愛の押し売りはやめたまえ

丸井まー(旧:まー)

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愛の押し売りはやめたまえ

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 棺桶の中で目覚めたアードルフはのろのろと起き上がり、擦り寄ってきた使い魔の猫をやんわりと撫で回した。
 寝床の棺桶から出て寝間着から着替え、地下室を出て台所へ向かったタイミングで玄関の呼び鈴が鳴った。
 確実に奴がまた来た。
 アードルフは舌打ちをすると、嫌々玄関に向かった。

 玄関のドアを開けると、そこには暑苦しい若いマッチョな男が立っていた。
 炎のような鮮やかな赤毛、キラキラと輝く榛色の瞳、顔立ちは凛々しく整っているが、アードルフの好みではない。
 暑苦しい若いマッチョがにこやかに笑った。


「こんばんはー! いい月が出てますよ。アードルフ様。今夜こそ俺の血を吸って眷属にしてください!」

「断る。帰れ」

「嫌です! アードルフ様のことを愛してるので!」

「私は愛していない」

「あ、アードルフ様が気に入ってらした『ハリンリッヒ』の苺のタルトがありますよ」

「……入れ」

「お邪魔します!」


 暑苦しい若いマッチョ・バルナバスが嬉しそうに笑って屋敷の中に入ってきた。
 屋敷の中に入れたのは、別にバルナバスに絆されているからではない。『ハリンリッヒ』というケーキ屋の苺のタルトが食べたいだけだ。『ハリンリッヒ』のケーキはどれも絶品なのだが、昼間にしか営業していない。吸血鬼の自分では買いに行けないので、もっぱらバルナバスが買ってきたものを楽しんでいる。

 バルナバス用に紅茶を淹れ、自分用には牛乳を用意した。
 人間の生き血なんてここ数十年飲んでいない。不摂生なのは分かっているが、どうにも面倒で牛乳ばかりを飲んでいる。それでも生きるのには問題ないので、まぁいいかと思っている。

 素晴らしく美味しい苺のタルトを堪能しながら、アードルフはちらっと向かい側に座るバルナバスを見た。
 バルナバスは二十五歳で、警邏隊で働いている。二日に一度必ずここにやって来ては、『愛してます! 血を飲んで眷属にしてください!!』と暑苦しく頼んでくる。

 愛の押し売りはいらない。アードルフは儚げなほっそりとした美青年が好みだ。目の前の生命力溢れまくっているマッチョは完全に範疇外である。
 アードルフが何度も何度も断っても、バルナバスはやって来る。
 いい加減、断るのも面倒になってきているが、バルナバスの血を飲んで眷属にするのは嫌だなぁと思っている。

 バルナバスとは、三年前に散歩中に出会った。
 深夜の散歩が日課で、その日もいつも通り、肩に使い魔の猫をのせてのんびり月明かりの下を歩いていた。
 アードルフの屋敷は街外れにあり、森が近くにある。
 暗い森の中をのんびり散策していると、血だらけで倒れている警邏隊の制服を着たバルナバスを発見した。

 久しぶりに嗅ぐ血の匂いにちょっと飢えを感じたが、アードルフは気にしないことにして最低限の止血をしてやり、蝙蝠に転じて警邏隊の詰め所まで飛んで、警邏隊の者にバルナバスのことを教えてやった。
 後から聞いたが、森に逃げ込んだ殺人犯を深追いしすぎて返り討ちにされたらしい。お前の暑苦しい筋肉は飾りかと言いたくなった覚えがある。

 数日後にわざわざ菓子折りを持ってお礼を言いに来たバルナバスが、『一目惚れです! 俺の血を吸って眷属にして、一生お側においてください!』と叫んだ。
 当然、断った。バルナバスはまるで好みじゃない。一目惚れと言われても嬉しくない。アードルフの容姿が好きなだけなのだろう。

 アードルフは自分で言うのもなんだが、とても美しい。
 サラサラの長い銀髪、紅玉のような赤い瞳、顔立ちは丹精込めて作られた人形のように美しく整っている。
 背はそんなに高くないし、不摂生な生活を続けているので貧相に痩せているが、それが逆に儚さを醸し出していて、美しさに拍車をかけている。

