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報告書32「分断、待ち合わせはいけふくろう前で目的地は西口について」
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池袋駅ダンジョンの長城のような外観には驚かされたが、ともかく気を取り直して、ズカズカと進んでいくチトセに続いて東口から中へ侵入することにした。注意深く周囲を見渡すが、出口に近いせいか今のところリソーサーはいないようだ。
「ちょっと」
と思っていたら、前を進んでいたチトセが急に立ち止まり、こちらに振り返った。
「アタッカーが先頭歩きなさいよ。女の子を矢面に立たせて恥ずかしくないの?」
「それもそうだ。ササヤさん、いつリソーサーが飛び出してくるか分からないからな、俺のうしろへ」
「ちょっと!」
「分かった分かった。俺が先頭行くよ。一応言っておくが、迷っても知らないからな」
「そういう時はマップを見なさい。駅ダンジョンでは初心者は語呂で判断するんじゃなくて、とにかくマップを見る事が重要よ」
「へいへい」
なーにが駅ダンジョン初心者だ。俺だってもう田舎から出てきて随分経つんだ。なんて思いながら歩いていくと、所々抉れているが、それを差し引いても丸みのある石像が見えてきた。
「先輩!シャチョー!これがこの池袋駅ダンジョンのシンボル、"いけふくろう"ですよ!と言っても、渋谷駅ダンジョンのハチ公に比べたら知名度は低いですけどね」
「ふくろうかこれ。なかなかすっとぼけた愛嬌ある顔してるじゃないか」
「ホントね。まるで誰かさんみたい」
「その誰かさんって、まさか俺じゃないだろうな」
「どうかいけふくろう様、リソーサー・オウルが見つかりますように」
チトセめ、誤魔化しやがって。俺のどこがすっとぼけてるって言うんだ全く。そう考えた俺は、進む道を左に変えることにした。なんでかって?なんとなくだがいけふくろうの出迎えに逆らいたい気分だったからだ。進んだ先は周囲を壁と廃虚と化した商業施設跡に囲まれた通路となっていたが、スキャナーに映し出されるマップによると、どうやらチェリーロードという名前らしい。通路名まで俺を馬鹿にしてやがる。
「そう言えばリソーサーのお出迎えが無いわね。いつもならそろそろ熱い歓迎がある頃なのに」
「そうですね……リソーサーから漏れ出す信号も感じられないので、近くにはいないみたいですが……あっ、でもこの信号は……?」
さすが様々な信号を知覚できる特殊能力持ち、リソーサーの探知能力はスキャナー以上だな……と、おおっと!?振り返ろうとしたその時、轟音と共に周囲に激しい揺れが走った。
「何!?地震!?」
おまけに揺れに続いてピシピシと言う不吉な音が聞こえてきた。これはもしかして……
「危ない!にげろぉぉ!」
揺れが収まったと思いきや、音を立てて亀裂が走った天井が次の瞬間一気に崩落してきたのだ。間一髪前に跳んで避けられたはいいが、周囲にチトセもササヤさんも見当たらない。まさか……
「チトセ!ササヤ!無事か!頼むから返事してくれ!!」
「先輩!無事ですか!?」
「私達は無事よ!あんたこそ無事なの!?」
瓦礫の向こうから返ってくる聞き慣れた声。良かった、無事なようだ。が、しかし通路を塞ぐように崩れてきた瓦礫のせいで、どうやら分断されてしまったようだ。
「こんな瓦礫、私の爆薬で吹っ飛ばすわ」
「わー待て待て!今爆薬なんか使ったらさらに崩れるだろ!」
「シャチョー!ここは迂回して別の場所で合流しましょう!」
慌ててチトセを止める俺とササヤさん。爆弾女は相変わらずだ。
「分かったわよ。イクノ、私達の現在位置をトレースできる?」
<<……>>
「……?イクノ!聞こえてる!?」
