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25:我が子がいる暮らし
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ナルはぺろぺろと顔を舐められる感覚で目覚めた。しぱしぱする目を開ければ、澄んだ青空みたいな色合いの瞳と目があった。
「おはよう。ナラントーヤ。今朝も早いねー。起こしてくれてありがとう」
「わふっ!」
「ん? 走りたいの? とと様起こして走りに行こうか!」
「わふっ!」
ナルはにひっと笑って、小さな銀色の毛並みの狼を抱き上げた。
雪が溶けて暖かくなり、息子のナラントーヤが無事に産まれてから暫く経つ。最近完全に乳離れしており、すくすくと元気に育ってくれている。
ナルはドゥルグンを起こすと、眠そうな顔をしているドゥルグンが服を着てから、ドゥルグンの手を握り、片手でナラントーヤを抱っこして、うきうきと外に出た。
ナラントーヤが乳離れしたし、そろそろ身体も回復しただろうということで、つい先日、やっとツェツェルから走る許可がもらえた。基礎鍛錬ができるようになったのも嬉しい。
久しぶりに走ったら予想以上に身体が鈍っていたので、朝早くに親子三人で走るようになった。
いきなり全速力に近い速さで走るのもよくないかと思い、ナラントーヤに合わせた速さで走っている。まだ生まれてから六十日ちょいしか経っていないのに、ナラントーヤは小さな身体で元気いっぱいに走る。獣人は成長が早いらしい。産まれてからすぐに歩いていたし、人間とはかなり違うようだ。
とはいえ、流石に広い集落をぐるっと一周はまだ無理なので、ナラントーヤが疲れたら、ドゥルグンが抱っこしている。
走ってスッキリしたら、水汲みをする。久しぶりだと地味にキツいが、衰えた体力筋力を取り戻したいので頑張る。
水汲みをしている間は、ナラントーヤはちょろちょろナルの周りを歩き回っている。
炊事場にツェツェルが来ると、ナラントーヤがダッと走ってツェツェルに抱っこされに行った。ツェツェルが笑顔で抱き上げてナラントーヤの顔を舐めると、ナラントーヤが嬉しそうに尻尾をふりふりした。
「おはようございます。かか様」
「おはよう。ナル。ナラントーヤも。二人とも今日も元気ね」
「はい! ナラントーヤは昨日より少し長く走りましたよ!」
「そう。子は元気なのが一番。ナラントーヤ。じじ様の所へ行っておいで。これから火を使うから危ない」
「わふ?」
「ふふっ。まだ分からないわね。ちょっとバトボルドに頼んでくるから、ナルはお湯を沸かして、先にナラントーヤ用の肉を湯がいていて」
「分かりました! よろしくお願いいたしますー」
ツェツェルがご機嫌なナラントーヤを抱っこして、足早に炊事場から出ていった。
ナラントーヤは完全に乳離れしており、今は味付けをしていない柔らかく煮た肉を解して食べさせている。大食らいなのはナルに似たようで、『そんなに食べて大丈夫……?』と少し心配になるくらい食欲旺盛だ。
ナルがナラントーヤの肉を湯がいていると、ツェツェルが戻ってきた。
朝餉を作りながら、ツェツェルが話しかけてきた。
「オヨーンが子を連れて遊びに来るのは今日だったわよね。……干した葡萄のお菓子でも作るかな……あっ。駄目だ。子達にはまだ食べさせられないから」
「干した葡萄のお菓子は食べてみたいですけど、私達だけで食べるのもなんだか可哀想ですしねー。もう少し大きくなって、子達が食べられるようになるまで楽しみにとっておきます!」
「ふふっ。そうして。昨日からずっとバトボルドがそわそわしている」
「あー。あね様の子とは初めて会いますもんねぇ。ガルツォグでしたよね? あね様の息子さんの名は」
「そう。ふふっ。楽しみで私もそわそわしてしまう。ナラントーヤと仲良くなったらいい」
