騎士団をクビになった落ちこぼれコミュ障騎士の再就職先は大衆食堂

丸井まー(旧:まー)

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25:『木漏れ日食堂』営業中!

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 アーリンは目覚めると、すぐ目の前にあるバーニーの唇にキスをした。去年から伸ばして整えている口髭が当たって少し擽ったい。
 アーリンは目を細めて、静かにベッドから下りて服を着た。

 庭で日課をすると、風呂場でシャワーを浴びてから髭を剃る。服を着てエプロンを着けてから台所へ向かえば、オードリーとベティが朝食を作り始めていた。


「おはよう。アーリン。今日のパンは胡桃入りがいいわー」

「おはよう。アーリン。今朝は鶏と南瓜のシチューよ」

「おはよう。……好物、だから、嬉しい」

「ふふーっ。バーニー程美味しくは作れないけどね!」

「……義姉ちゃんのも、美味しい」

「あらっ! ありがと!」


 アーリンは腕まくりをして、早速パンを作り始めた。
 朝食が完成する頃に、バーロ達が起きてきた。今年で5歳になるバルトや一つ下の弟のバートリーも一緒なので、朝から賑やかだ。
 バーニーが台所へやって来て、朝食を運ぶのを手伝ってくれた。

 とても賑やかな朝食を楽しむと、一日の始まりである。アーリンはバーニーと一緒に仕入れへ出かけた。

 バーニーと恋人になり、家族だけの結婚式をしてから、もう五年になる。幸いにも、皆元気でいてくれている。ブレンダは膝を悪くして杖なしじゃ歩けなくなってしまったが、毎日曽孫を連れて散歩に行っているし、家族の服を作ったりしてくれている。

 アーリンは木箱に山積みの野菜を荷車にのせながら、チラッとバーニーを見た。代替わりしたばかりの八百屋の若い店主と笑顔で喋っている。バーニーは本当に誰とでも仲良くなれるなぁと感心すると同時に、そんなバーニーが誇らしく思える。

 肉屋も最近代替わりしたばかりで、肉屋でも肉を荷車に積みながらお喋りをしていた。バーニーのちょっとハスキーな明るい声を聞くのがすごく楽しくて、すごく好きだ。

 仕入れが終わったら、昼の営業の仕込みをする。バーロもまだ働いているが、メインで作るのはバリーとバーニーになっている。注文取りは主にオードリーとベティがして、アーリンは配膳と皿洗い、客が帰った後のテーブル拭きをメインにしている。

 バーニーとお揃いの腕輪を着けてから、アーリンを本気で狙っていたらしい若い女性客は来なくなった。が、その代わり、『いい男が見たいわぁ』という中年の女性客が増えた。
 昼の営業は女性客も多いので、バーニー考案の女性用メニューを出し始めたら、これがすごく好評で、店はいつでも客が多い。

 客が少なくなったタイミングで、交代でまかないを食べ、昼の営業が終わると、半刻休憩してから、今度は夜の営業の仕込みを始める。
 野菜を洗って、皮を剥き、パンを仕込む。
 バリーの発案で『ちょい飲みセット』というメニューを出してみたら、これもすごく好評で、夜も客がとても多い。
 営業中はずっと動き回っているが、仕事にもすっかり慣れており、賑やかな空間を楽しんでいる。

 閉店時間になり、最後の客を見送ると、残っている皿洗いと店内の掃除、厨房の掃除をしてから家へと帰る。
 順番に風呂に入り、今日の売上計算をするバリーを、バーニーと一緒に手伝う。

 明日の打ち合わせを簡単にしたら、それぞれの部屋に引き上げる。
 アーリンはバーニーと一緒にバーニーの部屋へ行き、ベッドのヘッドボードに置いてある消音魔導具を起動させた。
 明日も仕事だから、セックスは一回だけだ。アーリンはバーニーと抱きしめ合いながら夢中でキスをして、お互いに脱がせ合い、絡み合って、熱と快感を分け合った。

 終わって中出しされたアナルに浄化剤を入れてもらった後。裸のまま布団の中でくっついていると、バーニーがにまーっと悪戯っぽく笑って、やんわりとアーリンの尻を撫で回した。


「バーニー?」

「アーリン。アーリン。明後日は休みだろ? 明日はいつものバーに行かない? 勿論泊まりで!」

「行く」

「即答してくれるアーリンが大好きだよ。明日はいっぱいイチャイチャしようねー。カクテルを楽しんだ後でね」

「……甘いものも」

「うん! 新作があるといいなぁ。明日も気合い入れて頑張ろうね。ご褒美のために!」

「あぁ。……バーニー」

「ん?」

「……そろそろ尻を撫でるのはやめてくれ」

「あはは。その気になっちゃう?」

「…………ん」

「アーリンはほんと可愛いなぁ」

「……当たってる」

「あはは。当ててる。明日まで我慢するけどね。どうせならいっぱいしたいし。おやすみ。アーリン。いい夢を」

「おやすみ。バーニー」


 アーリンはバーニーにやんわりと抱きしめられたまま、アーリンの体温や匂いに安心して、夢を見ないくらいぐっすりと眠った。

 翌日。いつもと同じように日課をして、朝食を作る手伝いをして、賑やかな朝食を済ませた後。
 バーニーと一緒に仕入れに行き、仕込みをしてから、店内の掃除をして、時間がきたら外に出て『開店中』の看板を出す。
 すぐに常連客の一人が訪れた。


