47 / 71
報告書47「渋谷駅ダンジョン、地上3階地下5階構造の迷宮について」
しおりを挟む
周囲の状況が耳から入ってくるのに、それが人の声なのか、それとも単なる物音なのか、区別できずにただ雑音に種別され、それも徐々に聞こえなくなってくる。例えるなら、ゆっくり段々と暗闇に沈んで行く、そんな感覚。この感覚は……
「ほら到着したわよ。起きなさいっての」
チトセに身体をガクガク揺さぶられ、暗闇から一気に引き戻される。あぁ寝てたのか……
「ふが……到着?どこだここは?」
「どこって、寝ぼけてんじゃないわよ。目的地の渋谷駅ダンジョン、隔離壁前に決まってんでしょ?ほら起きた起きた!」
目を擦りながら周りを見渡すと、同じく寝起きなのか、伸びをするササヤさんに目薬をさしているイクノさんが目に入った。それに比べ、コーギー号から降りて念入りにストレッチをしているチトセの何と元気のいい事か。こいつ本当に同じ人間か?そう思い、先程までチトセの座っていた席に目をやると……そこには大量に転がっているエナジードリンクの空き缶が。あの量を飲んだというのか……?こいつ本当に人間か……?
「それじゃイクノ、コーギー号を駐車場に止めてオペレーターよろしくね。言っとくけど、寝るんじゃ無いわよ?」
「ふぁふぅ……分かっておるわい……」
俺達が降車した後、頼りない返事を残してコーギー号を転がしていくイクノさんを見送り、隔離地域を進んで行く。真夜中と言う事もあり、スキャナーの暗視装置を起動し注意深く進むが、目に入るのはひっくり返った軽トラの他は廃墟になったビルばかり、不気味なほど静まり返っているのが返って恐ろしい。そして、交差点を前にした角地に立つ、もはや半分崩れ落ちている建物へと到着した。
「それじゃ、任務開始といくわよ。現在位置は渋谷駅ダンジョン新南口前。ここから内部に侵入して、地下5階で籠城していると言う救援対象のスペキュレイターと合流、一緒に脱出よ」
「へいへ……地下5階だと!?またそん地下奥深くにいくのかよ!?」
「しょうがないじゃない。文句はそこで身動き取れなくなってる奴らに言いなさいよね」
以前潜った東京駅ダンジョンでもそうだったが、リソーサーってのは、地下に行くほど強く多くなる傾向があるからな。良い予感がしないぜ全く。
「仕方ない行くかササヤさん……ササヤさん?」
返事がないので振り返ると、そこには立ったまま寝落ちしているという、何とも器用な姿が。
「ほら起きてくれササヤさん。出発だぞ」
鼻ちょうちんを膨らませながら、今にもよだれを垂らしそうな、およそうら若き乙女がしてはいけない顔を見てられず、思わず頬をペチペチ叩く。
「ふぁ……?もう朝ですか?」
「しっかりしろササヤ!君が要なんだぞ!」
「ふぁ、はいっ!」
驚きでようやく目が覚めたのか、直立不動状態になってしまった。やれやれ、冗談抜きでササヤさんは俺達3人パーティーの要、彼女の索敵と支援が無ければ、この先大分苦しくなるのは確実なんだから、シャキっとして欲しいものだ。
「ふぅ……それじゃ行くわよお寝坊さん達」
チトセに言われ、とにかく気を取り直し、キ影の柄に手を掛けて駅ダンジョン入り口入っていきなりの階段を登って行く。にしても随分あるなこの階段。スキャナーに表示されるマップによると、これで一気に3階まで上がるのか……目的地が地下5階だから、随分と下がる事になりそうだ。
「ふぁ……やっぱりまだ眠いですね……先輩は眠く無いんですか?」
「ん?あぁ、15分くらい寝たからかな、今は何とか。と言っても、この先辛くなるのは確実だけどな……」
戦いの中では、一瞬の判断ミスが命取りになる。ここは気を引き締めていかないとな。と思った所で3階に到着、改札口を越えて先へ進むと、今度は下り階段が。本当にアップダウンが激しい駅ダンジョンだな。
「今のところリソーサーの姿は無し……おかしいわね、異形のリソーサーが大量にって話だったんだけど……」
「任務の事前情報が正確だった試しがないからな。大方、連絡が来てないだけでその救援対象はとっくに脱出してるとかじゃないのか?」
「ならいいんだけど……」
楽観的にはどうしてもなれないらしいチトセとそんな話をしながら道を下がって上がってさらに進むと、中央口と書かれている場所へと出た。出たはいいが、もうここまで来るとスキャナーのマップは地上に地下へと構造が入り乱れており、もう訳が分からない。左右真っ直ぐに道があるが、どちらへ進むのが正解なんだ?