「産まれたのも二日違いですから、一緒に遊べるといいですね」
「えぇ。あ、ナル。そこの棚の右から三つ目の小さな樽に入っている香草を少しだけ汁物に入れて」
「はい。……ふんふん。爽やかないい匂いがしますー。脂の多い肉と合いそう!」
「今朝の汁物は残ってた熊の干し肉だから。脂が多い熊や猪の肉には、それが一番合う」
「へぇー。覚えたいことがまだまだ山積みだなぁ。うん。少しずつ覚えていきます!」
「ふふっ。そうして」
朝餉が出来上がったので、囲炉裏がある部屋に運べば、ナラントーヤは胡座をかいたバトボルドの膝の上で、ご機嫌に撫で回されていた。とても嬉しいようで、尻尾をぶんぶん振りまくっている。
ナラントーヤは、特にバトボルドが大好きだ。たまに起きて部屋にナラントーヤがいない時は、いつもバトボルド達の部屋に突撃している。
朝餉を食べると、ナラントーヤはバトボルドの足の上で丸くなって寝てしまった。
「とと様。ナラントーヤを部屋に寝かせてきます」
「よい。どうせ毛皮を干し終える頃にオヨーン達が来る。ドゥルグン。オヨーンに持たせるように、猪でも狩ってこい」
「分かった。とと様」
「ナルも猪が好きだから、うちの分もな。二頭だ」
「ゲレルを連れて行ってもいいか?」
「構わん。ゲレルももう十二になった。狩りの仕方をみっちり教えてやれ」
「分かった。ゲレル。頑張るぞ。昼前には猪を二頭狩って戻る」
「うん! あに様! すっごく頑張る!」
やる気満々なドゥルグン達が出かけると、朝餉の後片付けをして、毛皮を庭に干し、手早く家の掃除をする。
そろそろ来るかなぁと思っていたら、銀色の毛並みの小さな狼を抱っこしたオヨーンがやって来た。
「ただいまー。とと様。かか様。ナル。あら? ドゥルグンとゲレルは?」
「お前達に食わせる猪を狩りに行っている。昼頃には戻るだろう」
「あらぁ! ありがとう。ほら。ガルツォグ。じじ様とばば様とナルおじ様よ。それからナラントーヤ。あなたと同じ頃に産まれた」
「まぁまぁ、可愛いこと」
「どれ。こっちにおいで。じじ様だ」
「わー。可愛いー。あっ! 遅くなりました! あね様、無事の出産おめでとうございます!」
「ありがとう。あなたもね。本当はお祝いの品を持ってきたかったんだけど、ガルツォグの世話でいっぱいいっぱいで、何も作る余裕がなかった。落ち着いたら作って渡す」
「ありがとうございます! 私もあね様とガルツォグに何か作りたかったんですけど、やー、振り回されてますねー。毎日」
「ねー。あ、ガルツォグがナラントーヤを気に入ったみたい」
「あ、追いかけっこ始めちゃいましたね」
「ふふっ。すごく可愛い。ガルツォグも元気でよかった。オヨーン。身体はどう?」
「もうすっかり元気。あちらのかか様が、産後はたんさん食べて回復させなきゃって、滋養のあるものをいっぱい食べさせてくれてる」
「そうか。それなら一安心だ。今度はテムーレンも連れてくるといい。子が産まれて少し落ち着いたし、祝いの席でも設けよう。構わんだろ。ツェツェル」
「えぇ。ご馳走をいっぱい作る」
「はい! 栗鼠の汁物が食べたいです!」
「私は猪の炙り焼きがいい!」
「ふふっ。どっちも作る」
「魚の汁物もいいわねぇ。あっ! 木の実の焼き菓子も食べたい!」
「私もどっちも好きですー。かか様のご飯が美味しくて、毎日幸せです!」
「俺のツェツェルは集落一の料理上手だからな」
「とと様。惚気?」
「単なる事実だ」
バトボルドは平然とした顔をしているが、ツェツェルは照れている。惚気っぽい。
白湯を飲みながらわいわいお喋りしていると、デカい猪を担いだドゥルグンと、それより少し小さめな猪を担いだゲレルが戻ってきた。
ぜー、はー、ぜー、はー、と荒い息を吐いて汗をだらだら流しているゲレルに冷めた白湯を渡せば、くっと一息で飲み干して、はぁーっと大きな溜め息を吐いた。
「重かった……」
「お疲れ様」
「あら! ゲレル。この猪、あなたが獲ったの?」
