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第三章 都での生活
15.エルヴィーノ様との再会
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客間の扉の前で、ジョルジーニは立ち止まって一呼吸した。
「申し上げます、クラリッサ様のお越しでございます」
緊張したように声を張るジョルジーニを、意外に思いながら眺めていると、中から扉が開いて顔を出したのは。
「バルトロ!」
私はにこにこと笑っているバルトロに思わず駆け寄る。
「クラリッサ!久しぶり」
バルトロはドアを大きく開けて、私の手を取り中へ招き入れた。
晩夏の昼前、熱をはらんだ風が吹き抜ける客間の大きなテーブルには、軽食とお酒の準備がしてあった。
くすくすと笑う声に私が顔を上げると、エルヴィーノ様が可笑しそうに笑いながら私に近づいてきた。
妙に懐かしいその優しい笑顔に私は一瞬、見惚れてしまい、慌てて片足を引いてお辞儀する。
「相変わらずだなクラリッサ、俺より食事の方が気になるのか」
笑いを含んだ声で言い、私の前まで来て「顔を見せてくれ」と言った。
ドキドキと脈打つ心臓の音になんだか焦りながら顔を上げると、エルヴィーノ様は微笑んで手を伸ばし、私の頬を優しく撫でた。
「約束通り、迎えに来たよ」
「あ、あの…おかえりなさいませ」
私はエルヴィーノ様の痩せて精悍になった顔の、濃い茶色の瞳に魅せられ、唇をこじ開けるようにして言葉を絞り出す。
「少し見ないうちに綺麗になった。
さすがアレクだな。
もう、俺は…必要ないか?」
称賛するような響きの中に、切なさのような声色が混ざる。
私を見つめる瞳に昏い影が過ったような気がして、私は胸を衝かれ何と答えるべきか判らず、黙ったまま吸い込まれそうに透明な瞳を見つめていた。
エルヴィーノ様はまたくすっと笑うと「お前は正直になったな」と言って、私の背に手を回して引き寄せる。
「会いたかった。
お前のことをずっと考えていた」
頬を私の頭に寄せ、囁くように言う。
私は、エルヴィーノ様の纏う良い香りに包まれて、暑いのも忘れて目を閉じた。
何だろう、にぃ兄様のような安心感…
「っ、そうだわにぃ兄様は?!」
私は思い出して、エルヴィーノ様の胸に手をあてて押し返す。
エルヴィーノ様は呆気にとられたように私を見て、また笑い出す。
「ったく、色気のないところは変わらないか。
食事しながら話そう。
バルトロ!」
私の腰に手を回してテーブルの方へ導きながら、エルヴィーノ様は部屋の隅に控えていたバルトロに声をかける。
「はっ!」
「ここからは人払いだ。
給仕もいらない、二人で勝手にやるから」
「はっ」
バルトロが礼をして下がろうとすると「あ、そうだ」と言って引き止めた。
私をソファに座らせ、その向かいに移動しながら話す。
「ジョルジーニに言っておいたから大丈夫だとは思うが…
エセルバート殿がここにいらっしゃってるはずだから、後でお話し申し上げたいと伝えておいてくれ」
「畏まりました」
バルトロが出て行くと、エルヴィーノ様はグラスを取って私の方へ差し出した。
私は急いで、お酒の入った水差しを持ちあげてグラスに注いだ。
私のグラスに、エルヴィーノ様はジュースを注いで、自分のグラスを掲げる。
「では、再会を祝して」
私もグラスを持ち上げて、エルヴィーノ様のグラスに軽く触れ合わせる。
ひとくち、グラスの液体を口に含み飲み下して、エルヴィーノ様は微笑んだ。
「帰京してすぐに、一度ここへ来たんだ。
だけどお前はエセルバート殿と野営訓練?か何かに行っていて、今日は帰ってこないと。
驚いたよ」
厳しいだろあのお方は、と言いながらエルヴィーノ様はくっくと喉を鳴らして笑う。
「俺やアレクも昔めちゃめちゃ鍛えられて、何度も音を上げて逃げ出して捕まって。
だけど大事なことをたくさん教わった」
私はいろんな意味で激しく共感し、こくこくとうなずいた。
エルヴィーノ様はそんな私を見てまた微笑み、それから真剣な表情になって口を開いた。
「さてじゃあ、お前の兄の話をしようか」
「申し上げます、クラリッサ様のお越しでございます」
緊張したように声を張るジョルジーニを、意外に思いながら眺めていると、中から扉が開いて顔を出したのは。
「バルトロ!」
私はにこにこと笑っているバルトロに思わず駆け寄る。
「クラリッサ!久しぶり」
バルトロはドアを大きく開けて、私の手を取り中へ招き入れた。
晩夏の昼前、熱をはらんだ風が吹き抜ける客間の大きなテーブルには、軽食とお酒の準備がしてあった。
くすくすと笑う声に私が顔を上げると、エルヴィーノ様が可笑しそうに笑いながら私に近づいてきた。
妙に懐かしいその優しい笑顔に私は一瞬、見惚れてしまい、慌てて片足を引いてお辞儀する。
「相変わらずだなクラリッサ、俺より食事の方が気になるのか」
笑いを含んだ声で言い、私の前まで来て「顔を見せてくれ」と言った。
ドキドキと脈打つ心臓の音になんだか焦りながら顔を上げると、エルヴィーノ様は微笑んで手を伸ばし、私の頬を優しく撫でた。
「約束通り、迎えに来たよ」
「あ、あの…おかえりなさいませ」
私はエルヴィーノ様の痩せて精悍になった顔の、濃い茶色の瞳に魅せられ、唇をこじ開けるようにして言葉を絞り出す。
「少し見ないうちに綺麗になった。
さすがアレクだな。
もう、俺は…必要ないか?」
称賛するような響きの中に、切なさのような声色が混ざる。
私を見つめる瞳に昏い影が過ったような気がして、私は胸を衝かれ何と答えるべきか判らず、黙ったまま吸い込まれそうに透明な瞳を見つめていた。
エルヴィーノ様はまたくすっと笑うと「お前は正直になったな」と言って、私の背に手を回して引き寄せる。
「会いたかった。
お前のことをずっと考えていた」
頬を私の頭に寄せ、囁くように言う。
私は、エルヴィーノ様の纏う良い香りに包まれて、暑いのも忘れて目を閉じた。
何だろう、にぃ兄様のような安心感…
「っ、そうだわにぃ兄様は?!」
私は思い出して、エルヴィーノ様の胸に手をあてて押し返す。
エルヴィーノ様は呆気にとられたように私を見て、また笑い出す。
「ったく、色気のないところは変わらないか。
食事しながら話そう。
バルトロ!」
私の腰に手を回してテーブルの方へ導きながら、エルヴィーノ様は部屋の隅に控えていたバルトロに声をかける。
「はっ!」
「ここからは人払いだ。
給仕もいらない、二人で勝手にやるから」
「はっ」
バルトロが礼をして下がろうとすると「あ、そうだ」と言って引き止めた。
私をソファに座らせ、その向かいに移動しながら話す。
「ジョルジーニに言っておいたから大丈夫だとは思うが…
エセルバート殿がここにいらっしゃってるはずだから、後でお話し申し上げたいと伝えておいてくれ」
「畏まりました」
バルトロが出て行くと、エルヴィーノ様はグラスを取って私の方へ差し出した。
私は急いで、お酒の入った水差しを持ちあげてグラスに注いだ。
私のグラスに、エルヴィーノ様はジュースを注いで、自分のグラスを掲げる。
「では、再会を祝して」
私もグラスを持ち上げて、エルヴィーノ様のグラスに軽く触れ合わせる。
ひとくち、グラスの液体を口に含み飲み下して、エルヴィーノ様は微笑んだ。
「帰京してすぐに、一度ここへ来たんだ。
だけどお前はエセルバート殿と野営訓練?か何かに行っていて、今日は帰ってこないと。
驚いたよ」
厳しいだろあのお方は、と言いながらエルヴィーノ様はくっくと喉を鳴らして笑う。
「俺やアレクも昔めちゃめちゃ鍛えられて、何度も音を上げて逃げ出して捕まって。
だけど大事なことをたくさん教わった」
私はいろんな意味で激しく共感し、こくこくとうなずいた。
エルヴィーノ様はそんな私を見てまた微笑み、それから真剣な表情になって口を開いた。
「さてじゃあ、お前の兄の話をしようか」
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