おっさん寮母爆誕!〜鬼の騎士団長からお茶目で可愛い寮母になります!〜

丸井まー(旧:まー)

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7:るんるん騎士団長

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 森から出てきた魔物を討伐し、砦で事後処理をして疲れた身体で寮に帰ると、食堂でルーカスが待機してくれていた。
 若い騎士達を先に行かせ、最後にルーカスの元に行くと、ルーカスがまじまじとレオを見てきた。


「怪我はないようだな」

「はい。今回は重傷者一名で済みました。怪我が完治すれば復帰できます」

「そうか。お疲れ。しっかり食べてがっつり寝ろ」

「はい。ルーカス様の休みは明日でしたよね? 槍のメンテナンスに付き合ってください。そろそろ刃を研いでおきたいので」

「構わん」

「ありがとうございます。明日の朝に部屋に伺います」

「分かった」


 レオは内心るんるんしながら、お盆を持ってテーブルへと向かった。
 明日はルーカスとデートである。食い道楽な部下からデートにオススメの飲食店を多数聞いているし、中央広場で屋台巡りをしても楽しそうだ。
 身体はそれなりに疲れているが、一晩寝れば多少はマシになる。若い頃のように一晩寝れば完全回復! とはならない年齢になってしまったが、まぁ仕方がない。誰しも等しく歳をとっていくものだ。まだまだしっかり槍を振って戦えるし、体力面でも若い者に負けていない。若い頃のように元気いっぱいビンビンに勃起することはなくなったが、それでもちゃんと勃起するので問題ない。

 ルーカスとセックスがしたいが、それはちゃんと恋人になった後だ。デートをしていって、仕事では話さなかったことをいっぱい話して、徐々に仲を深めていき、正式な恋人になりたい。二十年片想いをしていたのだ。今更一年や二年増えたところで大差ない。気長にルーカスがレオのことを好きになってくれるのを待つだけである。その為の努力は惜しまない。
 夕食を食べ終えたレオは、軽い足取りでルーカスの元へ行き、お盆を返してから、まずは休息だと自室に急いだ。

 翌朝。最近は慣れてきた気がする心臓に悪い寮内放送で起こされたレオは、いそいそと起き出し、狭いシャワー室でシャワーを浴びて丁寧に髭を剃った。髪を整髪剤で少し弄り、小洒落た服を着て、槍を片手に軽やかな足取りでルーカスの部屋へと向かう。

 ルーカスの部屋の前で待っていると、いつもと変わらない質素な格好をしたルーカスがやって来た。


「おはようございます。朝飯はまた外で食いませんか? オススメの屋台があるんです」

「構わん。あ、眼鏡を作れる店を知らないか? どうも最近細かい字が見にくい」

「あぁ。眼鏡屋なら場所は分かりますよ。先に眼鏡屋に行きますか」

「いや、槍を預けてからでいい。研ぐのにそれなりに時間がかかるだろう」

「それもそうですね。では、朝飯を食べてから武具屋に行きましょうか」

「あぁ」

「あー。ルーカス様。よかったら、服屋にも行きませんか? せっかく格好いいのにいつも質素な服ばかりで、少し勿体無いので」

「洒落た服は必要ない。流行り廃りも興味がない」

「まぁまぁ。そう言わずに。ちょっとだけ付き合ってくださいよ。俺も夏物の服が欲しいので。その代わり、晩飯は酒の種類が豊富で料理も美味しい店にご案内しますよ」

「……しょうがないな」


 ルーカスが小さな溜め息を吐いて頷いた。いよいよデートっぽいな! とうきうきしながら、ルーカスと寮を出た。

 食い道楽な部下に教えてもらった屋台は、薄いパンで牛肉と野菜を巻いてあり、甘辛いソースがかかっているものだった。下味がつけてある薄めの牛肉は肉質が柔らかく、甘辛いソースが肉にも野菜にもパンにも合う。たっぷり入ったシャキシャキ野菜のお陰で、サッパリ食べられた。
 これだけでは足りないから、別の屋台で腸詰め肉をパン生地で包んで揚げてあるものも買って食べた。香草の香りがいい腸詰め肉が絶妙に美味しい。ルーカスが気に入ったようで、すぐに食べきり、二つめを買っていた。美味しそうに食べるルーカスを眺めているだけで幸せである。