 アードルフは苺のタルトを食べ終えると、牛乳をちびちび飲み始めた。
 紅茶を一口飲んだバルナバスがほぅと満足そうな息を吐き、にっこぉと笑った。


「紅茶もすごく美味しいです!」

「よかったな。帰れ」

「嫌です! 散歩に行きましょうよ。月の下を歩くのは楽しいものだとアードルフ様に教えていただきました!」

「……散歩には行くが、君は帰って寝ろ。明日の昼間も仕事なのだろう」

「大丈夫です! 三徹くらいまでなら全然イケます!」

「いや寝ろよ」

「少しでもアードルフ様と過ごして、アードルフ様のことを知りたいんです!」

「暑苦しいマッチョは範疇外だ。君を好きになることはないし、眷属にする気もないよ」

「俺は諦めないです! あなたに助けていただいた時、『天使が助けてくれた!』と思ったので!」

「天使じゃなくて吸血鬼だったけどね」

「吸血鬼でも俺にとっては天使です! むしろ、吸血鬼でよかったです! 眷属にしてもらえれば一生お側にいられますから!」

「はぁー。なんかこの問答面倒になってきた。散歩に行きたいのならさっさと行くよ」

「はいっ!」


 アードルフは面倒くさくなって、ソファーから立ち上がり、使い魔を肩にのせてからバルナバスと一緒に家を出た。
 森の方へと歩きながら、うきうきしているバルナバスが話しかけてきた。


「アードルフ様。今日『ハリンリッヒ』に行ったら新作のチーズケーキもあったので、明日買ってきますね」

「チーズケーキは食べたいけど来なくていい。寝ろ。人間は睡眠をちゃんととらないと身体を壊す」

「ご心配ありがとうございます! ちょこちょこ仮眠をとってるので大丈夫です!」

「君をフリ続けてもう三年も経つのに、なんで君は諦めないんだ」

「アードルフ様のことが好きだからですね! もう言ってもいいかな? アードルフ様に助けていただいた時って、実は殺人犯じゃなくて職場の先輩に殺されかけてたんですよ」

「は?」

「お恥ずかしい話なんですけど、俺、当時は職場の先輩からいじめられてて。かなり陰湿なことを色々やられて、もう辞めちゃおっかなぁって思い始めた頃に、森での一件があったんですよねぇ。殺人犯のせいにされましたけど、実際に俺を殺そうとしたのはその先輩で。警邏隊としてはかなり大きな不祥事になるので揉み消されましたけどね。まぁでも、その先輩はど田舎に飛ばされたんで、まだ警邏隊を続けてるんですよ。だけど正直、未だに警邏隊に不信感を抱いているし、いつ辞めてもいいなぁと思ってるんです」

「お、お前ーー!! そういうことは早く言いなさい!! そこまでされて、なんでのほほんと笑っているんだ!」

「いやぁ、あの一件のお陰でアードルフ様と出会えたから、悪いことばかりじゃないなぁと思いまして」

「えぇ……」

「話を変えますけど、アードルフ様は何がお好きです? あ、散歩と『ハリンリッヒ』のケーキ以外で。俺は筋トレが好きです! 大胸筋もびっくんびっくん動かせますよ!」

「そんだけ胸筋が育ってりゃ、そりゃあ動かせるよね……暑苦しい。好きなもの……好きなもの?」


 アードルフは首を傾げた。改めて考えてみると、アードルフの好きなものってなんだろう。
 夜の散歩も『ハリンリッヒ』のケーキも好きだが、それ以外が特に思いつかない。
 んーっと意味のない声を出しながら考えていると、隣を歩くバルナバスが顔を覗き込んできて、にっこぉと笑った。


「好きなものが特にないなら、俺と一緒に探してみませんか?」

「別になくても問題ない」

「好きなものは多い方が楽しいですよ! あっ! 自分達でケーキを作ってみるのはどうでしょう! 一緒に挑戦してみましょうよ!!」

「え、嫌だ。台所が汚れそうだし」

「汚れたら俺が掃除しますよ! ね! ね! 一緒にケーキ作りしてみましょうよ!」

「えぇ……いやまぁ、ケーキを食べるのは確かに好きだけど……素人が作るケーキなんて本当に美味しいのかい?」

「それはやってみないと分かりませんね! 予定を変更して、ケーキの作り方が載ってる料理本と材料を買ってきます! 早速明日挑戦してみましょう!」

「はぁ……明日は寝ろ。やるなら明後日の夜」


 アードルフの言葉に、バルナバスが嬉しそうにパァッと顔を輝かせた。


「明後日の夜ですね! それまでに必要なものを準備しときます! あ、俺の血も吸いませんか!?」

「それはいらない」

「若くてピチピチのうちに血を吸って欲しいんですけど」

「君は好みじゃないから血は吸わないよ」

「アードルフ様に好きになってもらえるように、俺! すっごい頑張ります!!」

「頑張らなくていいから」

「明後日の夜は一緒に楽しみましょうね!」

「はいはい」


 散歩から屋敷に帰り着くと、アードルフはまだまだお喋りしたそうなバルナバスを殆ど無理矢理帰した。
 人間はちゃんと夜に寝ないといけないものだ。

 アードルフは気分転換にワインを飲みながら、書斎の書物机に向かった。
 アードルフは小説家でもある。気まぐれに小説を書いて、それを友人の吸血鬼に読ませたら『これは売れるぞ!』と言われ、友人の吸血鬼経由で出版社に小説が届けられ、本当に出版されてしまった。その上、かなり売れてしまった。
 屋敷の維持などで金がかかるので、金はあればあるほどいい。アードルフはせっせと小説を書き、金を稼いでいる。

