もふもふ族長様のお嫁殿

丸井まー(旧:まー)

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5:もふもふーー!

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 ナルが目覚めると、温かいもふっとしたものが身体に触れていた。温かいもふっとしたものから、汗とほんのり草の石鹸の匂いがする。
 ナルはしぱしぱする目を開けた。銀色の毛並みが目に入る。腰と女陰の孔がかなり痛い。だが、ドゥルグンに情けないところを見せるわけにはいかない。
 痩せ我慢をして起き上がれば、すぐ隣にものすごく大きな銀色の狼が寝ていた。ナルの身体よりもずっと大きい。もしかしなくても、ドゥルグンなのだろう。

 ナルは好奇心がうずうずしてきて、ぽふんとドゥルグンの背中に抱きつき、そのまま両手でわしゃわしゃーっと撫で回した。毛質はやや硬めだが、もっふもふである。大きいので撫で甲斐があって、かなり楽しい。
 ふぁさ、ふぁさ、と音が聞こえたので、わしゃわしゃーっと撫で回しながら尻尾の方を見れば、尻尾が機嫌良さげに揺れていた。

 ドゥルグンの顔の方を見れば、耳がぴくぴく動いているが、ふすーと微かに寝息が聞こえる。中々に可愛い。めちゃくちゃ大きいけれど。
 ナルはちょっと移動して、大きな首の下あたりをわしゃわしゃと撫で回し始めた。気持ちいいのか、ふぁさ、ふぁさ、と尻尾が揺れる音が大きくなる。耳もぴこぴこ動いている。

 ナルはパァッと笑顔になり、ドゥルグンが起きないのをいいことに、全力でドゥルグンを撫で回した。
 ドゥルグンを撫でながら、ふと、ドゥルグンの尻尾の毛を櫛で梳いてやったらいいのではないかと思い立った。
 思い立ったら即実行。ナルは痛む身体を無理矢理動かして立ち上がると、よたよたと嫁入り道具が入っている箱を開け、なんとか櫛を取り出した。

 ドゥルグンの尻尾のところへ移動して、ふぁさ、ふぁさ、と揺れている尻尾をやんわり掴み、丁寧に毛を梳いていく。ナルが使うために用意した櫛では小さすぎて、がーっと思いっきり毛が梳けない。

 ナルがちまちまと尻尾の毛を梳いていると、ぐるるっと低い鳴き声が聞こえた。
 ドゥルグンが顔を上げてこちらを見て、鼻のあたりに皺を寄せた。
 ドゥルグンが立ち上がり、のそりと動いて、大きな舌でべろーっとナルの顔を舐めた。

 反射的に目を閉じ、顔にべったりついたドゥルグンの唾液を手で拭ってから目を開けると、大きな狼の姿はなく、全裸のドゥルグンが腕を組んで仁王立ちしていた。眉間に深い皺が寄っており、なにやら不機嫌そうだ。
 もふもふ撫で撫でがまずかったのだろうか。
 とりあえずナルは笑みを浮かべて朝の挨拶をした。


「おはようございます。ドゥルグン殿。お腹空きました」

「……おはよう。おい。勝手に人の尻尾を弄るな」

「ふさふさできれいだったからつい?」

「……まぁいい。二度と俺の許可なしにやるなよ」

「はい」

「腹が減った。飯を取ってくる。お前は湯浴みしていろ」

「分かりました」


 ドゥルグンが部屋の隅にあった衣装箪笥から服を取り出して着ると、すぐに部屋から出ていった。
 ナルは嫁入り道具が入っている箱から着替えを取り出して、風呂場へと向かった。

 いっぱい汗をかいたので、髪もべたついている。つーっと女陰の孔から何かが垂れてきた感覚がした。女陰に手を伸ばして指先で垂れているものを掬い取り、目の前に持ってくれば、指に白いねとねとした液体がついていた。これが昨夜ドゥルグンが言っていた『せいえき』なるものなのだろう。
 匂いを嗅いでみれば、なんとも言えない青臭いような感じの匂いがした。ぺろっと舐めてみれば、エグみがあるような形容しがたい味である。素直に美味しくない。

 ナルは丁寧に草の匂いがする石鹸で髪と身体を洗った。お湯でぬるぬるを流して浴槽のお湯に浸かれば、じわーっと疲れてあちこち痛む身体が解れていく。
 ほぁーと気の抜けた声を上げながら浴槽のお湯にまったり浸かっていると、全裸のドゥルグンが入ってきた。

