不運な男達〜転生魔王の生贄はおっさん〜

丸井まー(旧:まー)

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3:心優しき変態紳士(自称)

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夕食と風呂が終わると、マオたんは生贄のおっさんがいる客室へと向かった。片手には自信作である『リザードマンの2本ちんこでアヘ顔ダブルピース!犯される女騎士の絶頂潮吹き祭り!』を持っている。エロ本が無いと勃起する自信が欠片もない。だって相手はおっさんだもん。
生贄とはいえ、すぐに死なれるのも寝覚めが悪い。というか、生贄を貰っても、エロエロする以外で特にすることもない。人間なんか気持ち悪くて食えないし、拷問とかして楽しむ趣味もない。マオたんは本当にエロい事にしか興味がない。

マオたんは変態という名の紳士なので、ちゃんと礼儀正しく客室のドアをノックした。中からの返答はない。
暫く大人しく待っていたが、もしや早くも弱って死んでいるのではないかと心配になり、マオたんは静かに客室のドアを開けた。

暗い客室の明かりを指パッチンで灯すと、パァッと明るくなった客室のベッドが、こんもり盛り上がっているのが見えた。どうやら生贄のおっさんはベッドの中にいるようである。
マオたんは、できるだけ静かにベッドに近づいた。
そーっと、生贄のおっさんの様子を覗えば、生贄のおっさんはどうやら単に寝ているだけのようだ。死んでいなくて何よりである。

マオたんは少しだけ考えて、生贄のおっさんを起こすことにした。寝ているまま精液を飲ませて誤飲でもされて死なれたら困る。マオたんは人殺しになるつもりはない。
マオたんが、布団の上から生贄のおっさんの身体を優しくゆさゆさと揺さぶると、生贄のおっさんが不明瞭な声を上げて、のろのろと顔を上げて目を開けた。次の瞬間、生贄のおっさんが悲鳴を上げて、ずさぁぁっとベッドの上で後ずさり、そのまま、ぼてっとベッドから落ちた。

マオたんがベッドの反対側に行くと、生贄のおっさんが腰を手で押さえて呻いていた。どうやら落ちた時に腰を強く打ったようである。
マオたんは心優しい変態紳士なので、生贄のおっさんにできるだけ優しく声をかけた。


「大丈夫?おっさん」

「……ひぃっ、ま、ま、魔王陛下……」

「あ、はい。魔王でーす。親しみを込めて『マオたん』って呼んでちょ」

「…………えっと…………」


マオたんを見上げる生贄のおっさんが顔を引き攣らせた。よくよく見れば、カタカタと微かに身体が震えている。マオたんの鋭い嗅覚がおしっこの匂いを感知した。どうやら、寝起きにマオたんを見てチビったようである。
マオたんは心優しい変態紳士なので、薄汚れている上におしっこチビった生贄のおっさんに、またできるだけ優しく声をかけた。


「お風呂に入ってきなよ。そこのドアの所。あ、使い方教えてあげるわ。おっさん魔力使える?」

「……す、少しなら……」

「お。よかったよかった。魔力を流してシャワーとか出すからさー。魔力無いと不便なのよ。じゃあ、移動するよー。立てる?」

「……も、申し訳ありません。その、あの……腰が……」

「ありゃ。そんなに強く打ったの」

「……いえ、その、こ、腰が抜けておりまして……」

「あ、はい。じゃあ、連れて行くから、お風呂入っておいでよ。ちょっと待ってて。お湯溜めてくる」


マオたんは、のっしのっしと歩いて、客室に備えつけられている風呂場へと向かった。広めの浴槽にサクッと温かいお湯をたっぷり溜めると、生贄のおっさんの元へ戻る。
マオたんの姿を見るなり、ビクッと震えて怯えた顔をする生贄のおっさんを軽く片手で抱っこして、風呂場へと連れて行ってやる。
浴室の床に置いてある小さな椅子に生贄のおっさんを座らせると、マオたんはできるだけ優しく説明を始めた。


「これがシャワーが出るとこね。ここのボタンに触って魔力を流すとお湯が出てくるから。あと、こっちのピンク色の容器が身体を洗う石鹸で、こっちの青いのが髪を洗うやつね。身体を洗うスポンジはこれ。風呂から出たら脱衣場にタオルが置いてあるから、好きに使ってよ。着替えは適当に用意しておくわ。あ、その格好が趣味なら同じもの用意させるけど。その腰布っておっさんの趣味なの?」