 新作の書き下ろしを書きながら、ふと思った。バルナバスに警邏隊を辞めさせて、この屋敷の家政夫にしてしまえばよいのではないかと。
 前々から屋敷のことをしてくれる者が欲しかった。とはいえ、日中は外に出られないから、家政婦を雇うことが難しかった。
 バルナバスならば、不本意ながら知らない仲ではないし、悪くないのではないだろうか。

 アードルフはきれい好きなのでこまめに掃除をしているのだが、掃除の時間がなくなれば、もっとたくさんの時間を執筆に使える。
 わざわざ特別料金を払って深夜に配達してもらっている牛乳も、バルナバスがいれば昼間に受け取ってもらえる。
 バルナバスを眷属にする気は更々ないが、家政夫にするのはかなりありだ。
 アードルフは明後日の夜に提案してみようと決めると、集中して小説の続きを書き始めた。




ーーーーーー
 アードルフが目覚めて棺桶から出ると、玄関の呼び鈴が鳴った。
 寝間着のまま玄関に向かえば、今夜も暑苦しいバルナバスがニコニコ笑って立っていた。大きな背嚢を背負っている。
 バルナバスがにっこぉと笑って口を開いた。


「こんばんはー! ケーキ作りに必要なものを全部準備してきました!! そして好きです! 是非とも血を吸って眷属にしてください!!」

「眷属にはしない。まぁ、入れ」

「お邪魔します!」

「紅茶を淹れる。着替えてくるから飲みながら待っていろ」

「はいっ!」


 アードルフは手早く紅茶を淹れると、居間のソファーに座ったバルナバスの元へ運び、自室に向かって寝間着から着替えた。
 居間に戻れば、バルナバスが真剣な顔で本を読んでいた。多分、料理本なのだろう。
 アードルフに気づいたバルナバスが顔を上げ、パァッと顔を輝かせた。


「アードルフ様! まずは初心者向けのジャムケーキなんて如何でしょう!? 俺はもう作り方を頭に叩き込んであります!! 必要な道具は揃えてきましたし、ジャムも四種類買ってきてます!」

「そんなに大量に作るのか?」

「練習がてら作ってみましょうよ。ジャムが違えば風味とかも違ってくるでしょうから、食べ比べしても楽しそうです!」

「まぁ、一理あるが」

「それでは……はい! アードルフ様のエプロンです! アードルフ様の服が汚れるといけないので! あっ! ちなみに俺とお揃いですよ!!」

「……エプロンは着けるが、お揃いって……ないわー」

「可愛くないですか? この猫ちゃん。使い魔さんと同じ黒猫ですよ! このエプロンを着けたら俺も可愛くなります!! どやぁ!」

「エプロンは確かに可愛いが、君は可愛くない」

「えーー! んんっ。まぁいいです。では! 早速台所へまいりましょう!」

「ケーキを作るだけなのに暑苦しいな。君は」

「ケーキ屋で働いている友達が『ケーキ作りは体力筋力勝負だ』って言ってましたよ!」

「それは本職の人間の話だろう」

「まぁそうなんですが。体力筋力が必要な工程はお任せくださいね!!」

「あぁ。うん。よろしく?」


 アードルフは黒猫の刺繍が施されているエプロンを着けると、背嚢を持ったバルナバスと一緒に台所へ移動した。
 バルナバスが持ってきた料理本をしっかり読んでレシピを頭に入れると、早速ジャムケーキ作りを始める。

 ジャムケーキは初心者向けだからか、特に問題なくサクサクとできてしまった。
 今は魔導オーブンで焼きあがるのを待っている。
 ワクワクした様子で魔導オーブンの前にしゃがんでいるバルナバスがまるで幼子のようで、ちょっとだけ微笑ましい。

 アードルフは前々日の夜に思いついたことをバルナバスに提案してみることにした。


「なぁ。君、警邏隊を辞めて私の屋敷の家政夫になる気はないか?」

「なります!!」

「即答!? いや、少しは考えたまえよ」

「警邏隊はいつでも辞めていいと思ってるんで! なにより! アードルフ様の快適生活のお役に立てるだなんて最高じゃないですか!! 是非とも! 家政夫にしてください!!」

