厳ついおっさんが女体化しても厳ついおばさんにしかならねぇんだよ!

丸井まー(旧:まー)

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65:デーリに相談だ!

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 昼食の後片付けを終えた後。ゴンドロフはアキムと一緒にデーリが暮らすナクールの店舗兼自宅へと向かった。
 まさかの恋愛相談の為である。主に恋愛童貞なアキムの為なのだが、ゴンドロフ自身も自分の気持ちがよく分かっていないので、この際だからハッキリさせておこうかと思う。

 ナクールの店に着くと、『本日休店』の看板があった。ゴンドロフは二階に向かってデーリの名前を呼んだ。すぐに窓が開き、デーリが顔を出した。


「ゴンドロフー。どうしたー?」

「ちと相談があるー」

「いいぜー。開けるから待ってろー」

「おー」


 デーリが窓から離れ、少しだけ待っていると、店のドアが開いてデーリが出てきた。


「アキムも一緒なんだ。まぁ、入れよ」

「こんにちはっす!」

「わりぃな。休みならイチャイチャしてたんじゃねぇの」

「まぁ、それなりに。でも構わないよ。僕とゴンドロフの仲じゃない」

「ありがとな。あ、これ土産。ケーキ。アイナお勧めの店のやつ。2人で食ってくれよ」

「おー。ありがとな。ありがたく貰うわ」


 デーリの後ろを歩いてカウンター内に入り、奥の階段を上がって居住部分に入る。
 居間に行けば、ふわっと微かに薬草茶の香りが漂っていた。ナクールが薬草茶を淹れてくれているのだろう。
 居間のソファーに座ると、すぐにナクールがお盆を持って現われた。


「わりぃな。休みの日に邪魔して」

「構わない」

「ダーリン。ケーキ貰った。アイナちゃんお勧めの店のだって」

「ありがとう。デザートにいただこう」


 ナクールが小さく笑い、デーリの隣に座った。ナクールが首を傾げながら、口を開いた。


「僕は席を外しておいた方がいいか?」

「いや? 別に構わねぇよ。知恵を借りてぇし」

「え? なになに? またなんか事件でもあったのかよ」

「ある意味? アキムが恋愛童貞なんだがよー」

「ちょっ、ゴンちゃん! いきなりバラさないでくださいよっ!」

「「恋愛童貞」」

「セックスは11からしてたらしいけど、初恋もまだな恋愛童貞だ」

「11!?」

「随分と早いな。性的虐待でも受けていたのか」

「いやー。虐待とかではねぇっす。ショタコンの人妻に誘われてー、そのままセックス教えてもらったー、みたいな?」

「ふーん。そもそも身体から入っちゃったから、甘酸っぱい初恋的なやつと縁がなかったのかな?」

「さぁ? 多分?」

「で、恋愛童貞のアキムは何を相談したいのかな? あとゴンドロフも」

「あーー。その、俺ってゴンちゃんが好きなのかなって……で! ゴンちゃんも俺が好きというか、あ、愛してるって感じなのかな?って……りょ、両想いなんすかね!?」

「いや、それを僕らに聞かれても?」

「ゴンドロフはどうなんだ? アキムのことが好きなのか」

「あー? んーー。多分? 一般論的には好きなんじゃねぇかと思う? よく分かんねぇ。お互いによく分かんねぇから、とりあえず恋人やってるお前らに相談しに来た感じ」

「なるほど? ふむん。ずばっと言っちゃっていい?」

「どうぞっす!」

「おー。いいぞー」

「お前らさ、今更感半端ないから」

「ん?」

「あー?」

「お互いに信頼し合って気も使わない仲だろ? ついでにセックスもしまくってて、デートみたいなこともしまくってる。前にも言ったけど、もはや恋人通り越して熟年夫婦感あるからな? お前ら」

「マジっすか。デーリさん」

「マジかよ。デーリ」

「確かに、傍から見ていて2人はとても仲がいい。いい意味で遠慮がない関係性に見える。熟年夫婦というのは言い得て妙だな」

「マジっすか。ナクールさん」

「マジかよ。ナクール」


 ゴンドロフはなんとなくアキムの方を見た。アキムも困惑した顔でこちらを見ている。アキムの顔は真っ赤になっていた。


「じゃっ、じゃあ! おっ、俺とゴンちゃんって、こ、恋人になる……みたいな!? 感じなんすか!?」

「それは2人で決めることだと思うけどな。なー。ダーリン」

「そうだな。2人で話し合って、これからどうしたいかを決めるのが一番いい」

「アキムはどうしたいんだ? 今後のこと」

「え? えーと……ゴンちゃんとはずっと一緒に暮らしてぇかも? 楽しいこと探しももっとやりてぇし、一緒にリリンの成長見守りてぇかなぁと思う……ような?」

「ゴンドロフは?」

「あー? ……アキムが結婚するまでは居候するつもりだったんだけどよー。なんつーか、もうすでにアキムは俺専属ちんこだし、他の奴に盗られるのもなんかなー、と。アキムの家が帰る家になってっし、リリンの成長もできるだけ側でみてぇなぁって感じ?」

