産卵おじさんと大食いおじさんのなんでもない日常

丸井まー(旧:まー)

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13:冬の思い出

リーンデルトは玄関先で出勤するカインを見送ると、何気なく空を見上げた。
今にも雨が降り出しそうな曇天である。カインは今日は傘を持って出かけた。
ふと、リーンデルトは昔の事を思い出した。

20年前。リーンデルトは魔導具技師として独立して間がなく、古くなっていた親戚の家を安くで買わせてもらい、改築して、敷地内に工房を作った。その為に親に借りた金を返すべく、毎日必死で仕事に励んでいた。

冬の曇天のある日の夕暮れ。
リーンデルトは実家の魔導具専門店に自分が作った魔導具を納品した帰り道に、道の隅っこで倒れている男を見つけた。
酔っ払いが寝転がる時間帯ではない。仮に酔っ払いでも、今は真冬だ。周囲に人気はなく、リーンデルトは少し慌てて男に駆け寄った。

男は警邏隊の制服を着ていて、顔が青白くて呼吸が浅く、体温がかなり低くなっていた。なんとなくピンときて、男の頬に触れて、魔力の流れを視てみれば、殆ど魔力が無いような状態だった。魔力欠乏症なのは明らかだ。
リーンデルトは子供の頃から魔力が多く、余剰な魔力を卵の形で毎朝排出している。リーンデルトの親戚に、魔力をつくる器官が少し弱い子がいて、魔力欠乏症になる度に、卵をあげていたので、魔力欠乏症は見たら分かる。リーンデルトが卵をあげていたその子は、大人になることができなかった。

此処からなら、診療所よりもリーンデルトの家の方が近い。
リーンデルトはガタイのいい男に肩を貸すようにして立ち上がり、ずるずると引き摺るようにして、自分の家に連れ帰った。
今朝産んだ卵はまだ庭に埋めていない。リーンデルトは家に着くなり、急いで卵を取りに行き、玄関の床に寝転がっている意識がない男の口をこじ開け、卵を男の口に突っ込んだ。今朝は八つも卵を産んでいる。卵を全て男の口に突っ込み終える頃には、男の顔色が少しマシになり、体温が少しだけ上がった。

リーンデルトは意識が戻らない男をなんとか引き摺るようにして居間に運び、台所からオリーブ油を取ってきて、男のズボンとパンツを脱がせた。男の合意は無いが、魔力を更に補給させようと思ったら、精液を男の体内に出して、魔力を注いだ方が早い。
リーンデルトは、ぐったりとしている意識のない男を抱いた。

3回中で精液を出すと、男が低く唸って目を開けた。男の顔色は完全によくなり、肌に触れて魔力の流れを視れば、問題なく魔力が体内に流れている。
ほっとして、リーンデルトは男に声をかけた。


「おい。気分はどうだ」

「……ここは……」

「俺ん家。お前、魔力欠乏症で道端に倒れてたぞ」

「……あぁ……」

「もしかして、魔力をつくる器官が弱い体質か?」

「あぁ。……助けてくれたのか。すまない」


男の深い蒼の瞳は、なんだか死が近い年老いた者のようだった。
リーンデルトは、大人になれなかった親戚の子を思い出した。酷い魔力欠乏症になり、リーンデルトの卵を食べさせても中々回復せず、そのまま衰弱して死んでしまった。


「お前、名前は?」

「……カイン」

「俺はリーンデルトだ。お前、生きたいか」


リーンデルトの問いに、男が皮肉げに口を歪めた。


「どうせ長くはもたない」

「俺は生きたいかと聞いている」

「…………分からない」

「なら、生きたくなるまで、俺がお前を生かす。俺が拾ったんだから、お前は俺のもんな」

「……は?」

「よし決まり!拾った責任はちゃんととる。俺が生きている限り、お前も生きる」

「……無茶苦茶だ」

「俺は魔力が多くてな。毎朝余剰な魔力を卵の形で排出する。それを毎朝食えばいい。そうすれば不足している魔力を補える」


カインが困惑したような顔をした。


「……何故、初対面の俺にそこまでする」

「……気まぐれってことで」


リーンデルトは小さく苦笑して、カインのアナルに入れっぱなしだったペニスを引き抜いた。カインが眉間に深い皺を寄せ、低く唸った。


「多分、初めてだっただろ。悪いな。同意もなく。まぁ、人命救助の為だから細かいことは気にすんな」

「……無茶苦茶な男だな」

「ははっ。風呂に入ろうぜ。動けるか?」

「……動く」


カインが辛そうな顔をしながら、のろのろと起き上がった。腰が引けているカインに肩を貸してやり、風呂場へと行って、一緒に風呂に入った。
男2人では狭い浴槽に向かい合って入り、密着して温かいお湯に浸かっていると、カインが物言いたげな顔をしていた。


「なに?」

「……なんで俺なんかを生かす」

「俺が生かしたいから」

「何故だ」

「気分」

「……理解できない」

「まぁ、細かいことは気にすんなよ」


しかめっ面をしているカインの腹から、低い音が鳴った。リーンデルトは思わず吹き出した。


「風呂から出たら飯を食おう。買い置きのパンしかねぇけど」

「……あぁ」

「カイン」

「……なんだ」

「これからよろしく」


リーンデルトはニッと笑った。カインはなんだか泣きそうに顔を歪めた。


それから、リーンデルトはカインと暮らし始めた。最初の頃は、警戒心が強い猫みたいなカインだったが、季節が夏を迎える頃には、リーンデルトの側にいるのが当たり前みたいな顔をするようになった。

あれから早いことに20年も経つ。
生きることを殆ど諦めていたような顔をしていたカインはもういない。

リーンデルトは仕事をしながら、カインの帰りを待った。きっと今夜も美味しい夕食を作ってくれて、一緒のベッドで眠る。リーンデルトが生きている限り、カインも生き続ける。しっかり長生きをせねば。
リーンデルトは、カインのしかめっ面を頭に思い浮かべて、小さく口角を上げた。

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