「あ、うん。えーと、じゃあ、そういうことで」

「はい! ありがとうございます!! 明日警邏隊を辞めて引っ越してきますね!!」

「そんなに早く辞められるものなのか」

「意地でも辞めてきます! 大丈夫です! 最悪、アードルフ様と出会った時の一件をバラしまくるぞって脅せば辞めさせてくれると思いますんで!」

「それはそれでどうなんだ。まぁいい。君の主な仕事は日中に牛乳の配達を受け取ることと買い物、掃除と洗濯だ。夜はしっかり寝るように」

「夜に寝ちゃったらアードルフ様とケーキ作りしたりお喋りができないじゃないですか!」

「人間は夜に眠るものだ。健康のために睡眠はしっかりととれ」

「二日に一回は夜に活動したいです! アードルフ様とお喋りしたいです! ていうか、俺の血を吸って眷属にしてもらいたいです!」

「眷属にはしない。……牛乳の配達は三日に一度だ。三日に一度の頻度なら、妥協して夜に活動してもいいようにしてやろう。それ以外の日はしっかり寝ろ」

「ありがとうございます!! あ、ケーキ焼けました。アードルフ様! 焼き立てほやほやを試食してみましょうよ!」

「ジャムケーキは二日寝かせた方が美味しいと料理本に書いてあっただろう」

「でも、すごく美味しそうな匂いですよ」

「それはそうだが……どうせなら一番美味しい瞬間に食べたい」

「うぅ……では、俺も今は我慢しますっ! めちゃくちゃ食べたいけど!! うわぁ。どれもきれいに焼けてますよ! ジャムケーキ大成功です!!」

「存外簡単だったな」

「ですね! あ、クッキーとか焼き菓子もお好きですか? この料理本、お菓子専門のものなんで、ケーキ以外にも色々載ってるんですよね」

「……まぁ、甘いものがあれば嬉しいが」

「次は日保ちするクッキーに挑戦してみましょうね!!」

「……しょうがないな」


 バルナバスが本当に嬉しそうに笑った。

 翌日の夜。アードルフが目覚めて牛乳を飲んでいると、玄関の呼び鈴が鳴った。
 大きな背嚢一つと大きな鞄一つだけを持ったバルナバスがにっこにこ笑顔で立っていた。


「警邏隊は無事に辞められました!」

「よかったな。もしかして、引っ越しの荷物はそれだけか?」

「はい!」

「そうか。君の部屋に案内する」

「アードルフ様と一緒の部屋がいいです! 是非とも俺の血を吸ってください!」

「君の血はこってりしてそうだから絶対に嫌。それに私は地下室の棺桶で寝てるから」

「そうなんですか? あっ! じゃあ、二人で寝られるサイズの棺桶を特注しますか!?」

「しない。君は普通にベッドで寝たまえ」

「はぁい。二人で寝られるサイズの棺桶はおいおいということで」

「作らないからな?」

「おいおいということで!」


 アードルフは溜め息一つでバルナバスの言葉を流すと、客室のドアを開け、中にバルナバスを入れた。
 昨夜のうちに掃除をしておいたし、シーツ類もちゃんと洗ってある。布団を日に干せていないが、その代わり魔法でしっかり乾燥させてある。多分問題ないだろう。

 部屋の中をキョロキョロと見回していたバルナバスが、鞄の中からエプロンを取り出してきた。
 妙に可愛らしいエプロンを着けたバルナバスがにっこぉと笑い、嬉しそうに口を開いた。


「今日からよろしくお願いいたします! あ、俺の血を吸いませんか!? 目覚めの一杯にどうぞ!!」

「飲まないから。牛乳飲むし。それより、屋敷の中を案内するよ。地下室と書斎以外はどこをどうしても構わないよ」

「はいっ! アードルフ様は甘いものと牛乳以外は何を召し上がるんですか?」

「大昔に一時期人間の食べ物にハマってた頃があるけど、ここ数十年は牛乳だけだね」

「じゃ、じゃあ! 夜に活動していい日は一緒にご飯を食いませんか!? 俺! 頑張って料理を練習します!!」

「え? 別にそこまで頑張らなくてもいいよ。疲れるじゃない」

「アードルフ様のためならばなんでもする所存です! それに……その、好きな方と一緒にご飯が食べたくて……」


 バルナバスが日焼けした頬をじんわりと赤らめ、もじもじしながら、はにかんで笑った。
 アードルフはきょとんとバルナバスを見た。
 いつでも暑苦しいバルナバスなのに、意外と可愛い面があった。いや、バルナバスが健気? なのは今に始まったことではないのだが、なんだかちょっとだけ新鮮に思えた。


