薬屋さんと元騎士さんのささやかな幸せ

丸井まー(旧:まー)

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薬屋さんと元騎士さんのささやかな幸せ

 ブロディは、カウンターに頬杖をついて、ぼーっとしていた。営んでいる薬屋は、今日も閑古鳥が鳴いている。ブロディは薬師だ。主に、自分が作った薬を売っている。店の場所が、花街の奥の分かりにくい所なので、基本的に、常連くらいしか客は来ない。

 ブロディは、今年で六十二歳になる。そろそろ、店を誰かに任せて、悠々自適な老後生活をしたいが、店を任せられる当てはないし、優雅な老後生活ができる程の金もない。
 ブロディは、退屈な店番をしながら、今日も一日を過ごしていく。

 ブロディは男しか愛せない。容姿が、そこら辺の人混みに埋もれそうな程、平凡なのだが、それでも三十代前半までは、たまに恋人ができていた。しかし、若さが無くなると、ブロディは全く相手にされなくなった。四十代前半までは、一晩限りの相手を求めるバーに行ったりもしていたが、見事に空振りばかりで、そのうち、行くのをやめた。

 この歳になって、今更恋人が欲しいとは思わないが、自分が普通に女を愛せて、普通に結婚していたら、今頃、一人ぼっちじゃなかっただろうなぁと思うようになった。

 ブロディは、男を見る目が無いのか、歴代の恋人は、ヒモ野郎や暴力野郎、浮気野郎ばかりだった。ブロディの見た目が、気弱そうに見えるから、多分、いいカモにされていたのだろう。実際、気弱な方だし。元恋人に、薬屋の売上を持ち逃げされたこともある。多分、最初から、それが狙いだったのかもしれない。

 ブロディは、カウンターに頬をつけて、大きな溜め息を吐いた。一人ぼっちには慣れているが、寂しいものは寂しい。このまま、孤独死するしかないかと思うと、本気で泣きたくなる。猫か犬でも飼いたいが、家でも薬を扱っているから、下手に生き物は飼えない。

 ブロディは、夕暮れ時の閉店時間まで、ぼーっとカウンターで過ごし、鈍く傷む腰を擦りながら、店仕舞いを始めた。
 店の看板を店内に入れようとしたタイミングで、コツコツと石畳を杖でつくような音が聞こえた。何気なく、音がする方を見れば、一人の同年代くらいの男が歩いてきていた。

 ブロディが、なんとなく軽い看板を持ったまま、男が近づいてくるのを待っていると、男に声をかけられた。若い頃はさぞかしモテただろうと思われる、小洒落た格好をした男だ。顔立ちも、皺があっても端正に整っているのが分かる。


「もう店仕舞いかな」

「あ、あぁ。あ、でも、急ぎなら……」

「評判がいい薬屋があると聞いてね。本当は、もう少し早めに来る筈だったんだけど、ちょっと店の場所が分かりにくくて迷ってしまって、この時間になってしまった。腰に貼る湿布と、膝に塗る痛み止めの軟膏が欲しいんだ」

「どっちもある。一応、初めての客には簡単な問診と、場合によっては、患部を診せてもらっている。それでもいいなら」

「構わないよ。その方が安心だ。ふむ。信頼できる薬師だとは聞いていたけど、本当のようだね」

「……そりゃどうも」


 ブロディは、看板を元の場所に戻すと、男を店内に入れた。
 問診票に書かれた名前は、アンリベール。歳はブロディより二つ年上で、数年前から腰と膝が悪いそうだ。湿布や塗り薬にも、種類がある。今、使っているものについて、分かる範囲で話を聴いてから、店の奥にある診察スペースで、アンリベールの腰と膝を診た。どちらも、加齢によるものだが、腰の方は、かぶれた痕があった。


「肌は弱い方?」

「うん。前に使っていた湿布だと、いつもかぶれてね」

「……なら、ちょっと肌に優しいものを作ってくる。効き目は変わらない。時間は大丈夫か? 小半時はかかるんだが」

「問題ないよ」

「では、薬草茶でよければ、それを淹れるから、飲みながら待っていてくれ」

「ありがとう」


 ブロディは、診察スペースから出ると、診察スペースの隣の調合スペースで、手早く薬草茶を淹れた。診察スペースの椅子に座っているアンリベールに、香草茶を渡し、早速、アンリベールに合わせた湿布を作り始める。

