俺と僕とオイラの『家族ごっこ』

丸井まー(旧:まー)

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23:贈り物選び

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 アキッレが帰ってきた気配がしたので、ユキルはキッカと一緒にパタパタと玄関に向かった。
 アキッレをいつものように出迎えると、アキッレが無表情のまま口を開いた。


「家族の誕生日は祝うものらしい。お前達、誕生日はいつだ」

「え? 僕は春生まれですけど、正確な日にちは知らないです」

「オイラ、夏生まれ。日にちは知らねぇ」

「俺は秋生まれだ。拾われた日を誕生日ということにすれば日にちは分かるが、正確には分からん」

「えーと……どうしましょう? 3人とも誕生日が分からないですね?」

「……秋の豊穣祭が近いだろう」

「あ、はい」

「秋の豊穣祭を3人の誕生日祝いの日にするのはどうだ」

「いいんじゃねぇの? 誕生日を祝うってよく分かんねぇけど」

「誕生日の祝いって、何かするんですか?」

「ご馳走を食べ、贈り物を渡すらしい」

「「へぇー」」

「豊穣祭の日は1日屋台巡りをする予定だったが、予定変更だ。昼間は屋台巡りをして、晩飯はちょっといい店で食べる。誕生日の贈り物を用意しなくては」

「誕生日の贈り物……僕はパパとキッカの2人分ですよね。どうしよう……お金ないし……」

「オイラも金ない」

「予算を決めて、その中でそれぞれに渡す誕生日の贈り物を買うようにするか」

「あ、はい。そうしてもらえると助かります。えっと、欲しいものないですか?」

「……特に思いつかない」

「キッカは?」

「オイラも思いつかない」

「えぇー」

「そういうママは欲しいものはあるのか」

「……特に思いつかないです」


 3人同時に低く唸った。ご馳走は店で食べるからいいとして、誕生日の贈り物なるものがとても難しい。欲しいものはとっくにアキッレから与えられているし、アキッレとキッカに贈るものは何がいいのかが全然分からない。

 玄関で考え込んでいても仕方がないので、とりあえずアキッレを着替えに行かせて、ユキルはキッカと一緒に台所へ向かった。
 季節はすっかり秋が深まり、朝晩はそれなりに冷え込む。今日の夕食は南瓜のシチューがメインだ。

 温かい夕食を食べながら、アキッレが口を開いた。


「次の休みに、雑貨や装飾品を売っている店に行ってみるか。そこで贈り物を探すのはどうだ」

「あ、いいですね。欲しいものが見つかるかも」

「あれみてぇだ。絵本に載ってた宝探し!」

「次の休みは、誕生日の贈り物という名の宝探しをするぞ」

「あ、はい。ふふっ。なんだか楽しみー」

「オイラも!」


 誕生日の贈り物という名の宝探しだなんて、ワクワクする要素しかない。次のアキッレの休日は3日後だ。秋の豊穣祭は20日後である。
 今までの秋の豊穣祭は、祭りで酒を飲んで盛り上がった客が多く娼館に訪れて忙しいだけの日だったが、今年からはアキッレとキッカと一緒に楽しく過ごせる。3人で屋台巡りをするのも楽しいだろうし、ちょっといい店とやらに行ってご馳走を食べるのもすごく楽しみだ。

 ユキルはワクワクそわそわしながら、夕食を食べきった。




ーーーーーー
 アキッレの休日。
 朝の家事を3人で終わらせると、誕生日の贈り物を探しに雑貨屋なる店に向かって歩き始めた。
 金はもう貰っている。アキッレから、それぞれ財布ごと貰った。ユキルの財布は赤色で、キッカの財布は淡い緑色だった。

 キッカを真ん中に手を繋いで、ユキルはうきうきと雑貨屋へ入った。
 色んなものが置いてある雑貨屋を一通り見て回り、ユキル達はマグカップが置いてあるコーナーで足を止めた。黒色のマグカップに動物の絵が描いてあるものを指差して、キッカが口を開いた。


