騎士団をクビになった落ちこぼれコミュ障騎士の再就職先は大衆食堂

丸井まー(旧:まー)

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24:嬉しくて泣いてしまう

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 アーリンはいつもの時間に目覚めると、ぴったりくっついて寝ているバーニーの唇におずおずとキスをして、静かに身悶えた。
 バーニーと恋人になって、まだ四か月程だ。昨夜はバーニーの部屋でセックスをした。腰とアナルがじんわり痛いが、嬉しすぎて気にならない。

 アーリンは少しだけバーニーの穏やかな寝顔を眺めると、そーっとベッドから下りて服を着て、自室に寄って剣を持ってから庭に向かった。
 いつもの日課をやり終え、風呂でシャワーを浴びて丁寧に髭を剃り、いつもの私服に着替えてからエプロンを着けて台所へ向かう。
 台所では、ブレンダとオードリーが朝食を作り始めていた。


「あら! おはよう。アーリン。誕生日おめでとう!」

「おはよう。アーリン。誕生日おめでとう。楽しい一日にしようねぇ」

「あ、あ、お、おはよう。……その、あ、ありがとう」

「パンを頼んでいいかい? アーリンもパン作りが格段に上達してるからねー」

「あ、あぁ」


 オードリーに褒められて、気恥ずかしいが、すごく嬉しい。少しでも美味しいパンを食べてもらおうと、アーリンは気合を入れてパンを作り始めた。
 パンを焼き始めたタイミングで、バーニーが台所へ顔を出した。いつも店休日の日は一番起きるのが遅いのに珍しい。


「おっはよー。アーリン、起こしてよー。一番最初に『誕生日おめでとう!』って言いたかったのに。まぁいいや。気を取り直して、誕生日おめでとう! アーリン! はい。これ、プレゼント。着けてみてよ!」

「あ、ありがとう……エプロン……可愛い……」

「悩みに悩んでエプロンセットにしたよー。家で使う用。見て見てー。俺とお揃い!」

「あ、ありがとう」


 アーリンはバーニーとお揃いのエプロンが嬉しくて、唇をむにむにさせた。早速、バーニーが着けている猫の刺繍入りのものと同じエプロンを着けた。二人でブレンダ達の手伝いをして朝食を作り上げると、居間へと運んだ。

 賑やかな朝食が終わると、アーリンはバーニーと一緒にベティとバルトを迎えに、ベティの実家へと向かった。バーロとバリーは、結婚式のご馳走を作ってくれている。
 こんなに幸せでいいのかと頭をふわふわさせながら、アーリンはバーニーのお喋りを楽しく聞いた。

 ベティの実家に着くと、準備万端なベティに出迎えられた。少し大きくなったバルトを抱っこさせてもらえば、軽くて小さくて温かい。本当にすごく可愛らしい。
 アーリンが微かに口角を上げると、バーニーが嬉しそうに笑った。


「ねっ。義姉ちゃん。アーリンって笑うと可愛いっしょ?」

「そうねー。控えめな感じで男前度が増すわねー。んじゃ! 出かけましょうか! ご馳走楽しみー。貴方達も帰ったら着替えるんでしょ?」

「うん。その予定。アーリンがちょー格好いいから期待してて!」

「うふっ! たーのしみー」


 楽しそうに笑うベティにそっとバルトを受け渡すと、バーニーがバルトのお出かけ鞄を持って、家へと向かって歩き始めた。
 賑やかにお喋りしているバーニーとベティの声を聞いているだけで楽しい。
 アーリンはうきうきと家へと帰った。

 家に帰り着くと、二階のバーニーの部屋で着替える。ビシッとした黒い礼装に、ブレンダが作ってくれたクラバットを着ける。バーニーが整髪剤で髪を弄ってくれた。二人ともこの日のために前髪を伸ばしており、少し長い前髪をきっちり後ろに撫でつけてもらった。
 いつもは下ろしているサラサラの前髪を上げたバーニーは、いつもの三割増しで素敵だった。礼装が本当によく似合っていて、合計するといつもの五割増し素敵である。