「……じゃあ、好きにしろ。あ、ニンニクは絶対に使うなよ」

「はい! 生姜で代用します!」

「今夜はもう寝ろ。明日はジャムケーキを食べる予定だから、明日は夜の活動日ということにする」

「はい! おやすみなさい! あっ! ちょっと俺の血の味見をしませんか!?」

「しない。大人しく寝ろ」

「はぁい。おやすみなさいませ」


 アードルフは客室から出ると、書斎へ向かった。
 書物机で小説の続きを書きながら、アードルフはどこか自分がそわそわしていることに気づいた。
 無駄に元気が有り余っている暑苦しいマッチョ・バルナバスが屋敷の中で寝ているから、なんとなく落ち着かないのだろう。
 そのうち慣れると頭を切り替えて、集中して小説を書く。バルナバスを雇った以上、バルナバスに不自由な思いをさせたくない。そのためには金をもっと稼がねば。
 アードルフはバルナバスのために金を稼ぐという自分の発想になんの疑問も抱かなかった。




ーーーーーー
 アードルフが棺桶の中で目覚め、用意していた服に着替えて地下室を出ると、今日も暑苦しいマッチョなバルナバスが嬉しそうに目を爛々と輝かせて待ち構えていた。
 今夜はバルナバスの夜の活動日だ。夜の活動日には、いつも散歩をして、一緒にお菓子作りをしている。

 バルナバスを家政夫として雇って早半年。屋敷の中は常にきれいだし、庭もちゃんと手入れをしてくれている。
 料理もどんどん上達しており、別に人間のような食事をする必要はないのに、夜の活動日にはバルナバスと一緒に食事をするようになった。

 散歩前に牛乳を飲んでから、使い魔の猫を肩にのせてバルナバスと一緒に家を出た。
 暗い森の中をのんびりと歩きながら、バルナバスが話しかけてきた。


「今日は何を作りますか? 材料は色々揃えてあります!」

「んー。卵のタルトが食べたい」

「いいですね! 俺も大好きです! あ、一番大好きなのはアードルフ様です!」

「はいはい。飽きないな。君も」

「めちゃくちゃ愛してますんで!!」

「あ、そう」

「アードルフ様。卵のタルト以外で食べたいものはありますか?」

「……ちょっと前に食べた……鶏肉にチーズを挟んで揚げたやつ? あれはすごく美味しい」

「めちゃくちゃ気合を入れて作りますね!!」

「普通に作ってくれればいいよ」

「野菜スープと胡桃パンも作ります!」

「胡桃は多めがいい」

「はい! ごろごろ入れますね!」


 バルナバスが楽しそうに笑った。
 家に帰り着くと、まずはお揃いのエプロンを着けて卵のタルトを作り始める。
 タルト生地を仕込んでから休ませている間に、バルナバスがご機嫌に鼻歌を歌いながら料理を作り始めた。
 台所に置いてある椅子に座り、楽しそうなバルナバスの逞しい背中をなんとなく眺める。

 ふわふわと美味しそうな匂いがする。料理の匂いと若い男の血の匂い。
 バルナバスはまるで好みではないが、バルナバスが家政夫として一緒に暮らし始めてから、ちょっとだけ毎日が楽しくなった。
 夜の活動日じゃない日も、バルナバスは甘いものを作ってくれている。バルナバス手製の菓子類を食べながら執筆に勤しむ日々を送っている。
 バルナバスはいつだって明るい笑顔で、なんでも楽しそうにやる。
 ここ最近は、バルナバスの笑顔を見ると、胸の奥がむずっとする。
 一度だけ思い切り嗅いだバルナバスの血の匂いを思い出して、こっそりシコったことさえある。

 アードルフはバルナバスの背中を見つめながら、そろそろ腹を括るべきなのだろうかと思った。
 バルナバスと同じ熱量でバルナバスのことを好きかと聞かれたら『否』と答えるしかない。
 しかし、屋敷という自分の領域の中に入れて一緒に暮らし、バルナバスの血の匂いを直に嗅いで血を啜って味わいたいと思う程度には好ましく思うようになった。
 眷属にしなければ、バルナバスは年老いていつかは死んでしまう。それはなんだかすごく嫌だ。

 アードルフは眉間に深い皺を寄せて考え、『できましたぁ!』と振り返ったバルナバスのパァッと明るい笑顔を見た瞬間、バルナバスを眷属にしようと決めた。
 いつでも直球で真っ直ぐなバルナバスに完全に絆されてしまった。
 アードルフは居間に料理を運び始めたバルナバスを手伝いながら、早速今夜、バルナバスを眷属にしようと思った。