「うん! ちゃんと俺が獲った! ……ちょっとあに様に手伝ってもらったけど」
「上出来だ。ゲレル。今日の猪は捌かずにオヨーンの嫁ぎ先に運ぶ。鍛錬だと思って、また頑張って運べ」
「はい。とと様。あっ! それよりガルツォグはどこ!?」
「えー? さっきまで部屋の中を二人で爆走しまくってたけど……あ、部屋の隅っこで寝てますね」
「あらほんと。二人くっついてて可愛いわ」
「ナラントーヤはナルに似て既に自由人だが、ガルツォグもそうなのか?」
「ふふっ。幼子はあんなもの。食べたい時に食べて、走りたくなったら走って、寝たくなったら寝るもの」
「……そういえば、ゲレルがそんなかんじだったな」
「言われてみればそうね。目を離すとすぐにどこかに行っていた。一度なんて、医者のオジジの家まで走って行って、力尽きて寝ちゃってオジジが連れてきたことがある」
「あー。あったな、そういえばそんなことが」
「俺、自由人じゃないよ!?」
「幼子はそんなもの。オヨーンもドゥルグンも、まぁ色々やらかしてくれている」
「かか様。そこのところ、ちょっと詳しく。特にドゥルグン殿について」
「ナル。かか様から聞き出そうとするな」
「えー。だってー。ドゥルグン殿の小さい頃の話を聞いてみたいですよー」
「それより、そろそろ昼餉の支度を始めないと、ナラントーヤ達が起きたら絶対に腹が減ったと騒ぐぞ」
「それもそう。オヨーン。昼餉を食べて帰るだろう?」
「うん。久しぶりに一緒に作る」
「あね様も一緒だと嬉しいです。なんか楽しいー!」
「ふふっ。私も楽しい」
上機嫌なツェツェルとオヨーンと一緒に炊事場に行き、お喋りをしながら、手早く昼餉を作った。
出来上がった料理を囲炉裏がある部屋に運ぶと、部屋の隅で固まって寝ていたナラントーヤとガルツォグがバッと起き上がり、だだっと駆けてきた。
ナラントーヤはドゥルグンとナルの間に座り、ガルツォグはバトボルドの膝の上に座った。バトボルドが嬉しそうにでれでれ笑っている。
ナルは微笑ましいなぁと思いながら、賑やかな昼餉を楽しんだ。
「おはよう。ナラントーヤ。今朝も早いねー。起こしてくれてありがとう」
「わふっ!」
「ん? 走りたいの? とと様起こして走りに行こうか!」
「わふっ!」
ナルはにひっと笑って、小さな銀色の毛並みの狼を抱き上げた。
雪が溶けて暖かくなり、息子のナラントーヤが無事に産まれてから暫く経つ。最近完全に乳離れしており、すくすくと元気に育ってくれている。
ナルはドゥルグンを起こすと、眠そうな顔をしているドゥルグンが服を着てから、ドゥルグンの手を握り、片手でナラントーヤを抱っこして、うきうきと外に出た。
ナラントーヤが乳離れしたし、そろそろ身体も回復しただろうということで、つい先日、やっとツェツェルから走る許可がもらえた。基礎鍛錬ができるようになったのも嬉しい。
久しぶりに走ったら予想以上に身体が鈍っていたので、朝早くに親子三人で走るようになった。
いきなり全速力に近い速さで走るのもよくないかと思い、ナラントーヤに合わせた速さで走っている。まだ生まれてから六十日ちょいしか経っていないのに、ナラントーヤは小さな身体で元気いっぱいに走る。獣人は成長が早いらしい。産まれてからすぐに歩いていたし、人間とはかなり違うようだ。
とはいえ、流石に広い集落をぐるっと一周はまだ無理なので、ナラントーヤが疲れたら、ドゥルグンが抱っこしている。
走ってスッキリしたら、水汲みをする。久しぶりだと地味にキツいが、衰えた体力筋力を取り戻したいので頑張る。
水汲みをしている間は、ナラントーヤはちょろちょろナルの周りを歩き回っている。
炊事場にツェツェルが来ると、ナラントーヤがダッと走ってツェツェルに抱っこされに行った。ツェツェルが笑顔で抱き上げてナラントーヤの顔を舐めると、ナラントーヤが嬉しそうに尻尾をふりふりした。