 アーリンがうっとり見とれていると、バーニーが嬉しそうににっこぉと笑った。


「アーリン! めちゃくちゃ格好いい! いやー! 惚れ直すわー!」

「あ、あ、ありがとう……バーニーも……バーニーも、格好いい……」

「おっ。ありがと! んじゃ! 皆のところへ行きますかー」

「あ、あぁ」


 バーニーと手を繋いで階下の居間に向かえば、テーブルの上には美味しそうな匂いがするご馳走がたくさんで、バーロ達が嬉しそうに笑っていた。


「おー! 二人とも似合うじゃねぇか」

「よかったわねぇ。バーニー。素敵な相手が見つかって」

「おいおい。母ちゃん。泣くなよ。嫁に行くわけじゃあるまいし。俺達の家族が増えただけだぜ」

「それもそうねぇ」

「おめでとう。二人とも。はい。これはね、幸せのお守りだよ。オードリーと作ったのよ。枕の下に入れておくといいよ」

「ありがとう! ばあちゃん! お袋も!」

「あ、ありがとう。……ば、ばあちゃん。お、お袋……」

「あはは。まだ言い慣れないねぇ。そのうち慣れるかね」

「あ、あぁ。……多分」

「バーニー。アーリン。これ、俺達からの祝い。思いついたのはベティで、買ってきたのは俺」

「ありがとー! 兄貴! 義姉ちゃん! えー? なになにー? わぁ! アーリン! 包丁セット! 砥石付き!」

「お前もそろそろ料理人として一人前だし、自分専用の包丁セットを持っててもいいだろ。アーリンと二人で新作料理を考案しまくれよ」

「ありがとー! 兄貴!! めちゃくちゃ嬉しい!!」

「あ、ありがとう。……バーニーといっぱい料理考える」

「次はあたしねー。はい! お揃いのマグカップ! ちなみにあたしの手作りよ。幸せを運ぶ小鳥を描いてみました!」

「ありがとう! 姉ちゃん! 大事に使うわ!」

「あ、ありがとう。エイミーさん」

「あ、あたしのことは『姉ちゃん』でよろしく。アーリン」

「……ね、姉ちゃん……」

「ふふっ! まぁ、ぼちぼち慣れてちょうだいな!」

「よぉし。んじゃ、乾杯するぞー。赤ちゃんいるから、酒じゃなくて紅茶だけどな」

「えっ!? 紅茶買ったの!? 馬鹿高くない!?」

「せっかくのお祝いだもの。それに普通の結婚式するより安いわよ。紅茶淹れるのすっごい緊張するわー」

「大丈夫だよ。オードリー。練習した通りに淹れたら美味しくなる」

「えぇ。お義母さん。よしっ! 頑張れ! あたし!」


 オードリーが人数分の紅茶を淹れてくれた。紅茶を飲むのは随分と久しぶりだ。懐かしい香りがする。連鎖的に王都での辛かった暮らしが頭の中に蘇ってくるが、オードリーの『ちゃんと淹れられたわー!』と嬉しそうな満面の笑みを見たら、どうでもよくなった。

 ほんのり渋みがある紅茶で乾杯をしたら、結婚パーティーの始まりである。皆でわちゃわちゃと喋りながら食べるご馳走は一段と美味しい。
 アーリンは無言で黙々と食べながら、ぽんぽん交わされる家族の会話が楽しくて、目を細めた。

 夕方になると、バリーがベティとバルトを送っていった。玄関先で見送り、今度はエイミーと夫、甥っ子達を見送る。
 エイミーが突然アーリンに抱きついてきた。驚いていると、むぎゅーっと言ったエイミーが身体を離し、優しくアーリンの頭を撫でた。


「なにか困ったりしたことがあったらすぐに来なさいね。アンタはもううちの家族なんだから。アーリン。バーニーをよろしくね。二人でずーーっと一緒に笑っていてね」

「…………あ、ありがとう。……姉ちゃん」

「うん! じゃ! 今日は帰るわ! またね!」

「気をつけてなー。義兄ちゃんも今日はありがとー」

「二人のこれからの幸福を祈るよ。また時間をつくって会いに来るよ。子ども達も二人が大好きだから」


 エイミーの夫が穏やかに笑った。
 帰っていく一家を見送ると、家の中に入った。なんだかすっかり慣れている家の空気にほっとして、アーリンはずっと堪えていた涙を一つ零した。
 幸せでも涙が出てくることを初めて知った。
 バーニーが優しく抱きしめてくれて、アーリンの唇にキスをした。


「これからいっぱい、いーーっぱい幸せになろう。家族皆で」

「あぁ。バーニー」

「んー?」

「……愛してる」

「俺も! 全力で愛してる!」


 アーリンはバーニーと見つめ合って、ほんの微かに口角を上げた。

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