 黙々と作業していると、小半時を少し過ぎたくらいで、湿布が完成した。膝に塗る痛み止めも用意し、アンリベールが待つ診察スペースへと戻る。


「待たせてすまない。腰の湿布は、基本的には、風呂上がりに。一日一回が望ましいが、どうしても痛む時は、貼り替えてもらっても構わない。ただし、貼り替えは一日一回までにしてくれ。それ以上は、肌がかぶれるだろうし、薬が効き過ぎる。膝の方は、朝起きた時と、風呂上がりの二回塗ってくれ。どうしても暫くぬるぬるするから、服に薬がつくのが嫌なら、ガーゼと包帯でもしておいてくれ。こっちは、薬の使い方と注意点を書いた紙。一応、読んでおいてくれ。薬が合わなかったら、すぐに使うのをやめて、また来てもらえると助かる」

「ありがとう。思っていたよりも丁寧だなぁ。助かるよ」

「別に。これが仕事だ」

「薬草茶もご馳走様。美味しかったよ。蜂蜜でも入れたのかい? ほんのり甘くて飲みやすかった」

「蜂蜜も入れてある。滋養強壮にいいやつだ。……アンタ、酒が好きだろう。酒は少し控えめにした方がいい。内臓に負担がかかっている」

「おや。そんなことまで分かるのか」

「顔色を見れば、なんとなく」

「へぇー。あ、これ。今日のお代。また来るよ。あ、ねぇ。君の名前は?」

「ブロディ」

「知ってるだろうけど、私はアンリベール。ありがとう。ブロディ。また来るよ」

「……どうも」


 アンリベールが、薬を入れた袋を片手に、すっかり日が暮れた道を歩いて帰っていった。花街なので、細い道を抜ければ、明るい大通りがある。帰りの心配はいらないだろう。
 ブロディは、今度こそ店仕舞いをして、二階の自宅へと上がった。




ーーーーーー
 ブロディが、ぼーっと店番をしていると、カランカランと店の入り口につけている鈴がなった。また、来たのかもしれない。店のカウンターに姿を現したのは、案の定、アンリベールである。アンリベールは、何故か知らないが、三日と開けずに、ブロディの店にやってくるようになった。アンリベールが店を訪れるようになって、もう四ヶ月になる。


「やぁ。ブロディ。暇だから来たよ」

「ほぼ毎日じゃないか。そんなに暇なのか」

「まぁね。独り身だし」

「奥さんは?」

「私は結婚していないよ。男しか愛せないからね。君と一緒。君もそうだろう? なんとなく分かるよ」

「まぁ、そうだけど」


 ブロディは、アンリベールに小さな椅子を差し出すと、香草茶を淹れに、調合スペースに向かった。香草茶を差し出してやると、アンリベールが、嬉しそうに顔を皺くちゃにして笑った。


「このお茶が気に入ってね。美味しいよね」

「そりゃどうも」


 アンリベールは、引退するまでは、王宮で働く騎士だったらしい。今でも、すっと背筋が伸びていて、いつも身奇麗にしている。物好きなことに、毎日のようにブロディの店に来ては、気が済むまでお喋りをして、帰っていく。ブロディは、そんなに話上手という訳でもないのに、アンリベールは、いつも楽しそうだ。
 ブロディは、アンリベールが来ると、退屈ではなくなるので、実はちょっと嬉しかったりする。茶飲み友達って、こんな感じかなと、勝手に思っている。


「ブロディ。店の定休日はいつだい?」

「気が向いた時」

「じゃあ、明日にでも、気が向かないかな。珈琲は好きかい? 美味しい喫茶店があるんだ」

「珈琲は殆ど飲んだことがない。……けど、嫌いじゃない」

「おや。じゃあ、明日、飲みに行こう。最近は、酒を控えるようにしているから、珈琲ばかりでね」

「寝る前の珈琲はオススメしない。寝付きが悪くなる。温かいミルクにした方がいい」

「ふふっ。温かいミルクだなんて、子供みたいだ」

「すぐに寝付ける」

「そうしてみようかな。じゃあ、明日はデートということで」

「……デート?」


 ブロディは、驚いて目を丸くした。ぽかんと間抜けに口を開けているブロディを見て、アンリベールが可笑しそうに笑った。


「一応、これでも口説いてたつもりだったんだけど?」

「……物好きにも程があるな」

「そうかな。結構いい趣味してると思うけど」

「僕なんかのどこがいいんだ」

「なんとなく。なんていうんだろうね。君の雰囲気や店の雰囲気が、すごく落ち着くんだよね」

「……そりゃどうも?」

「とりあえず、明日はデートをしてみようよ。あ、なんなら同棲も大歓迎だよ。君と過ごす時間は、とても楽しくて、穏やかでいられるからね。もっと君のことが知りたいし、私のことも知ってほしいかな」