 温かくて美味しい料理を食べ、焼きたての卵タルトを楽しんだ後。
 アードルフは、美味しそうに紅茶を飲んでいるバルナバスに声をかけた。


「バルナバス」

「なんです?」

「君を眷属にしようと思う」


 バルナバスがぽかんと間抜けに口を開けた。数拍後、バルナバスの瞳が潤み、ポロポロと涙を零し始めた。


「な、なんだ!? 泣くほど嫌なのか!?」

「違います! これは嬉し泣きです!!」

「『嬉し泣き』? 人間は嬉しくても泣くのか?」

「はいっ! アードルフ様!」

「な、なんだ」

「愛してます! 心の奥底から!!」

「……知ってる」


 嬉しくて泣いているバルナバスの涙は、どこか美しかった。
 アードルフはバルナバスが落ち着くまで、じっとポロポロ涙を零すバルナバスを眺めていた。

 バルナバスが落ち着き、後片付けを終えた後。早速バルナバスを眷属にするということで、バルナバスの部屋に来ている。
 お互いに全裸になって、ベッドの上で向き合って座っている。
 吸血して眷属にすると、眷属は一時的に発情状態になる。どうせセックスになるのだから、はじめから服は脱いだ。
 アードルフは念の為問いかけた。


「本当に私の眷属になっていいんだな。今ならまだ間に合う。君を手放してやれる」

「アードルフ様の眷属になりたいです! あなたの側で、あなたと共に生きていきたいので!」

「……そうか。じゃあ、眷属にする」

「はい!!」


 アードルフはずりずりと移動してバルナバスの逞しい肩を掴み、太い首を舐めた。
 首の太い血管を狙って鋭い歯で噛みつくと、濃厚な血が溢れ出てくる。じゅるじゅるとバルナバスの血を啜り、頬肉を強く噛み口移しでバルナバスに自分の血を飲ませて、バルナバスを眷属へと変えた。

 顔を離してバルナバスを見れば、榛色だった瞳が真っ赤になっていた。無事に眷属になった証である。キラキラと輝く榛色の瞳も嫌いじゃなかったので少し残念な気がするが、これでアードルフが死なない限り、バルナバスは年老いることなく生き続けられる。

 早くも発情したのか、バルナバスがはぁ、はぁ、と浅く速い息を吐き始めた。
 アードルフは舌なめずりをしてから、バルナバスの唇に吸いつき、微かに開いている唇の隙間から舌を口内に潜り込ませた。
 バルナバスの唾液を味わうようにねっとりと口内を舐め回してから、首筋を舐めつつ、むっきり盛り上がった逞しい胸筋をふにふに揉んでみる。硬いのかと思えば、予想外に柔らかい。弾力性のある柔らかさで、ちょっと癖になりそうな感触である。

 胸筋を揉みながら、逞しい胸筋の下の方にあるちょこんと小さな薄茶色の乳首に舌を這わせる。つーっと乳輪を舌先でなぞって、ちろちろと乳頭を擽り、ピンと勃った乳首をころころと転がすように舐め回す。
 ちゅっちゅくちゅくちゅく緩急をつけて乳首を吸うと、バルナバスが溜め息のような喘ぎ声をもらした。

 気が済むまで両方の乳首を弄りまくると、乳首を両手の指先でくにくに弄りながらバキバキに割れている腹筋を舐め始めた。
 臍の穴も舐め、くっきり浮き出た腰骨にやんわりと齧りつき、柔らかい下腹部に強く吸いついて小さな赤い痕を残す。
 バルナバスは、服から露出している部分はよく日に焼けて褐色に近い色合いの肌をしているが、服に隠れている部分は意外なほど肌が白かった。
 褐色に近い肌と白い肌の境目がなんだか妙に色っぽく感じる。
 眷属にしたので、もうバルナバスも日の下に出ることはない。そのうち、日焼けしている部分も白くなるのだろう。日焼け肌は今のうちに堪能しておくことにする。

 アードルフは無垢な色合いのバルナバスのペニスの竿にキスをした。
 バルナバスのペニスは太くて長く、竿にはうっすら血管が浮いている。仮性包茎のようで、赤い亀頭の下の方に皮が溜まっている。
 指で優しく皮を完全に剥いてやると、亀頭と皮の境目に、僅かに白い恥垢があった。
 恥垢を優しく舐め取ってきれいにしてやっていると、バルナバスが裏返った声を上げて、ビクビクンッと身体を震わせた。瞬間、熱い精液がバルナバスの亀頭の尿道口から飛び出した。