 珈琲を売っている屋台で珈琲を買い、近くにあった喫煙所のベンチに座って食後の珈琲と煙草を楽しむと、レオはルーカスと共に馴染みの武具屋へと向かった。
 武具屋で槍の刃を研いでもらうよう頼んでから、知っている眼鏡屋を目指して歩く。ルーカスが左眼の視力が悪いことは知っていた。ルーカスの副団長になってすぐに、なんとなくそうかな? と思って聞いてみたことがある。

 眼鏡屋に着くと、まずは視力を測ってもらい、レンズを調節する間にフレームを選ぶ。レオはうきうきとルーカスに似合いそうなフレームを探し始めた。
 シンプルに銀縁の四角いフレームも似合いそうだが、黒縁の丸っこいフレームも似合いそうだ。銀縁の丸眼鏡もいいかもしれない。ルーカスは美しくも凛々しく顔立ちが整っているから、何を着けても似合う。
 最終的に、本人が一番着けて楽だと言う銀縁の丸眼鏡に決めた。

 レンズを嵌めてもらった丸眼鏡をかけると、ルーカスが驚いた顔をした。


「ものすごく見える」

「その為の眼鏡ですから」

「見えすぎてちょっと気持ち悪い。特に左」

「そのうち慣れますよ。眼鏡用のチェーンを買いましょう。眼鏡に疲れた時は外せばいいだけですよ。チェーンをつけて首から下げておけば、いつでも着脱できますから」

「それもそうだな。眼鏡に慣れるまではそうする」

「じゃあ、そろそろ昼飯を食いに行きましょうか。魚料理が美味しい店とちょっと珍しい肉類が美味しい店、どちらがいいですか?」

「ん。今日は魚で」

「はい。じゃあ、ご案内しますね」


 レオはルーカスと他愛のないお喋りをしながら魚料理が美味しいと聞いた店へと向かった。

 美味しい魚料理で満腹になると、今度は服屋に向かう。せっかく素材が極上なのだから、ルーカスを着飾らせたい。
 レオはやる気のないルーカスを横に、うきうきと服を選んだ。
 眼鏡とも合うような落ち着いた雰囲気の小洒落た服を試着してもらえば、奇声を発して悶たくなるくらいルーカスが格好よくなった。渋い大人の色気がむんむんである。
 近くにいた店員に声をかけ、着て帰れるように交渉してから会計をした。


「おい。自分で買う」

「出させてくださいよ。服をプレゼントするのは男の浪漫なんで」

「意味が分からん」

「まぁまぁ。本当にとてもお似合いですよ」

「……好きにしろ」


 浮かれているレオに呆れたような顔をして、ルーカスが小さく溜め息を吐いた。
 槍を引き取りに行ってから、酒の種類が豊富な店へと向かった。
 メニュー表を見て、ルーカスが目を輝かせた。ルーカスが好きな酒がたくさん置いてあるし、料理の種類も多い。寮では食べられないものを中心に注文して、それぞれが頼んだ好きな酒で乾杯をする。
 美味しそうに酒を飲むルーカスを眺めているだけで幸せである。レオはグラスを片手に、うっとりとルーカスを眺めた。

 運ばれてきた料理を食べながら、ルーカスが酒を飲みつつ口を開いた。


「レオ。騎士の定年退職は五十だろう。その後のことは考えているのか」

「ルーカス様はどうなさるんです?」

「寮母に定年退職の規定はない。身体が動くまで続ける」

「それじゃあ、俺は騎士を辞めたら寮監にでもなりますかね。貴方の隣が俺の居場所なんで」


 ルーカスが真顔で見つめてきた。暫しの沈黙後、ルーカスがボソッと『物好きめ』と呟いた。
 ルーカスと一緒に働けるなんて素敵な老後である。家を買って二人で静かな余生を過ごすのもありだが、一緒に働く方が楽しそうだ。静かな余生を過ごすのは、身体が動かなくなってきてからでもいい。
 レオはルーカスとの素敵な老後を妄想して、だらしなく笑った。

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