「い、いきなり同棲はちょっと……? アンタなら、もっと若くていい男をいくらでも恋人にできるだろう。僕なんかを選ぶなんて、趣味が悪い」

「そうかな。君の仕事ぶりは、いつもとても丁寧で、見ていて気持ちがいいよ。それに、若い頃のような、燃えるような恋はこりごりでね。まぁ、色々あって。穏やかな恋がしたいのさ」

「この歳でか?」

「いくつになっても恋をしてもいいじゃないか。私は、君と恋がしたい」

「……そ、そうか」


 穏やかに微笑みながら言われて、ブロディは、じわじわと顔が熱くなった。この歳で恋なんて、と思う反面、心の中の天秤が、ちょっと恋がしたいという方に傾いている。我ながらチョロいにも程がある。
 アンリベールは、今日も夕暮れ時まで店に居て、客が来ない間は、ずっと喋っていた。

 翌朝。ブロディは、衣装箪笥の前で唸っていた。デートに着ていける服が無い。基本的に、必要な買い物以外は外に出ないから、まともな服が無い。仕方がなく、ブロディは、無難な白いシャツと草臥れた黒いズボンを着て、年季が入った茶色いジャケットを羽織り、財布と家の鍵をジャケットの内ポケットに入れて、家を出た。

 待ち合わせ場所の花街の入り口に向かうと、もうアンリベールは来ていた。アンリベールが、ブロディを見ると、ふわっと嬉しそうに笑った。


「やぁ。デート日和だね」

「曇ってるが」

「カンカン照りより過ごしやすいじゃない」

「まぁ、そうだけど」

「さて、手を繋ごうか」

「正気か? 爺二人で」

「いいじゃないか。私は手を繋ぎたい」

「…………まぁ、いいけど」


 ブロディは、差し出されたアンリベールの手をやんわりと握った。アンリベールの手は、騎士をしていたというだけあって、意外な程ゴツくて、温かかった。
 杖をつくアンリベールの歩みに合わせて、のんびりと街中の方へと向かう。アンリベールが案内してくれた喫茶店は、落ち着いた雰囲気の店構えで、店内に入れば、客層も年齢が高めだから、ブロディも安心して入れた。若者が多いお洒落な店は、どうにも気後れしてしまう。

 テーブル席に座り、珈琲を注文すると、そう待たずに珈琲が運ばれてきた。いつも、自分で淹れた薬草茶ばかり飲んでいるので、珈琲を飲むのは随分と久しぶりだ。

 ブロディが、どこか懐かしい味に目を細めていると、アンリベールが顔を皺くちゃにして笑った。


「中々、美味しいだろう? 落ち着いた店だから、私のお気に入りなんだ」

「確かに美味いな」

「ふふっ。気に入ってもらえて嬉しい」


 アンリベールが、顔を皺くちゃにして、本当に嬉しそうに笑った。不思議だなぁと思う。アンリベール程、年老いても格好いい男なら、ブロディみたいな平凡な爺よりも、もっと素敵な相手がいる筈なのに。それなのに、アンリベールは、ブロディと恋がしたいと言う。
 アンリベールと、とりとめのないお喋りをしながら、ブロディは、ちょっとだけ小さく胸がときめくのを感じた。チョロ過ぎる気がするが、アンリベールは格好いいし、なんだかんだで、一緒にお喋りをしていて楽しいから仕方がない。
 ブロディは、のんびりと珈琲をアンリベールとのお喋りを楽しんだ。



ーーーーーー
 アンリベールに口説かれ始めて、早一ヶ月。我ながら、本当にチョロいのだが、ブロディは、アンリベールのことが、かなり好きになっていた。アンリベールといると、楽しくて、それまで感じていた退屈や孤独感が無くなる。アンリベールが皺くちゃの笑みを見せてくれると、嬉しくて、心臓がドキドキする。

 五日に一回のペースで、アンリベールとデートをしている。喫茶店に行ったり、隠れ家的な美味しい飲食店に行ったりと、正直、かなり楽しい。薄墨色だったブロディの世界が、アンリベールのお陰で、パァッと一気に色づいた気がする。

 今日は、普通に店を開けている。馴染みの娼館から依頼された薬を作っていると、アンリベールがやって来た。診察スペースと調合スペースの間に椅子を置いて、アンリベールが静かに香草茶を飲みながら、ブロディが薬を作るところを眺めている。アンリベールは、奇特なことに、ブロディが薬を作るところを見るのが好きらしい。見ていて面白いものではないと思うのだが、いつも、静かに見ている。別に邪魔にはならないので、好きにさせているが、物好きだなぁと思う。

