に、池袋駅ダンジョンのある隔離地域前に到着した。しかし出入り口となる隔壁だが、資源庁の3日間の立ち入り禁止令が出ているにも関わらず、駐屯している自衛軍は特に何事もなくいつものID確認のみで中に入れてくれた。管轄が違うからだとしたら、この程度の情報共有もされていないとは資源庁と国防省の仲の悪さは相当のようだ。とにかく、いつものようにオペレーターとして車内に残したイクノさんを除いた3人編成で池袋駅ダンジョンへと向かうこととなった。
隔離地域の壁を越え、しばらく歩いているとまた巨大な壁が見えてきた。
「なんだ、また壁か。ここの隔離地域は壁が二重構造になっているのか?」
「何言ってるのよ。これが池袋駅ダンジョンよ」
「この壁がか!?」
巨大な壁に見えたそれは、なんと駅と一体化したビルだったのだ。道に沿ってそびえ立つ駅ビルは、延々と視界の向こうまで続いており、まさにグレートウォール、外県からの侵略を防ぐ長城とも言える威容を誇っていた。
「いつ見ても凄いですよね。でも中はもっと凄いらしいですよ。先輩もし迷ったら……」
「心配無いさ!今考えればスキャナーに常時マップが表示されているんだ、迷ったりする訳ないさ」
なんて、後輩であるササヤさんの前くらいは立派でいようとついつい言ってしまったが、正直心配だ。
BH社時代と言えば、ヒシカリはどうしているだろうか。俺を斬った事で今頃昇進しているのだろうか。なんにしても許す気はさらさら無いけどな。
「……以上が次の任務の内容だけど、何か付け足す事はあるかしら?」
「……」
「何か付け足す事はあるかしら!」
「え……?あっ、えーとだな……」
しまった、チトセによる次の任務の概要説明が事務所でされていたんだが、何も聞いてなかった。なんとか誤魔化そうとしていると、ササヤさんがそっと耳打ちしてくれた。
「池袋駅ダンジョンで、幻のリソーサー・オウルを探すって話ですよ先輩」
「あぁ、オウルなオウル!夜しか活動しないという幻のリソーサーだったよな!って、オウルを探すのかよ!ただでさえ見つけ辛いのに、今やオウルを狙う競合他社ばかりで無理だろ!」
「その点抜かりはないわ。今池袋駅ダンジョンは理由はよく分かんないけど資源庁から3日間の立ち入り禁止令が出てるの。だから私達以外に競争相手はいないはずよ」
「いやいやいや、立ち入り禁止なのは俺達も同じだろ!見つかったら厳重注意か下手したら営業停止処分までいくぞ!」
「つまり見つからなければ問題ないって事よ。大丈夫、イクノに頼んで活動記録は改竄しておいてもらうから!それじゃ準備出来次第格納庫集合!解散!」
「あっ、おい!まだ話は……」
俺の話も聞かずに、相変わらずの慌ただしさで事務所から飛び出していくチトセ。何が見つからなければ大丈夫、だ。そう簡単にいったら世の中苦労しないっての。
「全く……相変わらずの爆弾女っぷりだ……」
ササヤさんはと言うと、俺達のやり取りを見て苦笑いを浮かべるどけだった。
「あはは……でも決断力があるのがシャチョーの良い所ですよね」
「決断力っていうか、後先考えて無いだけの気もするけどな……しかし池袋駅ダンジョンか……ササヤさんは行った事は?」
「この仕事で行ったことは無いですけど、あそこはダンジョン化する前から"幻惑の駅"と呼ばれ、不思議な場所だという噂はよく耳にしますね。サイタマから来た人が東京で最初に降り立つ駅なんですけど、例外なく迷うそうですよ」
「幻惑の駅か……」
上野駅ダンジョンでも散々迷ったり驚いたりした俺だが、あれ以上の複雑怪奇さは御免被りたいものだ。
「2人とも何のんびりしてるのよ!さっさと行くわよ!」
そんな話をササヤさんとしていたら、格納庫からの無線から我らがシャチョーの声が響いた。
「一度やると決めたチトセの考えを変えるのは、何人でも無理だしな……仕方ない行くか。あんまり気が乗らないけど」
「はいっ!」
重い足取りで格納庫に行き、出陣のための準備も終わったところでいつものようにコーギー号に乗り込み目的地の池袋駅ダンジョンを目指す俺達だが、ササヤさんに聞いた幻惑の駅と言う通称名がどうにも気になって仕方ない。
「なぁチトセ。その池袋駅ダンジョンだけど、行った事は?」
「もちろんあるわよ。それが?」
「オウルを探すのはいいけど、あんまり複雑だと俺が探される側になっちまわないかと心配でな」
「そうね……ならこの歌を覚えておくといいわ」
「歌?」
「"フシギナフシギナイケブクロ~♪ヒガシハセイブデニシトウブ"~♪」
「それは一体……?」
「古来から池袋駅周辺に伝わる民謡よ。噂では、何でも秘密の財宝部屋の位置を示しているらしいわ」
それを聞き、ぶふっ!と吹き出すイクノさん。言ったチトセ本人も、つられて笑ってやがる。その2人の雰囲気からも、チトセの下らない冗談なのは明白だ。全く田舎者だと思ってバカにしやがって。
「チトセ、意外と音痴だな」
「うるさいわね!ほっといてよ!」
車内でわーわーとそんなやり取りをしている間に、池袋駅ダンジョンのある隔離地域前に到着した。しかし出入り口となる隔壁だが、資源庁の3日間の立ち入り禁止令が出ているにも関わらず、駐屯している自衛軍は特に何事もなくいつものID確認のみで中に入れてくれた。管轄が違うからだとしたら、この程度の情報共有もされていないとは資源庁と国防省の仲の悪さは相当のようだ。とにかく、いつものようにオペレーターとして車内に残したイクノさんを除いた3人編成で池袋駅ダンジョンへと向かうこととなった。
隔離地域の壁を越え、しばらく歩いているとまた巨大な壁が見えてきた。
「なんだ、また壁か。ここの隔離地域は壁が二重構造になっているのか?」
「何言ってるのよ。これが池袋駅ダンジョンよ」
「この壁がか!?」
巨大な壁に見えたそれは、なんと駅と一体化したビルだったのだ。道に沿ってそびえ立つ駅ビルは、延々と視界の向こうまで続いており、まさにグレートウォール、外県からの侵略を防ぐ長城とも言える威容を誇っていた。
「いつ見ても凄いですよね。でも中はもっと凄いらしいですよ。先輩もし迷ったら……」
「心配無いさ!今考えればスキャナーに常時マップが表示されているんだ、迷ったりする訳ないさ」
なんて、後輩であるササヤさんの前くらいは立派でいようとついつい言ってしまったが、正直心配だ。
0
あなたにおすすめの小説
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる