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3章 3つ巴ベース編

62話 作戦 side 小橋

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 3つの拠点による三つ巴の戦争は、塚平組の組長、塚平さんの協力と剛健隊の隊員達が突如気絶したため、被害を出さずに終息させることができた。

しかし、上から落ちてきたパール君によって事態は急変する。

花がパール君の言葉を訳し、この問題が魔族とやらが引き起こした事だと分かった。

近くにいた光太郎と塚平さんに簡単に説明し、秋さんの救援に迎う事に。

塚平さんと光太郎はそれぞれのスキルで直接、屋上に。
僕とパール君は階段で迎う事に。

また花にはまだ何が起きるか分からないため下で残ってもらった。

そして、屋上に辿り着いた僕の前には、光太郎と秋さんと塚平さん……"魔族"がいた。

表面上は平静を装ったが、内心は恐怖で身体が震えた。
正直、直接戦っている光太郎達を尊敬してしまう。
それほどまでに強力な"存在"

だが僕も和歌山支部のリーダー。
臆しては居られないと戦いに参加した。

皆の長所を活かせるように敵の情報や動きを【鑑定】し、皆に指示を与える。また僕自身も狙われる可能性もあるため移動しながら指揮を行う。
だが魔族は強く、光太郎と秋さんの猛攻を完全に見切っている。
反撃を喰らわないのは塚平さんが絶妙なタイミングで攻撃阻害を行なっているからだ。
さすがはエキストラスキル保持者。

その塚平さんが途中から本気を発揮した。
粘着、伸縮を持つ強靭な糸を巧みに操り、魔族と互角に渡り合っている。

本当に戦争にならなくて良かったと心から感じた。
光太郎や花が強くとも塚平さんには勝てないだろう
いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

今は塚平さんがむしろ押している。
だが塚平さんはスキルを最大限に行使した戦法。
額に浮かぶ汗の量などからいつ限界が来てもおかしくない。
対して魔族の方は体力には余裕がありそうだ。

このままでは、塚平さんの限界が来て、均衡が崩れた瞬間僕達は負ける。

なんとか頭をフル回転し、可能性のある作戦を考えた。
それは単純かつ明解な方法。

攻撃の隙をついた暗殺ともいえるべき奇襲
だが魔族の戦闘経験、戦闘勘は極めて高い。
故に確率的にはかなり低い。
だけど僕は秋さんならやってくれると感じていた。

さぁ……人の力を見せてやる。


******


「光太郎!作戦通りいくよ!」

光太郎には作戦を簡単に伝えてある。
と言っても

「おう……任せろ!最強モード!!」

光太郎の【自動戦闘オートメーション】を発動してもらうため、指示の意味は無いんだけど。

光太郎が【自動戦闘オートメーション】に入ったらしい。
纏う雰囲気が変わる。

塚平さんが横目でこちらをチラリと見て、こちらにウィンクをしてきた。どうやら僕の作戦が分かったらしい。
本当に聡い人だ。

「君の爪じゃ僕の糸は切れないよ」

塚平さんが魔族を挑発する。
意識を少しでも自分に向けようとしているようだ。

「家畜が生意気なんですよ!!!」

魔族は塚平さんの挑発にかかった。
両手の鋭い爪で塚平さんへと猛攻を仕掛ける。

"キンっ"

そこに光太郎の鋭い槍が割って入る。
だが、魔族はノールックで槍を爪で往なす。

塚平さんに光太郎の攻撃で完全にこっちが押している。
僕も指示を出しつつ、投石や投げナイフで支援を行う。

それにしても強い……
僕たちの攻撃を完全に対応している。
光太郎の【自動戦闘オートメーション】も解析し切れていない。

「なかなかしつこい家畜ですね!!」

均衡状態にジビレを切らした魔族が急激に動きを変化させ、近くにいた光太郎が蹴り飛ばされた。

だが、その隙を塚平は見逃さなかった。
糸を使い一瞬で魔族の後ろへ回り込み

両手の間に一本の糸を伸ばした。

「斬の糸!!」

塚平さんの糸が銀色に染まる。
どうやらあの糸で魔族を攻撃するみたいだ

「甘いんですよ!」

"キンッ"

塚平の糸が魔族の爪によって防がれる。

「それは承知さ!」

塚平が歯を見せニヤリと笑みを見せる。
その瞬間魔族の背後に現れたのは

ーーシュウさんだった。

背景から溶け出すようにナイフを片手に持った秋さんが現れた。
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