 依頼された薬を作り終えた頃に、馴染みの娼館の者が薬を取りに来た。出来上がった薬を渡して、金を受け取れば、今日の仕事は終わりである。ふと、ブロディは思い立ち、店仕舞いを始めた。


「おや。今日はもう店仕舞いかい?」

「あぁ。…………その、なんだ」

「ん?」

「飯、食わねぇか。……二階で」


 アンリベールがきょとんとした後で、とても嬉しそうに、顔を皺くちゃにして笑った。ブロディは、顔がじわじわと熱くなるのを感じた。


「是非とも! もしかして、君の手料理?」

「大したものは作れないが」

「すごく嬉しいな。是非ともご馳走になるよ」

「言っておくが、上は散らかり放題だからな」

「そうなのかい? 君の店はいつもキレイにしてあるじゃないか」

「店はな」


 ブロディは、店仕舞いをすると、じんわり熱い頬を手で扇ぎながら、アンリベールを連れて、店の奥にある階段から二階に移動した。

 二階のブロディの家は、一応、それなりに片付けてはいるが、それでも、生活感があって、キレイとは言い難い。アンリベールが、ブロディの家に入ると、楽しそうに笑った。


「ブロディの匂いがする」

「薬臭いだけだろ」

「いいじゃない。君の匂い、私は好きだよ」

「……そりゃどうも」

「あ、ねぇ。一緒にやってもいいかい? これでも、簡単な料理はできるんだ」

「騎士様だったのに?」

「引退した後は暇だったから、通いの家政婦にちょっと習ってみたんだよ。意外と楽しいから、腰が悪くなるまでは、頻繁に料理をしていたんだ」

「へぇ。じゃあ、一緒に作ろう」

「うん。何を作るんだい?」

「鶏肉のシチュー」

「南瓜はある? 南瓜ゴロゴロの甘いシチューが好きなんだ」

「ある。……僕もいつも南瓜を入れてる」

「ふふっ。なんか嬉しいな」

「そうか」


 ほんの些細なことなのだが、アンリベールと共通点があって、なんだか、じんわりと嬉しい。
 ブロディは、アンリベールとお喋りをしながら、南瓜ゴロゴロのシチューを作った。

 南瓜ゴロゴロのシチューと、買い置きの胡桃のパン、それから、ワインを一杯だけ。質素なものだが、アンリベールは、とても嬉しそうに美味しそうに食べてくれた。

 温かいシチューで腹が膨れた後、ちびちびワインを飲みながら、アンリベールがテーブルの上で手を伸ばしてきた。なんとなく、ブロディも手を伸ばせば、アンリベールがブロディの手を握って、指を絡めた。


「ねぇ。ブロディ。泊まっていくのはアリかな」

「……別に構わない」

「ふふっ。ありがとう。ちなみに、私はまだ枯れていないんだけど、ブロディはどうかな?」

「……枯れてない」

「期待してもいいかな?」

「……好きにすればいい」


 ブロディは、ワインのせいだけじゃなくて、顔と身体が熱くなり始めた。こんな六十を越えたいい歳をして、可笑しい気がするが、アンリベールと触れ合いたい。
 食事の後片付けを一緒にすると、ブロディは、ぶっきらぼうに、アンリベールをシャワーに誘った。

 一緒にシャワーを浴びた後。ブロディは、全裸のまま、アンリベールと手を繋いで、寝室に入った。並んでベッドに腰掛けて、アンリベールと、初めてのキスをした。唇を触れ合わせながら、アンリベールが、ちょっと困ったように凛々しい眉を下げた。


「抱かれるのが好きだったのだけど、腰が死ぬよねぇ」

「僕も抱かれるばかりだった。僕も腰が悪い」

「本番は諦めるのが一番かな? 触り合って、舐め合おうか」

「……ん。この歳で尻を使うと、後が怖い」

「確かに。あと十歳若かったらなぁ。まぁ、いいけどね」


 ブロディは、アンリベールと抱きしめ合いながら、ベッドに寝転がった。ねっとりと舌を絡ませ合い、何度もお互いの唇を吸い合う。アンリベールが触れれば、ブロディのペニスは、久しぶりに勃起した。手を伸ばして、アンリベールのペニスに触れれば、ゆるやかな角度で硬くなっている。本当に、アンリベールは物好きだ。こんな冴えない爺相手に欲情するなんて。可笑しいが、同時に、とても嬉しい。

 味わうようなキスをしながら、お互いのペニスを扱きあう。はぁっと熱い息を吐いたアンリベールが、唇を触れ合わせたまま囁いた。


「ね。舐め合いっこ、しよう」

「ん」


 ブロディは、完全にベッドに上がると、アンリベールと頭が上下逆になるように寝転がった。目の前にあるアンリベールのペニスは、そこそこ大きくて、使ったことが殆ど無いのか、意外な程、無垢な淡い色をしていた。うっすら先走りが滲んでいるアンリベールのペニスの亀頭をべろーっと舐めると、自分のペニスの竿に熱くぬるついたものが這う感覚がした。久しぶり過ぎる快感に、堪らず低く唸ってしまう。

 アンリベールの舌使いは絶妙で、ブロディも、負けじと舌を動かし、ペニスの根元あたりをゆるく手で扱きながら、パクンとアンリベールのペニスを咥え、頭を前後に動かして、舌を這わせながら、アンリベールのペニスを唇で扱き始めた。
 アンリベールの足が、ビクッと震える。どんどん濃くなる先走りの味に、興奮し過ぎて、いっそ心臓が止まりそうだ。そんな洒落にならないことを思いながら、ブロディは、アンリベールのペニスを射精するまで可愛がりつつ、アンリベールがもたらす快感に、腰を震わせた。

 お互いに、口内に射精すると、のろのろと起き上がって、精液臭い口で、何度もキスをして、めちゃくちゃに舌を絡めあって、抱きしめ合った。
 お互い、荒い息を吐きながら、なんだか可笑しくなって、ブロディは、クックッと低く笑った。アンリベールも、楽しそうに笑っている。


「この歳で裸で寝たらマズいかな」

「流石にちょっと。もう秋口だ。風邪を引く」

「残念。服を着てから一緒に寝るよ」

「あぁ」

「ねぇ。ブロディ。此処に住んでもいいかな」

「……好きにしたらいい」

「ふふっ。じゃあ、好きにするよ。毎朝、珈琲を淹れてあげる。美味しい珈琲の淹れ方を練習したんだ」

「寝る前は薬草茶を淹れる。寝付きがよくなるやつ」

「ふふっ。いいね。とても素敵だ」

「シャワーで汗を流したら、香草茶を淹れよう」

「うん。楽しみ」


 アンリベールが、嬉しそうに顔をくしゃくしゃにして笑った。

 それから、半月後。ブロディの薬屋に、住人が一人増えた。カウンターで接客をしたり、掃除の手伝いをしてくれている。格好いいお爺ちゃんがいる薬屋があると、花街でちょっと話題になり、最近、娼婦の客が増えた。売上が増えてありがたいが、ブロディは、地味に忙しくなった。ブロディの薬もそれなりに評価されて、常連になる者が増えた。

 ブロディは、地味に忙しかった一日を終えると、アンリベールと一緒に、二階に上がった。
 一緒に夕食を作り、ちょこっとだけ触れ合いをしてから、薬草茶を淹れる。

 居間で薬草茶を飲みながら、アンリベールが、幸せそうに笑った。


「君が淹れてくれる薬草茶を飲むのが、一番好きだよ」

「僕は朝の珈琲が一番好きだ」

「ふふっ。明日の朝も気合を入れて珈琲を淹れなきゃ」

「ん」


 香草茶の柔らかい香りと共に、穏やかな空気が流れて、ブロディは、手を伸ばして、テーブルの上で、アンリベールと手を繋いで指を絡めた。

 薬屋さんと元騎士さんのささやかな幸せな日々は、のんびりと穏やかに続いていく。


(おしまい)
感想 1

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みんなの感想(1件)

MARUBETSU
2024.04.07 MARUBETSU

おー!老いらくの恋シリーズだー!好きです!またまたじんわりとした素敵なお話でした(⌒‐⌒)

2024.04.08 丸井まー(旧:まー)

感想をありがとうございますっ!!
本当に嬉しいです!!

今すぐハグしたい気持ちでいっぱいですーー!!
ハグ(っ>ω<)`ω'*)ギュ~ッ♡
爺ラブスキーの方がいらっしゃって、本当に本当に嬉しいです!!
全力で!!ありがとうございますっ!!
今回は、ほんのりエロもある感じになりました。60代はまだ枯れてないですもんね。
とても楽しく執筆いたしましたので、お楽しみいただけたのでしたら、何よりも嬉しいです!!

お読み下さり、ありがとうございました!!

解除

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