「おはようございます。かか様」
「おはよう。ナル。ナラントーヤも。二人とも今日も元気ね」
「はい! ナラントーヤは昨日より少し長く走りましたよ!」
「そう。子は元気なのが一番。ナラントーヤ。じじ様の所へ行っておいで。これから火を使うから危ない」
「わふ?」
「ふふっ。まだ分からないわね。ちょっとバトボルドに頼んでくるから、ナルはお湯を沸かして、先にナラントーヤ用の肉を湯がいていて」
「分かりました! よろしくお願いいたしますー」
ツェツェルがご機嫌なナラントーヤを抱っこして、足早に炊事場から出ていった。
ナラントーヤは完全に乳離れしており、今は味付けをしていない柔らかく煮た肉を解して食べさせている。大食らいなのはナルに似たようで、『そんなに食べて大丈夫……?』と少し心配になるくらい食欲旺盛だ。
ナルがナラントーヤの肉を湯がいていると、ツェツェルが戻ってきた。
朝餉を作りながら、ツェツェルが話しかけてきた。
「オヨーンが子を連れて遊びに来るのは今日だったわよね。……干した葡萄のお菓子でも作るかな……あっ。駄目だ。子達にはまだ食べさせられないから」
「干した葡萄のお菓子は食べてみたいですけど、私達だけで食べるのもなんだか可哀想ですしねー。もう少し大きくなって、子達が食べられるようになるまで楽しみにとっておきます!」
「ふふっ。そうして。昨日からずっとバトボルドがそわそわしている」
「あー。あね様の子とは初めて会いますもんねぇ。ガルツォグでしたよね? あね様の息子さんの名は」
「そう。ふふっ。楽しみで私もそわそわしてしまう。ナラントーヤと仲良くなったらいい」
「産まれたのも二日違いですから、一緒に遊べるといいですね」
「えぇ。あ、ナル。そこの棚の右から三つ目の小さな樽に入っている香草を少しだけ汁物に入れて」
「はい。……ふんふん。爽やかないい匂いがしますー。脂の多い肉と合いそう!」
「今朝の汁物は残ってた熊の干し肉だから。脂が多い熊や猪の肉には、それが一番合う」
「へぇー。覚えたいことがまだまだ山積みだなぁ。うん。少しずつ覚えていきます!」
「ふふっ。そうして」
朝餉が出来上がったので、囲炉裏がある部屋に運べば、ナラントーヤは胡座をかいたバトボルドの膝の上で、ご機嫌に撫で回されていた。とても嬉しいようで、尻尾をぶんぶん振りまくっている。
ナラントーヤは、特にバトボルドが大好きだ。たまに起きて部屋にナラントーヤがいない時は、いつもバトボルド達の部屋に突撃している。
朝餉を食べると、ナラントーヤはバトボルドの足の上で丸くなって寝てしまった。
「とと様。ナラントーヤを部屋に寝かせてきます」
「よい。どうせ毛皮を干し終える頃にオヨーン達が来る。ドゥルグン。オヨーンに持たせるように、猪でも狩ってこい」
「分かった。とと様」
「ナルも猪が好きだから、うちの分もな。二頭だ」
「ゲレルを連れて行ってもいいか?」
「構わん。ゲレルももう十二になった。狩りの仕方をみっちり教えてやれ」
「分かった。ゲレル。頑張るぞ。昼前には猪を二頭狩って戻る」
「うん! あに様! すっごく頑張る!」
やる気満々なドゥルグン達が出かけると、朝餉の後片付けをして、毛皮を庭に干し、手早く家の掃除をする。
そろそろ来るかなぁと思っていたら、銀色の毛並みの小さな狼を抱っこしたオヨーンがやって来た。
「ただいまー。とと様。かか様。ナル。あら? ドゥルグンとゲレルは?」
「お前達に食わせる猪を狩りに行っている。昼頃には戻るだろう」
「あらぁ! ありがとう。ほら。ガルツォグ。じじ様とばば様とナルおじ様よ。それからナラントーヤ。あなたと同じ頃に産まれた」
「まぁまぁ、可愛いこと」
「どれ。こっちにおいで。じじ様だ」
「わー。可愛いー。あっ! 遅くなりました! あね様、無事の出産おめでとうございます!」