「ちんこ単体はやめろー。本体を愛せよ。本体を」

「本体もまぁ好きだと思う。多分」

「2人とも結論でてるのに、何を相談したいの? それとも惚気にきたのか? そっちがその気ならこっちも惚気るぞ?」

「違うっす! ほんとにどうしたらいいのか、分かんなくてーー!!」

「俺とアキムじゃお話し合いしてもいまいち前に進まねぇんだよ。なんかお互いに決定打に欠けてる感があるというか。まぁ、アキムは恋愛童貞だしな。俺は俺で、昔の恋みたいなドキドキ感とかときめきとかねぇから困惑してる」

「なるほど? 身体から始まって、すぐに同棲始めちゃったから、恋にありがちな、相手に自分のことを見てもらいたい! みたいな思いとか、そういうのが無縁だったからじゃないのか? 普通なら段階的に進んでいく関係性を、お前らは過程をすっ飛ばして最後にいっちゃってんだわ。だから、今更困惑してんじゃないの?」

「なるほど?」

「あー。言われてみれば?」

「ふむ。ゴンドロフ。アキム。試しに『恋人ごっこ』をしてみてはどうか」

「恋人ごっこ?」

「なんだそりゃ。ナクール」

「所謂、恋人らしいことを改めてしてみるんだ。デートをして手を繋いでみたり、暫くセックスはなしで、おやすみのキスだけするとか」

「「マジか」」

「おっ。流石ダーリン。いい考えかもー。お前らに絶望的に欠けているのは初々しさだ。とりあえず初々しい恋人ごっこをしてみろよ。それでなんか自分の中で納得できる答えが見つかるかもしれないぜ」

「セックスなし……つ、辛い……いやでも。今の宙ぶらりんな感じも辛い……!」

「セックスはありじゃ駄目なのかよ」

「恋人同士のセックスは愛を分かち合うものであり、素のままの自分で触れ合うコミュニケーションだ。単なる快楽のためのセックスとは違う」

「そんなもんすか……」

「禁欲生活……つらいっ!!」

「お前ら、どんだけセックス好きなんだよ。とりあえず一か月! 禁欲生活しつつ! 恋人ごっこで自分の気持ちを再確認する! ってことでいいんじゃないか?」

「うぅ……ゴンちゃん!」

「なんだ」

「禁欲生活するっす! んで! 恋人ごっこもするっす!」

「じゃあ、一緒に寝るのもなしだな。おっぱい枕も一か月なし」

「えっ!? えぇーー!! デーリさん! ナクールさん! 一緒に寝るのはありっすよね!?」

「ないだろ」

「なしだな」

「うそーーん! ぐぅっ……耐えるっ……耐えてみせるっ……俺がんばる……!」

「ていうか、おっぱい枕ってなに?」

「俺の胸筋を枕にして毎晩寝てんだよ。こいつ」

「おっさんの胸筋を枕にしてんの!? うわ……ごめん。ちょっと引く……」

「なんでぇ!? いや、ゴンちゃんのおっぱい枕、マジで快適快眠なんすよ! あったかふかふかふにふにで!」

「うん。ゴンドロフの胸筋の感想はいらないかな。よし! 結論! 一か月禁欲生活並びに恋人ごっこをして、自分の気持ちとしっかり向き合った上で再度今後のことを話し合うこと! 以上!」

「う、うぃっす」

「おー。分かった。まぁ、やってみる。あ、一か月ってよー、仕事の期間も入れて一か月か?」

「まさか。仕事期間は抜きだよ。仕事期間入れたら一か月なんて一瞬じゃないか。それじゃ意味ないし」

「マジかよ……仕事から帰っても禁欲か……」

「ゴンドロフもアキムもまぁがんばりなー」

「うぃーっす。今日はありがとうございました!!」

「おー。ありがとな。2人とも。話聞いてくれて。なんかまたあったら相談に来るわ。次は挽肉のパイでも作ってくる」

「あっ、あのパイめちゃくちゃ美味しかったから、また食べたーい。よろしく! ゴンドロフ!」

「おぅ。じゃあ、今日のところは帰るわ」

「お邪魔してすいませんっした!」

「いいよいいよー。気をつけて帰りなー」


 ゴンドロフはソファーから立ち上がり、アキムと一緒にナクールの店から出た。
 なんとなくたらたら歩きながら、アキムがぼそっと呟いた。


「一か月、禁欲で寝るのも別なら、風呂も別っすかね」

「別……だよなぁ」

「あーー。なんか絶対に落ち着かないのが目に見えてるぅ!」

「俺もだわ。まぁ、一か月頑張ってみるぞ」

「うぃっす! ゴンちゃんはベッドで寝てくださいよー。俺はソファーで寝るんでー」

「あー? 居間のリリンはいはい用スペースで寝るわ。4人で昼寝しても問題ない広さだし、仕事ん時は地べたで寝ることも多いから慣れてっし」

「んーー。じゃあ、仕事に行く前はベッドで寝てくださいよ。つーか、なんなら、一日交代でベッドで寝ればいいんじゃないっすかね。じゃないとほら、溜まっても抜けないし」

「あ、それがあるか。一か月……なげぇ……」

「長いっす……」


 自分達の為ではあるのだが、一か月の禁欲生活はかなり辛い。ゴンドロフはアキムと同時に溜め息を吐いた。
 とりあえず今日から『恋人ごっこ』をやってみる。
 ゴンドロフは手始めに歩きながらアキムの手を握った。やんわりと握り返されたアキムのほっそりした手は、心なしかいつもより少しだけ温かった。

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