「……趣味ではございません」

「あ、ですよねー。腰布生活されても、こっちが困るし、普通に着れそうな服を用意させるわ。その間に風呂でゆっくりしといてよ」

「……は、はい」


マオたんは一通り説明を終えると、生贄のおっさんを風呂場に残して、客室のドアから外に顔を出した。いつも通り控えている羊頭の爺やに声をかける。


「爺や。おっさんが着れそうな服を適当に用意してくれない?」

「かしこまりました。ご要望はございますか?」

「えー。おっさんの服に興味なんてねぇわー。普通の服でいいよ。爺やが着てるみたいなやつ」

「かしこまりました。すぐにご用意いたします。パンツは、トランクスタイプとボクサータイプと、セクシー紐パン、どれにいたしますか?」

「好みがあるから、トランクスとボクサー、両方で。セクシー紐パンはいらない。我輩が萎える」

「ほっほっほ。爺や的には、セクシー紐パンがオススメなのですが、かしこまりました。すぐにご用意いたします」

「よろしこしこー」


爺やがすぅっとその場から消えたかと思えば、数秒後には、またその場にすぅっと現れた。爺やの手には、服が何枚もあった。爺やはこれぞ執事!みたいな格好をしている。羊の執事である。ちょっと面白いとマオたんは思っている。
爺やが寝間着に良さそうな白くて柔らかい布地のシャツとズボンも持ってきてくれていたので、爺やから服を受け取って、室内に戻る。
脱衣場に服を置くと、浴室の方から水音が聞こえてくる。

マオたんは、そっと脱衣場から出て、生贄のおっさんが風呂から出てくるまで、客室に置いてある書物机の椅子に座って、『リザードマンの2本ちんこでアヘ顔ダブルピース!犯される女騎士の絶頂潮吹き祭り!』を読み始めた。我ながらいいエロエロ具合である。我輩天才!と自画自賛しながら、ぐふぐふと顔をだらしなく緩めてエロエロ同人誌を読んでいると、脱衣場のドアが開いて、ゆったりめの白い服を着た生贄のおっさんが出てきた。生贄のおっさんは、右足を引き摺っている。
マオたんは、こてんと首を傾げて、生贄のおっさんに声をかけた。


「足が悪いの?」

「え、あ、その……腱を切られておりまして……」

「え。なんで」

「……その、逃げ出さないようにと……」

「えっぐ!こわっ!えー。人間こわーい。つか、ヤバーい。そこまでするか普通」

「は、はぁ……」


生贄のおっさんが困惑したような顔をした。
マオたんは生贄のおっさんに声をかけて、ベッドに腰掛けさせた。のっしのっしと歩いて生贄のおっさんに近づき、その場にしゃがみこむ。


「不便そうだから治すわ。やー。人間って怖いなぁ。魔族よりおっかないじゃーん」

「え、あ……」


マオたんは生贄のおっさんの右足を掴むと、サクッと魔術をかけて、生贄のおっさんの右足を完全に治した。
生贄のおっさんに声をかけて、立ち上がらせる。生贄のおっさんは普通に立ち上がり、驚いた顔をした。


「……治ってる」

「痛くない?」

「あ、いえ。その、あ、あ、ありがとうございます……」

「いーえー」


生贄のおっさんがその場で足踏みをして、本当に微かに口角を上げた。多分、ずっと痛かったんじゃないだろうか。人間は酷いことをするものだ。

マオたんは再び生贄のおっさんに声をかけてベッドに腰掛けさせると、書物机の椅子をベッドのすぐ近くに持ってきて、生贄のおっさんと向かい合って椅子に座った。


「おっさんに残念なお知らせです」

「は、はい」

「人間が食べられるものって、うちの国には少ないらしいのよー。んで、空気中の魔素も人間には濃度が濃すぎるらしくてー。このままだとおっさんは普通に死にます」

「……はい」

「ということで、おっさんを魔族に変えようと思うのだよ」

「え?」

「生贄とはいえ、死なれても寝覚めが悪いじゃん?で、生かそうと思ったら、魔族に変えちゃうのが一番手っ取り早いのよ。やり方としては、我輩の精液をお口でごっくんしてもらって、我輩の精液を介して、おっさんの身体に魔力を注ぎ込んで、魔族に作り変えるって感じ」

「は、はぁ……」

「うんこ出す穴にちんこ突っ込む嫌だから、頑張って口で飲んでよ。じゃなかったら死ぬし」

「……あの……」

「ん?」

「わ、私は、生きて、何をすればよろしいのでしょうか」

「えー。我輩は別に特にやりたいことないしー。おっさんの好きに生きれば?おっさんを生かすのは、単に死なれても寝覚めが悪いってだけだし。魔族に変えるから、働きたければ働けばいいんじゃね?働きたいなら仕事斡旋するけど」

「……私は生きていていいのですか」

「え?普通にいいんじゃね?」


マオたんが軽く答えると、何故か生贄のおっさんの顔が泣きそうに歪んだ。
もしや、生贄になったから死ぬ気満々だったのだろうか。マオたんとしては、生贄とはいえエロエロできない以上、普通に好きに生きてもらって構わない。

生贄のおっさんが、ベッドから降りて、その場で膝をついて、頭を垂れた。


「脆弱な身ながら、魔王陛下に忠誠を誓います」

「え?なんで?いやまぁ、別にいいけどね」


何故か分からないが、生贄のおっさんに忠誠を誓われた。マオたんは不思議だなぁと首を傾げながら、適当に頷いておいた。

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