「ありがとう。あなたもね。本当はお祝いの品を持ってきたかったんだけど、ガルツォグの世話でいっぱいいっぱいで、何も作る余裕がなかった。落ち着いたら作って渡す」
「ありがとうございます! 私もあね様とガルツォグに何か作りたかったんですけど、やー、振り回されてますねー。毎日」
「ねー。あ、ガルツォグがナラントーヤを気に入ったみたい」
「あ、追いかけっこ始めちゃいましたね」
「ふふっ。すごく可愛い。ガルツォグも元気でよかった。オヨーン。身体はどう?」
「もうすっかり元気。あちらのかか様が、産後はたんさん食べて回復させなきゃって、滋養のあるものをいっぱい食べさせてくれてる」
「そうか。それなら一安心だ。今度はテムーレンも連れてくるといい。子が産まれて少し落ち着いたし、祝いの席でも設けよう。構わんだろ。ツェツェル」
「えぇ。ご馳走をいっぱい作る」
「はい! 栗鼠の汁物が食べたいです!」
「私は猪の炙り焼きがいい!」
「ふふっ。どっちも作る」
「魚の汁物もいいわねぇ。あっ! 木の実の焼き菓子も食べたい!」
「私もどっちも好きですー。かか様のご飯が美味しくて、毎日幸せです!」
「俺のツェツェルは集落一の料理上手だからな」
「とと様。惚気?」
「単なる事実だ」
バトボルドは平然とした顔をしているが、ツェツェルは照れている。惚気っぽい。
白湯を飲みながらわいわいお喋りしていると、デカい猪を担いだドゥルグンと、それより少し小さめな猪を担いだゲレルが戻ってきた。
ぜー、はー、ぜー、はー、と荒い息を吐いて汗をだらだら流しているゲレルに冷めた白湯を渡せば、くっと一息で飲み干して、はぁーっと大きな溜め息を吐いた。
「重かった……」
「お疲れ様」
「あら! ゲレル。この猪、あなたが獲ったの?」
「うん! ちゃんと俺が獲った! ……ちょっとあに様に手伝ってもらったけど」
「上出来だ。ゲレル。今日の猪は捌かずにオヨーンの嫁ぎ先に運ぶ。鍛錬だと思って、また頑張って運べ」
「はい。とと様。あっ! それよりガルツォグはどこ!?」
「えー? さっきまで部屋の中を二人で爆走しまくってたけど……あ、部屋の隅っこで寝てますね」
「あらほんと。二人くっついてて可愛いわ」
「ナラントーヤはナルに似て既に自由人だが、ガルツォグもそうなのか?」
「ふふっ。幼子はあんなもの。食べたい時に食べて、走りたくなったら走って、寝たくなったら寝るもの」
「……そういえば、ゲレルがそんなかんじだったな」
「言われてみればそうね。目を離すとすぐにどこかに行っていた。一度なんて、医者のオジジの家まで走って行って、力尽きて寝ちゃってオジジが連れてきたことがある」
「あー。あったな、そういえばそんなことが」
「俺、自由人じゃないよ!?」
「幼子はそんなもの。オヨーンもドゥルグンも、まぁ色々やらかしてくれている」
「かか様。そこのところ、ちょっと詳しく。特にドゥルグン殿について」
「ナル。かか様から聞き出そうとするな」
「えー。だってー。ドゥルグン殿の小さい頃の話を聞いてみたいですよー」
「それより、そろそろ昼餉の支度を始めないと、ナラントーヤ達が起きたら絶対に腹が減ったと騒ぐぞ」
「それもそう。オヨーン。昼餉を食べて帰るだろう?」
「うん。久しぶりに一緒に作る」
「あね様も一緒だと嬉しいです。なんか楽しいー!」
「ふふっ。私も楽しい」
上機嫌なツェツェルとオヨーンと一緒に炊事場に行き、お喋りをしながら、手早く昼餉を作った。
出来上がった料理を囲炉裏がある部屋に運ぶと、部屋の隅で固まって寝ていたナラントーヤとガルツォグがバッと起き上がり、だだっと駆けてきた。
ナラントーヤはドゥルグンとナルの間に座り、ガルツォグはバトボルドの膝の上に座った。バトボルドが嬉しそうにでれでれ笑っている。
ナルは微笑ましいなぁと思いながら、賑やかな昼餉を楽しんだ。
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