 ドゥルグンが手早く身体を洗い、お湯に入ってきた。ぐぎゅるるる……とナルの腹の虫が鳴いた。
 ドゥルグンがクッと笑って、口を開いた。


「飯は用意してある。出たら食うぞ」

「はい。お腹空きました」

「だろうな。腹の虫が煩い」

「ドゥルグン殿はお腹空いてないんですか?」

「普通に空いている。そろそろ出るぞ」

「はい」


 ナルはお湯の中で立ち上がった。不思議と腰と女陰の孔の痛みが和らいでいる気がする。不思議に思ったナルは、ドゥルグンに問いかけた。


「ドゥルグン殿。このお湯はどうしているのですか? 不思議お湯です。腰の痛みが軽くなりました」

「これは温泉を引いている。わざわざ湯を沸かしているわけではない。温泉には痛みを軽くしたり、疲れをとる効果がある」

「おんせん……不思議お湯ですね。すごいです」


 山には不思議なものがあるのだなぁと思いながら、温泉から出て身体を拭き、部屋に向かった。
 部屋の中央に大きな布が敷かれており、たくさんの料理が並んでいた。急いで服を着ると、ナルは布の近くに腰を下ろして胡座をかいた。正面にドゥルグンが座り、焼いてある肉の塊に手を伸ばしたので、ナルも焼いてある骨付き肉を手に取った。

 ドゥルグンが食べ始めてから、骨付き肉に齧りついた。ちょっと獣臭いが、脂が甘く、噛みごたえのある肉で、中々に美味しい。ナルは夢中で骨付き肉を食べきると、肉団子と野菜たっぷりの汁物に手を伸ばした。
 木の器に口をつけて汁を飲んでみると、肉の旨味と野菜の甘さが引き立っていて、これもすごく美味しい。塩が薄めなのが逆にいい。木匙で掬った肉団子は、何か入っているのか、ふわふわの肉団子の中にコリコリとした食感のものがある。食感が面白くて美味しいし、楽しい。

 夢中で食べていると、視線を感じた。もぐもぐ咀嚼しながらドゥルグンを見れば、どこか楽しそうな顔をしていた。
 口の中のものを飲み込んでから、ドゥルグンに問いかけた。


「何か楽しいことでもありましたか?」

「いや。美味そうに食うなと思っただけだ」

「どれもすごく美味しいです!」

「そうか。それだけ美味そうに食えば、かか様が喜ぶだろう」

「母上様が作ってくださったのですか?」

「『かか様』でいい。お前の母にもなったのだ。とと様のことも『とと様』と呼べ」

「分かりました。この汁物の作り方をかか様から教えてもらいたいです。すっごく美味しいです」

「それは栗鼠の汁物だ。栗鼠なら子でも穫れる」

「弓を使うのですか?」

「いや、罠を使う」

「へぇー。十日を過ぎたら、罠の作り方を教えてください。栗鼠とやらを獲って汁物にします」

「気が向いたらな。食べ終わって食休みをしたら、またする」

「何をですか? あ、もしかして閨ですか? 閨は夜にするものではないのですか?」

「普通はな。だが、今は子作り期間だ。昼間にしても問題ない」

「なるほど? では、体力を回復させるために腹一杯食べます」

「まだ食う気か。既に人間にしては多い量を食べているだろう」

「どれもすごく美味しいですし、ものすごくお腹空いてたのでまだ入りますよ」

「……あぁ。うん。好きなだけ食え」

「はい!」


 再び食べることに集中し始めると、また視線を感じた。ドゥルグンがどこか呆れたような顔をしている。この後いっぱい交わるのだから、いっぱい食べて回復させなければいけない。当たり前のことをしているだけなのだが、何故に呆れたような顔で見られるのか。
 ナルは不思議に思いながらも、腹がぱんぱんになるまで、がっつりと美味しい料理を食べまくった。

 全部きれいに料理がなくなった皿を重ねて、ドゥルグンが部屋の外へと皿を持っていった。
 ナルは満腹の腹を擦りながら、ぽふんと寝床に寝転がった。満腹で眠い。食休みに少し寝ても許される筈である。
 くわぁっと大きな欠伸をすると、ナルは目を閉じて、すやぁっと寝落ちた。

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