厳ついおっさんが女体化しても厳ついおばさんにしかならねぇんだよ!

丸井まー(旧:まー)

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50:お留守番の日

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 ゴンドロフが目覚めると、アキムが胸筋を枕にぐっすり寝ていた。いつものことなので、ころんとアキムを落とし、服を着て大剣を片手に庭に出る。

 昨夜はセックスをしたのだが、三発までにしておいたので、日課をしても問題ない。ケツ毛がそれなりに伸びていたが、アキムはペニスを舐めれば普通に勃起したし、その後も普通にセックスできていたので、わざわざ脱毛する必要はない気がするのだが、アキムはどうあっても脱毛したいらしい。『無敵の猛者』を目指した方が面白いのにと思うが、そこまで毛に拘りがあるわけでもないので、妥協してやることにする。

 ゴンドロフが朝の日課をしていると、アキムが庭に出てきた。一緒に軽く走り、筋トレをして、先に筋トレを終えたアキムが家の中に入っていくのを見送ってから、本格的な筋トレを始めた。
 筋肉はいい。頑張れば頑張るだけ分かりやすく応えてくれる。ゴンドロフは汗びっちょりになるまで、筋トレに励んだ。

 シャワーを浴びて台所に向かうと、アキムとリリンをおんぶしたアイナが朝食を作っていた。もうできあがったようなので、居間のテーブルに運ぶ。
 朝から美味い朝食をガツガツ食べると、仕事に行くアキムを玄関先で見送り、洗濯を仕掛けてから朝食の後片付けを始めた。

 ゴンドロフが食器類を洗い、アイナが拭いてくれる。水がまだ冷たいので、あまりアイナに水仕事はさせたくない。風邪を引いたら大変だ。
 皿を拭きながら、アイナが話しかけてきた。


「ゴンちゃん、お昼ご飯は何にする?」

「あー? 昨日買った料理本の料理に挑戦してみてぇな。……ベーコンと芋を牛乳で煮て、チーズかけて焼いたやつとか?」

「あら! 美味しそう! いいわね! あとは、野菜ゴロゴロのスープにしようかしら。デザートに焼き林檎なんてどう?」

「最高。それでいこうぜ」

「リリンが動きたくてジタバタしてるから、これが終わったら居間で爆走させとくわー。なんでも口に入れようとするから目が離れないのよねぇ」

「歩けるようになるまで、もうちょいってとこか?」

「うん。多分ね。育児書を信じるならば!」

「まぁ、個性があるしなぁ。言葉は多分早い方だし、案外歩くのも早いかもな」

「そうかもー。リリンが初等学校に入ったら、私も働こうかしら」

「初等学校? ってなんだ?」

「あら。ゴンちゃんの故郷にはなかったの? 7歳から12歳までの子供が通う学校なの。読み書き計算その他諸々、色々習うのよ」

「へぇー。デカい街は違うな。俺の故郷はど田舎の農村だったから、そんなもんなかったわ。読み書き計算は剣の師匠に習った」

「へぇー。初等学校の上に中等学校っていうのもあってー、3年間色んな勉強をするのよ。その上に更に高等学校もあるけど、よっぽど頭がいいか、家がお金持ちの子しかいかないわ」

「へぇー。アイナ達はどこまでいってんだ?」

「私達は中等学校までよ。そんなに裕福でもなかったし。お兄ちゃんは勉強がすごくできて、高等学校への推薦もらえたんだけど、『これ以上勉強すんのだりぃ』って言って、結局ギルドに就職したのよねぇ」

「なんかもったいねぇな」

「ねー。まぁ、高等学校って勉強漬けって聞くし? 遊びたかったのもあるんじゃない?」

「そっちの理由の方がでかそうだな。アイナは働く先の当てとかあるのか?」

「んー。前に働いてた小間物屋さんかなぁ。だめだったら、別の仕事先を探すわ。探せばなんかあるでしょ」

「まぁ、選り好みしなけりゃいくらでも仕事はありそうだな」

「ねー。ん? ゴンちゃん。リリン頑張ってない?」

「あ、頑張ってるわ。これ」

「でーたー」

「出たな。おむつ替えるわ」

「ありがとー。居間に行きましょ」


 ゴンドロフは居間に行くと、リリンを赤ん坊用のベッドに下ろしたアイナから替えのおむつを受け取り、手早くおむつを替えた。
 朝食の後片付けは済んだので、手を洗いに行きがてら、終わった洗濯物を籠に入れ、二回目の洗濯を仕掛ける。

 庭に出て洗濯物を干しながら、ゴンドロフは空を見上げた。今日は冷えるが、からっと晴れているので、洗濯物が乾きそうだ。
 今日は出かける予定もないので、アイナとリリンとお留守番である。冷えるのでリリンの散歩はやめておいた方がいいだろう。居間で遊んでやればいい。
 ゴンドロフは洗濯物を干し終えると、二回目の洗濯が終わるまで、アイナと手分けして家の中の掃除をした。