 アードルフはすかさず口でバルナバスの精液を受け止めた。
 精液を吐き出している尿道口をちゅーっと吸ってやれば、バルナバスが気持ちよさそうな声を上げて腰をくねらせた。
 鼻に抜ける濃い精液の匂いが堪らない。喉に絡みつくような飲みにくい精液の味も最高だ。
 もっとバルナバスの精液を味わいたいが、アードルフも数十年ぶりに興奮しており、少しでも早くバルナバスと繋がりたい。
 荒い息を吐いているバルナバスに声をかけ、四つん這いになってもらった。

 むっきりむっちりとした白い尻を撫でてから、むちむち肉厚の尻肉を両手で掴み、ぐにぃっと広げる。慎ましく閉じている赤いアナルが丸見えになった。
 バルナバスの呼吸に合わせて、ほんの微かに皺が細かくなったり広がったりしている。無垢な様子がとても可愛らしい。

 舌を伸ばしてバルナバスのアナルをつんと突くと、ビクッとバルナバスの身体が震えた。
 ちょこちょこと舌先でアナルの表面を擽ってやれば、バルナバスが腰をくねらせて低く喘いだ。
 熱いアナルの表面をべろーっと舐めてから、皺を伸ばすように丁寧に丁寧にアナルを舐めていく。慎ましく閉じていたアナルが少しだけ綻んでくると、舌先を突っ込んでアナルを拡げるように上下左右に動かした。

 アナルの中も外も思う存分舐め回すと、掌にぬるぬるの液体を生成して、アナルの表面にぬるぬるの液体を馴染ませるようにくちくちと指の腹で撫で回す。
 ゆっくりと中指を押し込んで、まずは前立腺を探して腸壁を優しく擦っていく。

 ぷくっとした小さな痼に指の腹が触れた瞬間、バルナバスの身体がビクッと震えた。


「あぁっ!?」

「見つけた」

「あぁっ! そこっ、やだっ! ひぃっ! あぅっ! うぅーーっ!」

「気持ちいいだろう?」

「き、もちいいっ、からっ、やだぁ! へんっ! へんになるっ!」

「ははっ! 思う存分乱れたまえよ」

「あぁぁぁぁっ! だめだめだめだめっ!」

「ふふっ。何が駄目なんだい?」

「いっ、いっちゃうっ! からっ! だめっ!」

「ははっ! イッてごらん。ほら。指を増やしてやろう」

「あ、あ、あ、あーーーーっ!!」


 ずるぅっと中指を引き抜き、二本の指を挿れて前立腺を挟むようにくにくにしてやると、バルナバスの全身がビクンビクンッと震えた。
 ふわっと精液の匂いが鼻を擽る。どうやらアナルの刺激だけで本当にイッたようだ。
 アナルの才能があってなによりである。実に楽しく、可愛らしい。

 アードルフは我慢ができなくなって、上体をくったり伏せて尻だけを高く上げているバルナバスの尻肉を両手で掴んで大きく広げ、露わになった濡れた赤いアナルに勃起したペニスの先っぽを押しつけた。
 ゆっくりと狭いアナルを抉じ開けるようにしてアナルの中へとペニスを押し込んでいく。
 キツい括約筋の締めつけも熱く柔らかいぬるついた腸壁の感触も堪らなく気持ちがいい。

 バルナバスのアナルを見れば、皺を伸ばしきり、従順にアードルフのペニスを飲み込んでいる。ゆっくりと腰を引けば、アナルの縁が僅かに赤く捲れ、腰を押し込めば従順に飲み込んでいく。
 わざとカリで前立腺を引っ掻くように腰を揺すれば、バルナバスが泣き濡れた声を上げた。

 バルナバスの中が堪らなく気持ちいい。アードルフはバルナバスのしっかりした腰を掴むと、長いストロークで激しく腰を振り始めた。
 パァンッと下腹部を強く尻に打ちつけると、ぶるんっと尻肉が揺れる。ペニスの先っぽが肉の壁にぶつかり、きゅっと更にキツく括約筋で竿が締めつけられる。

 パァンッ、パァンッと音を響かせながら強く激しく腰を振りつつ、アードルフは楽しくてバルナバスに問いかけた。


「気持ちいいか? バルナバス」

「ひぃっ! い、たいっ、けどっ、きもちいいっ!」

「ははっ! 奥をもっと突いてやろう。ほれ。ほれ」

「うぁっ!? あぁっ! ひんっ! んぁっ! きっ、きもちいいっ! きもちいいっ!」

「何がだ?」

「あ、あーどるふさまのっ! ちんちんっ!」

「ふふっ。可愛いなぁ。バルナバス。もっとたくさんくれてやろう」

「あぁっ!? あっあっあっあっあっ! はげしっ……! も、も、いくぅっ!!」

「はははっ! 何度でも好きなだけイキ狂え」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 パンパンパンパンッと小刻みに強く激しく下腹部を尻に打ちつけ、腹の奥の肉の壁をペニスの先っぽで突きまくれば、筋肉質な背がしなり、バルナバスが吠えるような声を上げた。
 腹の奥の肉の壁をペニスの先っぽでぐりぐりしてやると、ぎゅぎゅーっとペニスをキツく締めつけられる。
 どうやら上手にイケたようだ。