<<ガガー……ピー……ガガガ……>>
「無線が通じない……?今までこんなこと無かったのに……」
「シャチョー……何か出力だけは大きい滅茶苦茶な信号を感じます……多分なんですけどここら辺一帯にジャミングがかけられているようです」
「ジャミング……?立ち入り禁止期間のため、今この駅ダンジョンには誰もいないはずなのに……聞こえる!?何かヤバい匂いがするわ。さっさと合流してちゃっちゃと撤収するわよ!」
いつも利益の為なら多少の無理はするチトセがこうも早く撤収を決めるとは珍しい。
「賛成だ。さっきの揺れといい何かおかしい。それで合流場所は?」
「この周辺の出口はみんな既に潰れちゃってるから、西口に向かって!そこで合流してこの駅ダンジョンから脱出するわよ!」
「りょーかい!それじゃ後で会おう」
「先輩!気を付けて下さい!」
「マップを見るから大丈夫だ、そっちこそ気を付けて!」
瓦礫の向こうから人の気配が消えた。どうやらチトセとササヤさんは合流地点に向かったようだ。さてと、俺も行くか。ではではスキャナー、池袋駅ダンジョン西口はどっちだ。
「ガガ……ビー」
映し出される砂嵐。安物のスキャナーのマップ機能は外部から持ってきている情報頼りだから、ジャミングされているこの状況だと使えないようだ。
「何てこった……」
仕方ない、所々崩れているが未だ原型は留めている
案内板を頼りに行くしかないな。急に自信が無くなってきた……
とにかく西口を探す為、壁に張り付いてる案内板を見るが、出口と思われる通路の先端があっちにもこっちにもありやがる。一体いくつあるんだ?そう思い、出口に割り振られている数字の中で、一番大きな数字を探すと……43だと!?
「これ、つまりは43個、いやそれ以上の出口があるって事なのかもしかして……なんて駅なんだ」
うーむ……さすがダンジョン、迷わせてくる。うん?これは……
「西武池袋……?て事はこっち側が西側なんだな。よしよし、分かって来たぞ」
ようゆく案内板上に方角のヒントになりそうな文字を見つけた。方角さえ分かれば、後は近くの出口を回れば西口なんてすぐ見つかるはずだ。
「ちょっと」
と思っていたら、前を進んでいたチトセが急に立ち止まり、こちらに振り返った。
「アタッカーが先頭歩きなさいよ。女の子を矢面に立たせて恥ずかしくないの?」
「それもそうだ。ササヤさん、いつリソーサーが飛び出してくるか分からないからな、俺のうしろへ」
「ちょっと!」
「分かった分かった。俺が先頭行くよ。一応言っておくが、迷っても知らないからな」
「そういう時はマップを見なさい。駅ダンジョンでは初心者は語呂で判断するんじゃなくて、とにかくマップを見る事が重要よ」
「へいへい」
なーにが駅ダンジョン初心者だ。俺だってもう田舎から出てきて随分経つんだ。なんて思いながら歩いていくと、所々抉れているが、それを差し引いても丸みのある石像が見えてきた。
「先輩!シャチョー!これがこの池袋駅ダンジョンのシンボル、"いけふくろう"ですよ!と言っても、渋谷駅ダンジョンのハチ公に比べたら知名度は低いですけどね」
「ふくろうかこれ。なかなかすっとぼけた愛嬌ある顔してるじゃないか」
「ホントね。まるで誰かさんみたい」
「その誰かさんって、まさか俺じゃないだろうな」
「どうかいけふくろう様、リソーサー・オウルが見つかりますように」
チトセめ、誤魔化しやがって。俺のどこがすっとぼけてるって言うんだ全く。そう考えた俺は、進む道を左に変えることにした。なんでかって?なんとなくだがいけふくろうの出迎えに逆らいたい気分だったからだ。進んだ先は周囲を壁と廃虚と化した商業施設跡に囲まれた通路となっていたが、スキャナーに映し出されるマップによると、どうやらチェリーロードという名前らしい。通路名まで俺を馬鹿にしてやがる。
