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33話 5階層

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休日を満喫した翌日
俺とタムタムは5階層のボス部屋の前に来ていた。

もしかしたらこの部屋がダンジョンの最下層、ラスボスの部屋かもしれない。
久しぶりに緊張するな。
だが大丈夫なはずだ。できる事はした。
レベルアップこそ2回しか出来ていないが、スキルは強化されているし、微々たる変化だが身体能力も地味に強化されている。

そして、俺には才能に富んだ強い味方もいる。

「よし!行くか」

「ニャ」

俺は5階層のボス部屋の扉を開ける。

一体どんなボスだろう?
レインボーのスライム騎士とかか?
俺は今までの傾向で予測を立てたが、俺の予測は外れた。

「大きい……スライム」

そこにいたのは大きなの灰色のスライム。
運動会の大玉?いや2メートル半はあるかという巨大なスライムだ。
まさにキ●グスライムだな。
とりあえず、このダンジョンではビッグスライムとでも呼ぶか

今までのスライムと異なり非透明だから核が全然見えない。
核が通常サイズだとすると見つけ出すのは至難すぎるぞ。
何よりスライム騎士じゃないとはな…いよいよラスボスか?

「タムタム油断するなよ。とりあえずは敵の攻撃パターンを把握するぞ」

「ニャ」

タムタムも戦闘体制。
体勢を低くし、ビッグスライムを見つめている。
準備はいつでも良さそうだな。

「まずは俺が行く。危なくなったらフォロー頼む!」

俺はumbrellaを前に構えながら接近していく。
まずは長距離の反応だ。

俺に気づいたビッグスライムは全身を変形しだした。
大きな筒状の形状。これは……巨大な大砲だ!
それに変身速度が速いな

これは近づき過ぎない方がいいな。
俺は距離を保ったままで攻撃を警戒する。

大砲の根元部分が膨らんでいく。

ーー来る!

俺は真横に【移動】を連続で使用。

"シュッ"

通常スライム大の巨大な灰色の塊が俺の横を通過していった。
あまりの大きさに低い風切り音が聞こえた。
デカ過ぎだろ。後、結構速いな。
だが全然反応は出来るし、対応も出来る。

それにしても威力は絶大だな。
後ろのダンジョンの土壁が溶けて、えぐれ黒く変色している。
これは喰らえないな。
溶ける時点で今着てるレインスーツも意味ないだろう。

もう少し接近してしみよう

俺が更に近づいていくと、ビッグスライムは再び形状を変化させていく。
何か生えてきた。
3本の触手のようなものが伸びて、こっちに向かってくる。
しかもかなりの速度だ。
俺は反射的にその伸びてきた触手をumbrellaでいなした。

"プシュゥゥッ"

「え!?」

触手をいなしたumbrellaがグツグツと溶けてきている。
俺は急いでumbrellaをその場に捨てる。

まじか……溶解力強すぎだろ。
耐腐食コートもしているステンレスを一瞬で溶かすとはな
これが身体だったら……怖っ!
考えるだけでゾッとする。

俺は続けて来る触手を【移動】で確実に避ける。
この触手を"酔姫"で切るのは危険かもな。
特殊なドロップアイテムから出来ているらしいから溶けないかもしれないけど、溶けた場合は今度こそ武具屋の店主に顔を合わせられない。

それにしても厄介だな、この触手
伸びて追撃してくる為、どんどん逃げ場が少なくなってくる。

一旦、大きく距離を取るか?

そう思っているとこっちに向かってくる触手が突然3本全て切れた。

「タムタムか!」

触手を斬ったであろうペディナイフが回転しながらタムタムの元へと戻っていく。

「助かった。でもナイフ溶けてないか!?」

「ニャニャ」

勿論とばかりに一切溶けていないナイフをゆらゆらと浮遊させる。
ペティナイフもステンレス製でumbrellaと同じだし、むしろ腐食に対するコーティングもない分、溶けやすいはずなのに

「ニャァ、ニャニャニャ」

タムタムが浮遊させたナイフ2本をシャンシャンと擦り合わせる。

「なるほど、そういうことか。ナイフの刃部分の摩擦を減らし、スライム液を弾き、溶解液の影響を防いだって事か?」

「ニャ」

その通りだとばかりに頷くタムタム
この猫は本当に猫か?あの一瞬で摩擦を減らして対策するとか頭良すぎるだろう
それとも、俺の頭が悪いのか?
だが摩擦を減らし溶解液を弾いてもナイフ自身は溶解液には触れている為、何度も触手を切っていればいつかは溶かされるかもな

俺の【斬撃】を飛ばして切るしかないな。

「次は更に接近してみる。サポートは頼む。」

再び触手を伸ばそうとしてきているビッグスライムに俺は【移動】を連続で発動し、一気に接近する。

核の位置は分からないが一撃だけ【斬撃】を放ってみるか
俺が構えた時、ビッグスライムが震えた。

なんだ!?

次の瞬間には全身から棘のようなものが一気に出てきた。
まるでハリセンボン、いやウニだな。

俺は後ろに3連続で【移動】を使用して棘を避ける。
何とか対応できたが、これはなかなかに危ないな。

さて、どうしようか…
核の位置が分からない。加えてビックスライムのボディ自身も強い溶解液で出来ている可能性が高い為、タムタムの持つ攻撃手段では倒せない。

となると俺の【斬撃】しかないよな。
だが、あの棘状態のせいで射程距離2メートルの【斬撃】では十分に届かない。
【跳斬撃】で距離を2倍にしても、おそらく表面に切り傷をつくり、回復されて終わりだろう。

ならば、あれしか無いな。

「タムタム!時間稼ぎを頼む。俺が奴を両断する。もし核が見えたらトドメも頼む」

「ニャ」

タムタムが相変わらず緊張感の無い呑気な鳴き声で返す。
全く頼もしい奴だ。

さて、ここでお披露目するか"新技"を






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