「……いらっしゃい」

「よぉ。アーリン。今日のオススメは?」

「豚肉でチーズを巻いて揚げたやつ」

「おっ! いいねぇ。美味そうだ。それとパンとエールを頼むよ」

「……焼き林檎の卵クリーム添えもオススメ」

「たまにはデザートもいいな! じゃあ、それも追加で」

「ありがとう」


 アーリンはこの五年で、常連とは少しだけ話せるようになってきた。本当に少しだけだけど。ちゃんと『いらっしゃい』と言えるようになるまでに三年近くかかった。オードリー達のように元気いっぱいには言えないが、アーリンからしたらかなりの進歩だと思う。

 次々と客が入ってきた。オードリーとベティが動き回って注文を取り、出来上がった料理をアーリンが運んでいく。すぐに溜まる使用済みの皿を洗いつつ、料理を運び、空っぽの皿を下げ、また皿類を洗う。
 ものすごく慌ただしいが、楽しそうに美味しそうに食事をしている客達を見ると、とても気分がいい。

 最後の客を見送ると、『準備中』の看板を出した。手早く残っていた皿などを洗ってから、昼寝をしに家へと戻る。
 バーニーの部屋に行き、一緒に布団に潜り込む。慣れたバーニーの体温と匂いに、すぐに眠気が訪れる。バーニーの穏やかな寝息を聞きながら、アーリンもすぐに寝落ちた。

 昼寝から起きると、ブレンダが香草茶を淹れてくれていた。
 いくら練習しても、ブレンダが淹れてくれる香草茶の風味にはならない。ブレンダ曰く年季の差らしいが、最近は、実はブレンダの手には香草茶を美味しく淹れられる魔法でもかかってるのではないかと思っている。

 美味しい香草茶で一息つくと、夜の営業の仕込みを始める。野菜を洗い、皮を剥いて、パンを捏ねまくる。昼の営業よりも多く使うグラスを予め出しておいて、店内の掃除をする。
 テーブルや椅子もしっかり丁寧に拭いて並べたら、開店準備完了である。

 美味しそうな匂いがしている厨房からバリーに声をかけられたので、アーリンはドアの鍵を開け、『開店中』の看板を出した。
 すぐに常連客がやって来る。アーリンは今日のオススメの話をちょこっとだけしてから、注文を取って、酒を運び始めた。

 客が増えていくと、楽しそうな笑顔も増えていく。
 厨房の方を見れば、バリーもバーニーも忙しそうだが、どこか楽しそうだ。

 アーリンは微かに口角を上げて、酒が入ったグラスをいくつものせたお盆を両手に持ち、いくつものテーブルを回った。

『木漏れ日食堂』は本日も賑やかに営業中である。


(おしまい)
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感想 14

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みんなの感想(14件)

MARUBETSU
2025.10.15 MARUBETSU

あれ?すみません。この前と同じ感想文が投稿になってました。
完結しましたね。ハッピーエンド、よかったー!楽しい食堂のお話ありがとうございました。

2025.10.17 丸井まー(旧:まー)

感想をありがとうございますっ!!
本当に嬉しいです!!

お陰様で無事に完結を迎えることがでしました!
嬉しすぎるお言葉をくださり、本当に本当にありがとうございますーー!!(泣)
木漏れ日のような温かくて優しいお話が書きたいなぁと思い、バーニー一家の店の名前を「木漏れ日食堂」としました。
温かくて柔らかいお話になっていると嬉しいです! 
いつもとても楽しく執筆しております。
お楽しみいただけることが、本当になによりも嬉しいです!!

最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました!!

解除
にゃこ
2025.10.14 にゃこ

まーさんの長めのお話、いつもとっても癒されてます。
今回はちょっと短めだったけども、幸せな2人を毎日朝から読んで仕事への活力にしています。
次のお話も楽しみにしています( *´꒳`* )

2025.10.17 丸井まー(旧:まー)

感想をありがとうございますっ!!
本当に嬉しいです!!

嬉しすぎるお言葉をくださり、本当に本当にありがとうございますーー!!(泣)
嬉しすぎて舞い上がりそうです!!
いつも私なりの「楽しい!」と「萌えっ!」と性癖をたくさん詰め込んで楽しく執筆しております。
日々の活力にしていただけるなんて、この上なく嬉しいですー!!(泣)
もっと気の利いたことを書きたいのですが、嬉しすぎて語彙力が死んでおりますっ!(泣)

最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました!!

解除
niko
2025.10.14 niko
ネタバレ含む
2025.10.17 丸井まー(旧:まー)

感想をありがとうございますっ!!
本当に嬉しいです!!

お陰様で無事に完結を迎えることができました!
温かくも嬉しすぎるお言葉をくださり、本当に本当にありがとうございますーー!!(泣)
木漏れ日のような温かくて優しいお話が書きたいなぁと思い、「木漏れ日食堂」が誕生いたしました。
温かくて柔らかく優しいお話になっていると嬉しいです!
もっとこう……気の利いたことを書きたいのですが、嬉しすぎて語彙力が残念極まりないことになっております。(泣)

最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました!!

解除

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