「そう言えばリソーサーのお出迎えが無いわね。いつもならそろそろ熱い歓迎がある頃なのに」
「そうですね……リソーサーから漏れ出す信号も感じられないので、近くにはいないみたいですが……あっ、でもこの信号は……?」
さすが様々な信号を知覚できる特殊能力持ち、リソーサーの探知能力はスキャナー以上だな……と、おおっと!?振り返ろうとしたその時、轟音と共に周囲に激しい揺れが走った。
「何!?地震!?」
おまけに揺れに続いてピシピシと言う不吉な音が聞こえてきた。これはもしかして……
「危ない!にげろぉぉ!」
揺れが収まったと思いきや、音を立てて亀裂が走った天井が次の瞬間一気に崩落してきたのだ。間一髪前に跳んで避けられたはいいが、周囲にチトセもササヤさんも見当たらない。まさか……
「チトセ!ササヤ!無事か!頼むから返事してくれ!!」
「先輩!無事ですか!?」
「私達は無事よ!あんたこそ無事なの!?」
瓦礫の向こうから返ってくる聞き慣れた声。良かった、無事なようだ。が、しかし通路を塞ぐように崩れてきた瓦礫のせいで、どうやら分断されてしまったようだ。
「こんな瓦礫、私の爆薬で吹っ飛ばすわ」
「わー待て待て!今爆薬なんか使ったらさらに崩れるだろ!」
「シャチョー!ここは迂回して別の場所で合流しましょう!」
慌ててチトセを止める俺とササヤさん。爆弾女は相変わらずだ。
「分かったわよ。イクノ、私達の現在位置をトレースできる?」
<<……>>
「……?イクノ!聞こえてる!?」
<<ガガー……ピー……ガガガ……>>
「無線が通じない……?今までこんなこと無かったのに……」
「シャチョー……何か出力だけは大きい滅茶苦茶な信号を感じます……多分なんですけどここら辺一帯にジャミングがかけられているようです」
「ジャミング……?立ち入り禁止期間のため、今この駅ダンジョンには誰もいないはずなのに……聞こえる!?何かヤバい匂いがするわ。さっさと合流してちゃっちゃと撤収するわよ!」
いつも利益の為なら多少の無理はするチトセがこうも早く撤収を決めるとは珍しい。
「賛成だ。さっきの揺れといい何かおかしい。それで合流場所は?」
「この周辺の出口はみんな既に潰れちゃってるから、西口に向かって!そこで合流してこの駅ダンジョンから脱出するわよ!」
「りょーかい!それじゃ後で会おう」
「先輩!気を付けて下さい!」
「マップを見るから大丈夫だ、そっちこそ気を付けて!」
瓦礫の向こうから人の気配が消えた。どうやらチトセとササヤさんは合流地点に向かったようだ。さてと、俺も行くか。ではではスキャナー、池袋駅ダンジョン西口はどっちだ。
「ガガ……ビー」
映し出される砂嵐。安物のスキャナーのマップ機能は外部から持ってきている情報頼りだから、ジャミングされているこの状況だと使えないようだ。
「何てこった……」
仕方ない、所々崩れているが未だ原型は留めている
案内板を頼りに行くしかないな。急に自信が無くなってきた……
とにかく西口を探す為、壁に張り付いてる案内板を見るが、出口と思われる通路の先端があっちにもこっちにもありやがる。一体いくつあるんだ?そう思い、出口に割り振られている数字の中で、一番大きな数字を探すと……43だと!?
「これ、つまりは43個、いやそれ以上の出口があるって事なのかもしかして……なんて駅なんだ」
うーむ……さすがダンジョン、迷わせてくる。うん?これは……
「西武池袋……?て事はこっち側が西側なんだな。よしよし、分かって来たぞ」
ようゆく案内板上に方角のヒントになりそうな文字を見つけた。方角さえ分かれば、後は近くの出口を回れば西口なんてすぐ見つかるはずだ。
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