「マップは崩落していて通れない道までは反映してないから、とにかく手当たり次第行ってみるしかないわね」
「やっぱりそれしか無いか。今のところリソーサーも出てきてないし、なんとかなりそうだが……どう思うササヤさん、何か感じ……」
と話しかけたササヤさんの方を見ると何かを見つけたかのように歩いて行ってしまった。
「お~い、ササヤさん?何か見つけ……」
「シャチョー、先輩!あそこにリソーサーが!」
見ると、そこには3体のリソーサーが。ようやくお出ましか……と思ったが、何だか様子が変だ。と言うのも、どうやら人くらいの大きさの異形の姿をしたリソーサーが、犬のような見た目のリソーサーを追いかけ回しているのだ。
「あの子……怯えてる……助けなきゃ!」
「いや助けなきゃって、あれはリソーサーだぜ?どうせリソーサー同士の縄張り争いか食物連鎖だ。助けたところで手噛まれるのがオチだって」
「そうね……それにあの追いかけてる方のリソーサーはデータにも無いし、ここは慎重に……」
なんて俺達の言葉もどこ吹く風とも言わんばかりに、既にササヤさんはもう飛び出して行った後だった。
「あっ、ちょ!ええい仕方ない!やるぞチトセ!」
「分かってるわよ!」
そして俺はキ影を鞘から抜き去り、勢いよく駆け出した。
「ほら到着したわよ。起きなさいっての」
チトセに身体をガクガク揺さぶられ、暗闇から一気に引き戻される。あぁ寝てたのか……
「ふが……到着?どこだここは?」
「どこって、寝ぼけてんじゃないわよ。目的地の渋谷駅ダンジョン、隔離壁前に決まってんでしょ?ほら起きた起きた!」
目を擦りながら周りを見渡すと、同じく寝起きなのか、伸びをするササヤさんに目薬をさしているイクノさんが目に入った。それに比べ、コーギー号から降りて念入りにストレッチをしているチトセの何と元気のいい事か。こいつ本当に同じ人間か?そう思い、先程までチトセの座っていた席に目をやると……そこには大量に転がっているエナジードリンクの空き缶が。あの量を飲んだというのか……?こいつ本当に人間か……?
