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2章 ガーディアン襲撃編

27話 ボス

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「ブラァボォ~」

拍手共に現れたのは40代の黒スーツを着たメガネの男だ。
至って普通のサラリーマンにしか見えない。

「お前も賊か?」

「ノーノーノ。私はここのボスをやっている者さ」

「は?お前がボスだと?」

この普通そうな痩せ男が?

「ハッハー。不思議そうだね、まぁ私のような人間じゃあ今までの社会じゃどうあがいてもこんな野蛮な輩には勝てなかっただろうね」

そう言いながら地面に倒れ伏す男共の死体を蹴飛ばす。
仲間では無いのか?かなり残酷な男だ。

「でもね。新たな世界で与えられた力はそんな不条理を覆す力があるのさ。現実的にはプロの格闘家ににただの小学生は絶対勝てない。でもこのスキルがあれば勝つ事があり得るのだよ。まさにハッピーな世の中になったよ」

「ハッピーな世の中だと?この人の死が溢れるこの世界が」

「オールライト。今までの人生は社会の家畜だった。刺激のない在り来たり毎日。全く反吐が出るよ。それに比べりゃ今の世界は自由。これこそ私の求めていたものさ!」

この男の思想はかなり偏っているようだな。
例え刺激が無くともありきたりでも人の死や悲しみが溢れる世界よりは全然良い。

「それで犯罪行為が許されると思ってるのか?」

「犯罪行為?ホワッツ?」

男は両手を広げ、首をすくめる。

「シラを切るつもりか?お前がした行為は許される事ではないぞ」

「うーん、でもこれが人間なんじゃない?だって私達は自分達の本能に従って行動している。むしろ法という恐怖で縛っていた以前の社会が間違っていたの思うんだよね。だって何のために3大欲求があるかって…………」

男は長々と自身の考えを語る。
まるで自分の行いが正しい、自身がこの世界の英雄かのように話し続ける。
だんだん腹が立ってきた。
聞いているだけで虫唾が走る。

「もういい。俺はお前を許せないから殺す!それだけだ」

目には目を。歯に歯をだ。

「ワーオ、怖いねぇ。せっかく仲間にしてあげようと思ったのに」

「ふざけろ、こっちからお断りだ」

俺はこいつの仲間になど死んでもならねぇ
あの優しかった人々がこんなクズのような男の所為で命を失ったと思うと怒りが再び込み上げてくる。
俺はナイフを構え、男の懐に飛び込もうとするが

「じゃ、バーイ」

男は手のひらが俺に向く。直感が警鐘を鳴らす
俺は急いでナイフを目の前に構える。

すると次の瞬間視界が火の玉が真っ直ぐに俺に向かって来た。
ナイフ越しに襲い来る熱気。

「あぁっ!!!くっ!……炎か!」

暑い!突如構えたナイフで即死は防げたが。
めっちゃ痛い。ナイフを持っていた右手の平と両腕の表面に重度の火傷を負ってしまった。

「ワーオ!耐えるんだ!」

驚いた顔で俺を見る男。
だが、あの余裕ムカつくな

「そのスキルがお前の自身の源か?」

痛みを噛み殺し平常を装う

「イエス "火使い"ってスキルでね。人も魔物も丸焦げにしちゃうのさ」

ドヤ顔で自身のスキルを語る男
おそらく火を操れるのだろうが、かなり厄介だな

男は手のひらに火の玉を出現させ余裕そうに微笑んでいる。

痛みは回復強化Ⅲスキルの効果で治ってはきたが、もう一度度喰らうことは絶対避けなければならない

「おーい、黙り込んじゃったね。まぁ人間そんなものだよ。自分より強いものには逆らえない。力が全ての世界。前の世界では俺に無反応だった奴らも自ら俺に頭を下げる。まさにユートピアだね!ハハハハハ」

狂ったように笑う男。
知れば知るほど最低な野郎だ。

「1人盛り上がっているところ悪いがお前はこれから死ぬんだがな」

「ワーオ!なかなかユーモアな事を言うね。そんな火傷だらけの身体でこの私に勝てるって?」

賊共の闘いの傷と火傷で俺の身体は悲鳴を上げている。
気を抜けばすぐに立てなくなるほどに……だが

「スキルに頼りっきりのお前には負ける気はしないな」

この程度の痛みや疲労にはもう慣れている。

「君は頭が悪いみたいだね。燃えろ、ファイヤー!」

男の掌から炎の弾が高速で飛んでくる。

防御は絶対にダメだ。

俺は上体を捻り、火の玉を避ける。
余熱により髪が少し焦げたようだな

「なっ!?」

避けられた事に驚く男。

「若干焦げたたが……遅いな」

初めの一撃は俺の油断が大きかった。
まだまだ俺も修行が足りないな

「何度放っても俺には当たらないぞ」

ミナミの弾丸に比べればあくびがでるほどのノロさだ。
だが俺のその態度が男のプライドを傷つけたらしい。

「ファック!ちょっと調子に乗りすぎだねぇ!!」

男の掌から炎の弾が連続で放たれる。
俺の視界が炎で覆われる。
これは……

「フゥーー!生意気な奴は消し炭さ!ジ・エンド!」
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