 居間でリリンとぬいぐるみで遊んでいると、すぐに昼時になった。
 ゴンドロフはアイナと2人で料理本を見つつ昼食を作り、ちゃんといい感じに出来上がった昼食をガツガツ食べた。料理もそれなりに上達してきている気がする。アイナが『おーいしーい』と笑顔で食べてくれるので、作り甲斐があるというものだ。
 ゴンドロフは食べ終わると、リリンに離乳食を食べさせているアイナと交代して、リリンに離乳食を食べさせた。
 リリンは食べるのは嫌がらないが、すぐに遊びたがるので、食べさせるのにちょっと時間がかかる。
 ゴンドロフは遊びたがるリリンをあやしながら、ゆっくり食べさせた。

 後片付けが終わったら、昼寝の時間である。優雅過ぎるな……と思いながら、ゴンドロフは胸にリリンをのせ、左腕をアイナの枕にして、午後のお茶の時間までうとうとしていた。
 リリンが起きて、また髭をさわさわ触り始めた。なんか気に入ったようである。
 くっついていたアイナも起きて、小さく欠伸をしてからゆるく笑った。


「ゴンちゃん、ぬくいからちょー寝れるー」

「おー。よかったな」

「あら。リリンはお髭が気に入ったのね。ちょっと失礼。わー。ふさふさー。新感覚! 私の周り、誰も髭を伸ばしてる人いなかったし、なんか新鮮ー」

「マジで髭伸ばしたまんまにすっかなー。どうやって手入れすんのか知らねぇけど」

「誰か髭を伸ばしてる知り合いっていないの?」

「あー? あ、ヴァルドが顎髭伸ばしてんな。ヴァルドに聞くか。リリン。お茶の時間だ」

「あぅ!」

「紅茶を淹れましょうかねー。リリンは薄めたやつね。おやつは何にしようかしら……ちゃちゃっと林檎を檸檬で煮る?」

「おっ。いいな。砂糖入れなけりゃリリンも食えるだろ」

「えぇ。じゃあ、動きますかー」


 アイナが起き上がったので、ゴンドロフもリリンを抱っこしたまま起き上がった。


「あ、ゴンちゃん。前抱き用のおんぶ紐を作ってみたの。試してみてよ。めちゃくちゃ頑丈に作ったから多分大丈夫とは思うけど」

「おー。すげぇな。使う」

「うん。持ってくるわ」


 アイナが持ってきたおんぶ紐を使って、リリンを前抱きで抱っこする。慎重に手を離してみれば、安定している感じである。


「大丈夫そうだ」

「よかったー。じゃあ、おやつを作りますか!」

「おー」


 台所へ行き、林檎の皮を剝いていると、アイナに問いかけられた。


「ねぇねぇ。ゴンちゃん。ゴンちゃんって、お兄ちゃんと恋人にならないの?」

「あー? ねーな。あいつ若いし、まだまだ出会いがあんだろ」

「えー。既にイチャイチャしまくってるんだから、この際恋人でもよくない? あ、私的には結婚も大歓迎よ!」

「ねーなぁ。アキムにはもっといい奴がいるだろ。遊びまくってたけど、割と優しいし、気のいい奴だし」

「むぅ。中々手強いわね……お兄ちゃんもゴンちゃんも。なんかこう……意識しちゃったりとかないの?」

「ねーな!」

「ないかぁ! まぁ、焦らず経過観察ってとこかなぁ。ゴンちゃんが帰ってくる家になってほしいのよねぇ。私的には」

「それはもうなってるぞ」

「ほんと!? やったー! すっごい嬉しいー。ゴンちゃんにはいっぱいお世話になってるし、何よりゴンちゃんのこと好きだもの。あ、異性としてじゃないから。家族愛的な感じだから。ゴンちゃんはお兄ちゃんのだしね!」

「おー。ありがとな。俺もアイナが可愛いぞ。リリンもな。一生懸命頑張る奴は好きだぜ」

「ふふー。ありがと。さて、あとは軽く煮たらおしまい」


 林檎の檸檬煮が出来上がり、少し冷めたら午後のお茶である。夕食に何を作るか話しながら、のんびり紅茶を楽しんだ。
 ゴンドロフは、先程のアイナとの会話がどうにも擽ったくて、でも嬉しくて、にやけそうになるのをぐっと堪えた。

 アキムと恋人になったり結婚したりするのはあり得ないが、アイナに家族として見られているのは素直に嬉しい。多分、アキムも似たようなことを考えていそうだ。
 自分の家族は、下の兄弟を除けば、あまり好きではなかった。
 この歳で新たに家族ができるとは予想外だったが、悪くない。

 ゴンドロフはアイナとお喋りをしながら、洗濯物を取り込み、夕食の支度を始めた。

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