ブレードステーション

カレサワ

文字の大きさ
48 / 71

報告書48「空間のねじれ、物理法則を超える駅ダンジョンについて」

しおりを挟む
「えいっ!」

 ササヤさんが勢い良く振り下ろしたロッドが、異形のリソーサーの背中を捉える。そして振り返ったそのリソーサーの姿は、爛々と目を妖しく光らせ、口からは鋭い牙を覗かせた、狼の顔をした機械の人間とも言えるものであり、まさにワーウルフそのものだった。最初の打撃は正確にヒットしたものの、そもそもロッドはコード送信に特化した杖タイプの武器、攻撃力はそんなに無いためか、どうやらただ怒らせただけのようだ。

「あわわ……!」

 攻撃対象を犬のようなリソーサーから怯むササヤさんに変更し、鋭い爪が突き出た両手を振り上げるワーウルフ。その爪が今、振り下ろされ……

「大丈夫かササヤさん!」

「はっ、はい!なんとかっ!」

 間に合ったか!振り下ろされた爪を大きな金属音が辺りに響かせながらキ影の刃で何とか受け止めたものの、もの凄い力で押してくるのが、徹夜の身には何とも辛いものだ。刀と爪の押し合いをしていると、もう一体までもがこちらに向けてその妖しく光る目を向けてきやがった!

「あんたの相手は私よ狼男さん!」

 その一体は俺に向かって飛びかかったその瞬間、チトセのブラスター乱射により撃ち落とされた。こうなったら俺もウカウカしてられないな!

 鍔迫り合いで拮抗しあう力、そこで重心を左にずらしながら左義手を外す事でその均衡が破れ、勢い余って俺の身体の右側を鋭い爪撃が通り過ぎる。

「気爆噴射小太刀居合ーー片時雨ッ!」

 そこにすかさずワーウルフの横っ腹に一閃、ロケット加速させた左義手による小太刀ヒトマルの逆手居合を決めた。

 胴体を半分以上斬られ、唸るような呻き声を上げ、どっと倒れ伏すワーウルフ。目からも光が消え、どうやら完全に機能停止したようだ。やれやれと、大小二刀を鞘に納めつつ改めてその姿を見回す。

「ふぅ……一体なんなんだこいつは?」

「さぁね、私が知るわけないでしょ。イクノ、聞こえる?任務概要に出てた異形のリソーサーと思しき奴と交戦したんだけど、そっちで何か分かる?」

 返ってこない返事。まさか……

「イクノ!聞こえるかしら!?」

 <<わっ、とっとと!一体どうしたのじゃ!?>>

「あんた……寝てたわね?」

 <<まさか、そんな事ある訳なかろうて!軽く目を休ませておっただげじゃよ。こうモニターばかり見てると目に悪いからのぅ>>

「はいはい……それでこの狼男みたいなリソーサーなんだけど、何か分かるかしら?」

 <<こいつは……わしも初めて見る種類じゃのう……じゃが、最近ではこのような新種のリソーサーが次々に確認されており、リソーサーの階位に大型動物種と伝説種の間に新たに異獣種を設けるという話じゃからな。おそらくこやつもそういった類の新種じゃろうて>>

「新種のリソーサーねぇ。ぞっとしないわね。と、ササヤさんはどこいったのかしら?」

 そう言われ、辺りを見渡すと、しゃがみ込んで何かをしているササヤさんを見つけた。まさかさっきの戦いで負傷かっ!?

「ササヤさん!」

 慌てて覗き込むと、負傷よりも更に驚く光景が目に入った。なんと、先程ワーウルフに追われていた犬型のリソーサーの損傷部を、コード送信により修復していたのだ。

「サ、ササヤさん何を……!?」

 2、3歩下がりつつ、キ影の柄に手を掛ける。

「この子、可哀想に怪我しちゃってるみたいで……ほら、もう大丈夫よ」

 ワンワンと吠えながら尻尾を振る姿はまさに犬、ワン公だ。

「この子からは害意は感じられません。リソーサーにも色々いるって事ですよ」

「うむむ……しかし、なぁ……チトセはどう思う?」

「散歩やら食費やらと手間も世話代もバカにならないから、ウチでは飼えないわよ」

 ワーウルフ型のリソーサーの頭から、記憶媒体を引き抜きながらチトセが答える。

「分かってます!」

 どっかの母ちゃんかチトセは。そう思っていると、そのワン公リソーサーはお礼を言うかのように3回クルクル回った後、ワン!と吠えて何処ぞへと走り去ってしまった。敵意の無いリソーサーなんて初めて見たが……あれなら確かに飼えそうだな。

「ばいばい、ワンちゃん」

「さて、先を急ぐわよ。リソーサーの数が少ないとはいえ、救援対象がどういう状況かまだ分からない以上はのんびりしてられないわ」

「りょーかい」

「はいっ!」

 チトセの言葉に、ワーウルフからの資源回収もそこそこに先へ急ぐ俺達。金になる資源よりも救援対象との合流を最優先するとは、チトセのこの任務に対する本気具合が伺える。

 足早に先へ進むと、東京メトロ銀座線の入り口を見つけたが、メトロって確か地下鉄って意味だよな?それで現在位置は地上3階のはずだが、なんでここに入り口があるんだ?もしやこの駅の構造はエッシャーの騙し絵のようになっていて、俺たちは既に地下にいるのかもしれない……

「ほらほら、立ち止まってる暇なんか無いわよ。先を急ぐと言ったでしょ」

「気を付けろチトセ……この駅ダンジョン内は空間がねじれている。上へ登ると下へ、下へ降ると上へ出る仕組みのようだ」

「何バカ言ってるのよ。ねじれてるのはあんたの頭の中でしょ」

「嫌だっておかしいだろ!なんで地上3階に地下鉄のホームがあるんだよ!?字面だけでも明らかに矛盾してるぜ!?」

「あんた知らないの?地下鉄も日光浴するのよ。ほらさっさと先へいったいった」

 チトセに背中を押され、とにかく先へ進む事になった。それにしても納得いかねぇ……








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...