 アードルフはバルナバスを褒めてやろうと、ゆっくりとペニスをアナルから引き抜いた。
 赤く染まった尻を撫でてから、仰向けにさせ、膝を立てて足を大きく広げさせる。
 正常位でまたペニスをアナルの中に押し込んでから、アードルフはバルナバスの鼻水が垂れている唇にキスをして、涙で濡れている瞳を見つめて囁いた。


「いい子だ。バルナバス。私のもので上手にイケたな」


 バルナバスがふにゃっと嬉しそうに笑った。
 アードルフはバルナバスの涙を舐めとると、今度は自分もイクべく腰を振り始めた。
 バルナバスの膝に手を置いて激しく腰を振ると、バルナバスの逞しく盛り上がった胸筋がゆさゆさと揺れる。
 これはこれでありだなと思いながら、腹側の前立腺を擦るよう意識しつつ腰を振り、勃起しているバルナバスのペニスの亀頭に掌を押しつけた。

 熱く濡れた亀頭をぐりゅんぐりゅんと強く擦ってやると、バルナバスが悲鳴じみた声を上げ、ぎゅぎゅーっとキツくペニスを締めつけてきた。
 アードルフは堪らない快感に笑みを浮かべながら、めちゃくちゃに激しく腰を振り、バルナバスの亀頭を強く刺激しまくった。


「ひぃぃぃぃっ! も、むりむりむりむりぃ! あ、あ、あーーーーっ!!」


 ぐりゅんっと一際強く亀頭を擦り、同時にずんっと腹の奥の肉の壁を突き上げると、ぷしゃぁぁぁぁぁぁっと勢いよくバルナバスのペニスの尿道口から透明な液体が吹き出た。
 潮を吹きながらビクンビクンと身体を震わせるバルナバスがあまりにも可愛くて、アードルフは溜め息を吐きながら腹の奥の肉の壁に精液を擦り込むようにして射精した。

 繋がったままバルナバスの唇に触れるだけのキスをすると、バルナバスがふにゃっと嬉しそうに笑ってから、すとんと寝落ちた。
 眷属にしたばかりだった上に、処女に潮吹きさせたのはちょっとやり過ぎだっただろうか。
 可愛かったからまぁいいかと思い、アードルフはゆっくりと萎えたペニスをアナルから引き抜いた。

 本音を言えばあと三発くらいはしたいのだが、それはバルナバスがセックスに慣れてからにしよう。
 バルナバスの隣に寝転がると、すぐに眠気が訪れる。暫く不摂生な牛乳生活をしていたからか、体力が落ちているのかもしれない。バルナバスの濃厚な血が若干胃にもたれている。

 アードルフは胃のあたりを擦りながら、バルナバスのためにもちゃんとした生活をしようと決めた。
 バルナバスを眷属にした責任はきちんと取るつもりだ。一生側から離さない。

 アードルフはぐっすり寝ているバルナバスの横顔を眺めて、ふふっと笑った。
 愛を押し売りしてきたのはバルナバスだ。いっそ後悔するほど重く愛してやろうではないか。
 アードルフにとって、眷属はバルナバス一人でいい。バルナバスだけを愛して、バルナバスの血だけを飲む。
 ぴったりとバルナバスの逞しい身体にくっつくと、アードルフは静かに目を閉じた。

 それから何百年もアードルフとバルナバスは一緒にいる。
 二人で甘味作りを極め、吸血鬼向けの甘味屋を始めた。
 名前を変えながらずっと書き続けている小説もそれなりに人気のままで、アードルフは穏やかだけど、地味に忙しい日々を送っている。

 小説を一本書き終えて書斎から出ると、ふわふわと甘い匂いが漂っていた。
 台所を覗けば、未だに身体を鍛え続けている暑苦しいマッチョなバルナバスが魔導オーブンから鉄板にのったクッキーを取り出していた。
 アードルフに気づいたバルナバスが、パァッと嬉しそうに顔を輝かせた。


「アードルフ様! 焼きたてクッキーは如何ですか!? 自信作なんです!」

「一緒に食べよう」

「はいっ!」


 アードルフはなんだか胸の奥がぽかぽかして、穏やかに笑いながら、バルナバスが好きな紅茶を丁寧に淹れ始めた。


(おしまい)

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