草臥れオッサンの攻略方法

丸井まー(旧:まー)

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第一部

30:祝福を2人へ(キュリオ)

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フィオナのプロポーズが無事に成功し、プロポーズ成功の2週間後にキュリオの実家にフィオナのお婿さん(予定)が挨拶に来てくれることになった。
相手は貴族だからキュリオ達が挨拶に行くべきなのだろうが、『大事なご息女と結婚させていただきたいので、ご挨拶に伺いたい』という内容のとても丁寧な手紙が実家に届いたので、キュリオの実家に来てもらうことになった。家族全員の休みを合わせる必要があるので、家長的立場にあるヴィリオがお婿さん(予定)と手紙のやり取りをし、予定を合わせ、プロポーズ成功から2週間経った今日、お婿さん(予定)と初対面することになる。

キュリオは数日前からそわそわと落ち着かず、気合いを入れて新たに購入したスーツを着て、朝早くにアレックスと2人で実家に帰った。


「アレックス。やっぱりネクタイは違う色の方がよかったかなぁ」

「それ言うの何度目だ。それ、似合ってるから大丈夫だ」

「本当に?大丈夫?」

「問題ない」

「うん。アレックス」

「ん?」

「緊張し過ぎてヤバイから手ぇ握って」


キュリオがそう言うと、アレックスは呆れた顔をしたが、それでもキュリオの手を握ってくれた。俺の伴侶マジ優しい。
ヴィリオ達も各々新たに購入したスーツを着ており、特にヴィリオがそわそわしている。フィオナも可愛らしいワンピースを着て、気合いを入れて化粧をしていた。今日はキュリオの祖父達であるディリオとナイル、伯母のオフィーリアも来ている。久しぶりに皆が集まっており、賑やかだ。
キュリオと並んで座っているアレックスの隣に、そわそわと居間の中を歩き回っていたフィオナがぽすんと座り、アレックスの服の袖をつんつんと軽く引っ張った。


「お兄ちゃん、口紅の色キツくないですか?大丈夫ですか?」

「お前の口紅の色は割とどうでもいい」

「アイシャドウ濃すぎません?」

「さぁ?いいんじゃないか?別に」

「私可愛いですか?大丈夫ですか?」

「いつも通りだな」

「可愛いってことですね」

「お前の自信すげぇな」

「……お兄ちゃんはもっと私に関心を持つべきですよ」

「構ってちゃんかよ」

「とりあえず褒めてください。ぽっちゃりお兄ちゃん」

「カワイイカワイイ」

「棒読み!」


フィオナはアレックスに本当に懐いている。アレックスとフィオナがじゃれているところを見ていたら、キュリオは少しだけ落ち着いた。
玄関の呼び鈴が鳴り、居間に緊張が走った。ヴィリオ達3人が同じタイミングで座っていたソファーからすっと立ち上がり、玄関へと向かった。キュリオも立ち上がり、そわそわしているフィオナと冷静なアレックスと共に玄関に向かう。

初めて会うフィオナの想い人は、些か草臥れているような雰囲気の男前だった。高そうなスーツがよく似合っており、フィオナがパァッと顔を輝かせた。


「はじめまして。ヒューブ・ライオネルと申します」

「ご丁寧にありがとうございます。ヴィリオ・カシニアと申します。この度はご足労いただき、ありがとうございます。こちらは私の伴侶のアイザックとイーディア、息子のキュリオと伴侶のアレックスです」

「お越しくださり、ありがとうございます。アイザックと申します」

「イーディアと申します。よろしくお願いいたします」

「兄のキュリオと申します」


玄関で自己紹介をすると、全員で居間に移動した。居間で待っていたディリオ達とも自己紹介すると、全員がソファーや椅子に座った。
ヒューブが並んで座っているヴィリオ達に、突然頭を下げた。


「フィオナ嬢と結婚する許しをいただけないでしょうか」


ヴィリオが少し目を丸くした後、ふわっと笑った。


「やんちゃなところもある娘ですが、貴方のことが大好きなんです。末永くよろしくお願いいたします」


頭を上げたヒューブがほっとしたように顔を弛め、ヒューブの隣に座っているフィオナと顔を見合せ、嬉しそうに微笑んだ。

早速、結婚に関する細々とした話し合いが始まった。
お茶を飲みながらヒューブとヴィリオ達が話しているのを、キュリオは大人しく聞いていた。アレックスから詳しく聞いていたが、義弟となるヒューブはなんとも懐の大きそうな人物である。笑うと快活な印象を受ける。優しそうだし、結婚後も薬師として働きたいというフィオナに、『是非とも』と頷いていた。貴族なのに堅苦しい雰囲気はなく、気さくで冗談も分かるいい男である。フィオナは身分が平民だから、サンガレア公爵家の養女になった上で、ヒューブと結婚することになった。現サンガレア公爵であるヴィリオの祖父の兄とも話がついている。
サンガレアでの親族との顔合わせの日程と、ヒューブ側の親族との顔合わせの日程が決まっていく。結婚式は王都の大神殿で行う予定である。キュリオ達のひいひいばあ様であるマーサもサンガレアから一族郎党引き連れてやってくると言っていたそうだ。
フィオナはヒューブの隣で薔薇色に頬を染めて、本当に幸せそうに笑っていた。








ーーーーーー
色鮮やかな華々で溢れる春の日。
王都の大神殿にて、フィオナとヒューブの結婚式が行われた。白い花嫁衣裳に身を包んだフィオナは本当に美しくて、キュリオは控室でアレックスにしがみついて漢泣きした。可愛い妹がついにお嫁にいってしまう。同じ王都に住んでいるのだから会おうと思えば会えるのだが、貴族と平民では身分が違う。今までのような気安い関係ではいられなくなるだろう。寂しさが大きく、アレックスに頭を優しく撫でられながら、キュリオはすんすんと鼻を鳴らした。

フィオナは結婚が決まってから先週まで、毎週の休みの度にサンガレアへ帰り、マーサから貴族の知識とマナー、その他諸々を叩き込まれていた。かなりスパルタで厳しかったらしく、死んだ魚みたいな目で帰ってくることも多かった。一応食事のマナーなどはキュリオもフィオナも子供の頃に教えられたが、ドレスを着て社交界で生き抜く為の術は流石に教えられていない。貴族の子息ならば物心つく前から教えられる諸々を突貫で詰め込むことになったフィオナは、ヒューブへの愛だけでなんとか頑張って、ある程度は習得できたらしい。とはいえ、完璧とは言えないので、次の社交界シーズンまでの間は、結婚後も暫くはサンガレアに通うそうだ。

花嫁修業の疲れ等欠片も見せないフィオナは、ヒューブの隣で幸せそうに笑っている。控室でも、『これでやっと幸せへのスタートラインに立ったわ』と、嬉しそうに笑っていた。
漢泣きしている祖父達や親達と一緒に、キュリオは愛おしい家族の新たなスタートを見守った。





<第一部完>

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