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2章 ガーディアン襲撃編

29話 丸い

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炎上した屋内から脱出し10分が経った。

火は不思議な事に沈静化し、建物は至る部分が炭と化したが、全体的に見ると無事な部分が多い

「火が突然消えたのはスキルの火だからか?」

それにしても魔法のようなスキルがあるとはな
これからはどのような反則的なスキル持ちがいるかわからない、油断せずに行かなければ

「おーい!」

燃えてしまって今更だが、他に人がいないか建物内を探る。

どうやら人はいないようだな…

燃えずに残った部屋には被害にあった女性達の死体が放置されていた。
賊達を殺してもこの酷い現実は変わらないが、この賊達を全滅させたことで僅かでも弔いになればいいが…

うん?

何だ?隣の部屋から何か感じる

隣の部屋に何か不思議な力を感じる。これは"直感"なのか?

隣の部屋はさっきも入ったはずだが…

疑問を胸に隣の部屋を隔てるドアを開ける。

「まじか……」

床が崩れ落ちて地下へと続く階段が現れていた。

この下に何かがあるってわけか

警戒しながら階段を下る
地下の階段は3畳程の部屋に繋がっていた。

その部屋には所狭しと武器から始まり金銀財宝などが置かれている。

「これはすごいな、ここは奴らの隠し金庫ってわけか…」

どこから取って来たのだろうか?

お!?その時服のポケットが震え出した
何も入れた覚えはないが…

「は!?なんでこの卵が?」

ポケットには水色と白のマーブル柄の卵が入っていた。
入れた覚えは全くない、てかよく割れなかったな

すると財宝の中に埋もれていた青色の水晶玉が眩い光を放ち始めた。

「うん?もしかしてこの水晶に反応しているのか?」

光輝く水晶を持ち上げようとした時

水晶が弾けた

光の粒子となり震える卵に吸い込まれ、光が更に強くなる。

もはや目も開けてられないほどの眩しさだ

"天空の卵が孵化しました。"
"???が眷属になりました"

脳内に無機質な声音のアナウンスが響く

「プゥ~~~」

続けて気の抜ける鳴き声が室内に響く。
何の鳴き声だ。目が慣れ始めると目の前にサッカーボールのようなシルエットが見える。

あと少しで見える。
アナウンスから考えるに卵から何かが生まれたのだろう。
しかも"???"表示。

胸が踊る展開だ

もう見える

もう見えるぞ!

「へ?」

そこにいたのは、ピンクのボールのような豚だった。

うーん、あまりにも弱そうだ。

「プゥ~~ン」

つぶらな瞳で見つめてくる豚。
うーん、何だか可愛いな…

すると、豚からステータスの半透明な板が出てきた。
どうやら、この豚のステータスのようだ。


*******

名前 ???
種族 マルブー
スキル 食い溜め

《ボールのように丸い豚の魔物。逃げ足が非常に遅いため魔物に狩られ尽くされ絶滅した種。》

********

「うーん、お前絶滅した種だったのか」

あまり不憫な魔物だ。
逃げ足が遅い豚が生き残れるわけがないよな

「プゥ……」

何だが落ち込んだ様子の豚
瞳がウルウルとなっている。

「まぁ元気を出せ!俺が名前をつけてやるから」

おそらく???とは名前が無かったからだろう。

「プゥーー!プゥゥゥーー!!」

嬉しいのだろうか?
飛び跳ね 転け 飛び跳ね  転けを繰り返す

その姿は可愛い、可愛いが
うーん、やっぱり生き残れないだろうなぁ

「プゥ?」

首がないため丸い体を傾けてこちらを見てくる

「あー待たせたな。お前の名前は…」
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