「オイラ、これがいい。お揃いがいい」

「ふむ。描かれている動物が違うな。では、俺がママのを選び、ママはキッカのを、キッカは俺のを選べ」

「パパは犬! なんか格好いい!」

「えーと……キッカは……あっ! 狐が可愛い! 狐にしようかな」

「ママのはこの白い猫にする」

「パパ。これ買っても金が半分ちょい残る」

「では、もう一つ贈り物を探そう」

「あ、じゃあ、『にゅうよくざい』とかいうのを見に行きたいです。何種類もあったし」

「なんだそれ」

「あぁ。入浴剤は今からの時期いいかもな。入浴剤とは、風呂の湯に入れるものだ。香りがよかったり、身体を温める効果がある」

「へぇー。じゃあ、『にゅーよくざい』見に行こうぜ」


 買う予定のマグカップをそれぞれ手に取り、今度は入浴剤が置いてあるコーナーに向かう。
 入浴剤は沢山種類があり、これもマグカップ同様に選ぶことになった。


「パパに似合いそうな『にゅーよくざい』……この木の香りのやつとか? パパって寄りかかっても安心な感じだし」

「キッカはどれだろう……あっ! オレンジの香りだって! キッカ、オレンジ好きだよね」

「好きー」

「ママに似合う香り……ジャスミンにするか」

「ジャスミン?」

「甘い爽やかな香りだ」

「「へぇー」」

「よし。贈り物は決まったな」

「これ、どうすんの?」

「贈り物用に包装してもらって、秋の豊穣祭の夜に渡し合う」

「ふぅん」

「ふふっ。ちゃんと贈り物を選べてよかったです。一緒に選ぶのも楽しいね」

「ん! 来年も一緒に選びたい!」

「構わん。その方が楽しい」


 ユキルはうきうきと店員がいるカウンターに向かい、色付きの包装紙で包装してもらった。キッカに贈る物の色は黄色にしてもらった。キッカは黒色の包装紙を選び、アキッレは白色の包装紙を選んでいた。

 包装されたものを大事に鞄に入れて、雑貨屋を出る。昼時を少し過ぎた時間になっていたので、昼食は店で食べることになった。
 アキッレの案内で入った店で美味しいステーキを食べ、市場で買い物をしてから家へと帰る。

 誕生日の贈り物は、とりあえずアキッレの私室に保管しておくことになった。初めて入ったアキッレの私室は、書き物机と本棚、寝室のものよりも小さめの衣装箪笥、剣などがあった。
 書き物机の上にそれぞれの贈り物を置き、うきうきしたまま階下に向かう。

 台所で大人には珈琲を淹れ、キッカは甘いミルクを作り、帰り道で買った焼き菓子をお供に、のんびり午後のお茶を楽しむ。


「次の休みは秋の豊穣祭で着ていく服を買いに行く」

「いつもの服じゃダメなんですか?」

「折角の記念日だ。晩飯はちょっといい店を予約しているし、それなりの格好をする必要がある。あぁ。個室を頼んであるから、食べる時はいつも通りで構わない。もっとも、2人ともテーブルマナーはちゃんとできているから問題ないが」

「個室なら気楽に美味しいものを食べられますねー」

「それなりの格好ってどんなの?」

「実際に買いに行けば分かる」

「ふぅん。早く秋の豊穣祭にならねぇかなぁ」

「ねー。楽しみでワクワクしちゃうなぁ」

「……あ」

「ん?」

「なんだよ。パパ」

「いや、秋の豊穣祭では花飾りを着けるらしい。それを忘れていた。売ってるものなのかも分からない」

「んー。生の花を適当に服につければよくないですか?」

「よく分かんねぇけど、それでいいんじゃね?」

「それもそうか。前日にでも花屋で花を買っておこう。何色の花がいい?」

「えー。オイラ、白がいい」

「僕は何色でもいいです」

「では、3人とも白い花にするか」

「話は変わりますけど、今日の晩飯は何にします?」

「オイラ、こないだマチルダ先生から習ったやつがいい。えっと、卵が入ってるやつ」

「どれ?」

「挽肉と炒めた玉ねぎを混ぜて、卵と野菜と一緒に型に突っ込んで魔導オーブンで焼いたやつ」

「あー。あれね。あれ、美味しかったもんねぇ」

「俺もそれがいい」

「じゃあ、今日の晩飯はそれで。あとは野菜スープと……薄切りのベーコンがあるから、人参に巻いて焼く?」

「オイラ、それ好き! それがいい!」

「巻くのはよろしくね。これを飲み終わったら、まずは洗濯物を取り込まなきゃ」

「3人でやればいいだろう。その方が早い」

「あ、はい」

「はぁい」


 ユキルはまったりと美味しい珈琲と焼き菓子を楽しむと、夕方の家事を3人で始めた。


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