「それじゃイクノ、コーギー号を駐車場に止めてオペレーターよろしくね。言っとくけど、寝るんじゃ無いわよ?」
「ふぁふぅ……分かっておるわい……」
俺達が降車した後、頼りない返事を残してコーギー号を転がしていくイクノさんを見送り、隔離地域を進んで行く。真夜中と言う事もあり、スキャナーの暗視装置を起動し注意深く進むが、目に入るのはひっくり返った軽トラの他は廃墟になったビルばかり、不気味なほど静まり返っているのが返って恐ろしい。そして、交差点を前にした角地に立つ、もはや半分崩れ落ちている建物へと到着した。
「それじゃ、任務開始といくわよ。現在位置は渋谷駅ダンジョン新南口前。ここから内部に侵入して、地下5階で籠城していると言う救援対象のスペキュレイターと合流、一緒に脱出よ」
「へいへ……地下5階だと!?またそん地下奥深くにいくのかよ!?」
「しょうがないじゃない。文句はそこで身動き取れなくなってる奴らに言いなさいよね」
以前潜った東京駅ダンジョンでもそうだったが、リソーサーってのは、地下に行くほど強く多くなる傾向があるからな。良い予感がしないぜ全く。
「仕方ない行くかササヤさん……ササヤさん?」
返事がないので振り返ると、そこには立ったまま寝落ちしているという、何とも器用な姿が。
「ほら起きてくれササヤさん。出発だぞ」
鼻ちょうちんを膨らませながら、今にもよだれを垂らしそうな、およそうら若き乙女がしてはいけない顔を見てられず、思わず頬をペチペチ叩く。
「ふぁ……?もう朝ですか?」
「しっかりしろササヤ!君が要なんだぞ!」
「ふぁ、はいっ!」
驚きでようやく目が覚めたのか、直立不動状態になってしまった。やれやれ、冗談抜きでササヤさんは俺達3人パーティーの要、彼女の索敵と支援が無ければ、この先大分苦しくなるのは確実なんだから、シャキっとして欲しいものだ。
「ふぅ……それじゃ行くわよお寝坊さん達」
チトセに言われ、とにかく気を取り直し、キ影の柄に手を掛けて駅ダンジョン入り口入っていきなりの階段を登って行く。にしても随分あるなこの階段。スキャナーに表示されるマップによると、これで一気に3階まで上がるのか……目的地が地下5階だから、随分と下がる事になりそうだ。
「ふぁ……やっぱりまだ眠いですね……先輩は眠く無いんですか?」
「ん?あぁ、15分くらい寝たからかな、今は何とか。と言っても、この先辛くなるのは確実だけどな……」
戦いの中では、一瞬の判断ミスが命取りになる。ここは気を引き締めていかないとな。と思った所で3階に到着、改札口を越えて先へ進むと、今度は下り階段が。本当にアップダウンが激しい駅ダンジョンだな。
「今のところリソーサーの姿は無し……おかしいわね、異形のリソーサーが大量にって話だったんだけど……」
「任務の事前情報が正確だった試しがないからな。大方、連絡が来てないだけでその救援対象はとっくに脱出してるとかじゃないのか?」
「ならいいんだけど……」
楽観的にはどうしてもなれないらしいチトセとそんな話をしながら道を下がって上がってさらに進むと、中央口と書かれている場所へと出た。出たはいいが、もうここまで来るとスキャナーのマップは地上に地下へと構造が入り乱れており、もう訳が分からない。左右真っ直ぐに道があるが、どちらへ進むのが正解なんだ?
「マップは崩落していて通れない道までは反映してないから、とにかく手当たり次第行ってみるしかないわね」
「やっぱりそれしか無いか。今のところリソーサーも出てきてないし、なんとかなりそうだが……どう思うササヤさん、何か感じ……」
と話しかけたササヤさんの方を見ると何かを見つけたかのように歩いて行ってしまった。
「お~い、ササヤさん?何か見つけ……」
「シャチョー、先輩!あそこにリソーサーが!」
見ると、そこには3体のリソーサーが。ようやくお出ましか……と思ったが、何だか様子が変だ。と言うのも、どうやら人くらいの大きさの異形の姿をしたリソーサーが、犬のような見た目のリソーサーを追いかけ回しているのだ。
「あの子……怯えてる……助けなきゃ!」
「いや助けなきゃって、あれはリソーサーだぜ?どうせリソーサー同士の縄張り争いか食物連鎖だ。助けたところで手噛まれるのがオチだって」
「そうね……それにあの追いかけてる方のリソーサーはデータにも無いし、ここは慎重に……」
なんて俺達の言葉もどこ吹く風とも言わんばかりに、既にササヤさんはもう飛び出して行った後だった。
「あっ、ちょ!ええい仕方ない!やるぞチトセ!」
「分かってるわよ!」
そして俺はキ影を鞘から抜き去り、勢いよく駆け出した。
0
あなたにおすすめの小説
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる