デーモン・インサイド ―光と闇の継承者―

Alec Flare

文字の大きさ
4 / 4

第二章:黒炎

しおりを挟む
いつもの朝と同じように、アレックスはとても早く目を覚ました。彼の部屋は小さいながらも、とても居心地がよかった。数か月前、彼は壁を氷のような淡い青――エナメルがかったアイスブルーに塗り替えていた。それは心を落ち着かせる色で、青いカーテンと相まって、まるで水族館の中にいるかのような錯覚を生み出していた。特に晴れた日には、太陽の光が布を透かして差し込み、光の戯れを描き出すのだった。部屋のほぼ半分は、本で埋め尽くされた棚や壁付けのラックが占めており、その多くはファンタジーやホラー小説だった。ベッド脇のナイトテーブルには、まだ読み終えていないニール・ゲイマンの小説――『アメリカン・ゴッズ』が静かに置かれていた。
ベッドから起き上がり、窓を開けると、アレックスはカレンダーにその日を印した。10月29日まで、あと24時間――ついに迎える「偉大なる日」。卒業式、果てしなく続いた学びの年月の終わりだった。彼はその瞬間を、もうずいぶん前から夢見ていた。そして、その終わりは、すぐそこまで迫っていた。彼は全粒粉のクラッカーと砂糖なしのブラックコーヒーという、軽めの朝食を用意した。決して食欲をそそるものではなかったが、30キロの減量に成功し、標準体重に到達してからというもの、食事への注意はほとんど執着に近いものになっていた。再び太って、巨大な身体に戻ってしまうのではないかという不安と恐怖が、日々彼を締めつけていた。ズボンが少しでもきつく感じられた瞬間、彼は強い不安に襲われ、呼吸が乱れ、過呼吸に近い状態に陥ることもあった。そのことで、母親と弟はいつも彼をからかっていた。
身支度を整え、その日の服を選んだ。中学・高校時代、彼のクローゼットには大きくて着心地のいいパーカーばかりが並んでいた。色こそ違えど、形はどれも同じだった。だがその後、特にここ一年で、彼の外見は大きく変化していた。スタイルはゴシックに近づいていたが、決して極端ではない。その日は、黒のロングカーディガンに赤い半袖シャツ、黒のジーンズ、そしてブーツを選んだ。さらに、指輪やネックレスを一つは必ず身につけるのが彼の習慣だった。中でもお気に入りは、天使の翼を模したペンダントのついたネックレスだった。その姿は決して人目を引かずにはいられなかった。決してありふれた装いではなく、とりわけ、肩にかかるほどの漆黒の長い髪と相まって、強い印象を与えていた。その幅広く引き締まった身体は、水泳とジムでのトレーニングの賜物だった。この一年で、アレックスはまるで生まれ変わったかのようだった。背が高く、引き締まった体を持つ好青年。表面上は以前よりも自信に満ち、強くなったように見えた。だが、それはあくまで表の顔にすぎない。内面では今もなお、かつて皆に嘲られ、いじめられていた、弱く肥満だった少年のままだった。しかし、何かが確実に変わり始めていた。彼の内側で、新たな炎が生まれようとしていたのだ。それは憎しみと怒りによって燃え上がる、黒く、深淵のように暗い炎だった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処刑から始まる私の新しい人生~乙女ゲームのアフターストーリー~

キョウキョウ
恋愛
 前世の記憶を保持したまま新たな世界に生まれ変わった私は、とあるゲームのシナリオについて思い出していた。  そのゲームの内容と、今の自分が置かれている状況が驚くほどに一致している。そして私は思った。そのままゲームのシナリオと同じような人生を送れば、16年ほどで生涯を終えることになるかもしれない。  そう思った私は、シナリオ通りに進む人生を回避することを目的に必死で生きた。けれど、運命からは逃れられずに身に覚えのない罪を被せられて拘束されてしまう。下された判決は、死刑。  最後の手段として用意していた方法を使って、処刑される日に死を偽装した。それから、私は生まれ育った国に別れを告げて逃げた。新しい人生を送るために。 ※カクヨムにも投稿しています。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

処理中です...