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第九章 逃亡の終着点
12.それぞれのその後
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それからのことを語るべき言葉を、私はあまり多く持たない。
ダイアナ様は何もごまかすことなく、お父上である国王様にすべてを包み隠さず話して正々堂々と恋人と一緒に、エセルバート様に護衛され、グレート・スカイルランド国に帰って行った。
嫋やかでか細い外見に似合わずすごい度胸だと、私もアレク様も、そしてダリスカーナの民も感心したことだった。
紛争が起こりはしないかとの大方の危惧は外れて国王からは丁寧な謝罪の文章と大量のお詫びの品が届き、無事に国交は存続されることとなった。
ロレンシオ王子は兄王を説き伏せて本当にダリスカーナに留学してきて、アレク様やエルヴィーノ様をやきもきさせた。
しかし、しばらく経った頃、たまたまダリスカーナを通りかかって王宮に挨拶に来た、アレク様の従姉妹である他国の王太女に一目惚れし(惚れっぽいのよねこの人...)、すったもんだの挙句になんと婿入りしてしまった。
結婚後は女王となった妻を助けて、一途に愛を貫いたので良かったけど...
ヴァネッサは、しばらくは心を病んで寝たり起きたりの生活を余儀なくされたが、奥方様や近隣の住民達の心のこもった介護を受けてやがて少しずつ心身ともに回復していった。
ダリスカーナの新たな領土となった地方から来た明るく働き者の青年と結婚し、シエーラに農地を拓いて5人の子供を設けて幸せに暮らした。
ヘイデンスタムはアレク様と私の結婚式にも出席し、アレク様の生い立ちから書き起こした壮大な叙事詩を書き上げて、世界中から喝采を受けて後世にまで名を残す吟遊詩人となった。
その一大叙事詩には当然のことながら我がステファネッリ家の数奇な運命も書かれていて、私が大公妃になるまでのことも詳細に描かれたので、国民からは私も何だか可哀想な運命に翻弄されながら幸せをつかんだシンデレラのように思われてしまった。
そんなに酷い運命ではなかったと思うのだけど…
愚痴る私に、アレク様は「アレッサンドロの運命の女神なんだから、そのくらいドラマチックでなきゃな」と笑って言う。
レオ兄様は伯爵としてシエーラとビトリア=ガンティス州を立派に治め、元々肥沃で豊かな地方は大公国内有数の穀倉地帯となり、遠く首都の私達の食卓をも豊かにしてくれた。
何年かに一度はカルロッタお姉様や子供たち、それにお母様も一緒に首都に来て、サン=バルロッテ館やにぃ兄様の屋敷で会ったりした。
にぃ兄様とベアトリーチェお姉様はシエーラが落ち着くと首都に帰ってきて、トランクウィッロ家の屋敷で暮らした。
生涯、お子には恵まれなかったけれど、いつも仲睦まじくお互いをとても尊重していて、羨ましく感じることもあった。
エルヴィーノ様はラ・カドリナ国の王太子が即位して、情勢が落ち着くまで待ってから妻となったセレスティナ王女を伴って凱旋帰国した。
国軍の再編成に関して、我が国の将軍たるエルヴィーノ様が先頭に立たなくてはならず、副将軍やアレク様と頻繁に手紙のやり取りをしていた。
その経緯でエルヴィーノ様の近況は常に私にも報されていたのだけど、帰国したエルヴィーノ様は穏やかな表情になっていて、とても幸せそうで私は心から嬉しかった。
最終的に公爵に叙せられ、首都の城の近くに新たに大きな屋敷を築いて、元王女様のワガママに振り回されながらも4人の子供を設け、幸せな家庭生活を送った。
また、国防の面でも歴戦を勝ち抜いて国を守り抜き、近隣のみならず遠い諸外国からも恐れられる大将軍として名を馳せた。
私は結婚式の後すぐに身ごもっていることがわかり、秋の終わりに男児を出産した。
アレク様はとても喜んで、乳母に任せきりにせず私と一緒に育児をしてくれた。
宰相は孫のように(ひ孫かな?)目に入れても痛くないほど可愛がり、最期は第一王子に看取られて生涯を終えた。
その後、私達は更に王子ひとり王女ふたりを授かり、計四人の親となった。
アレク様と私はパーティや外交で国外に行くときにはもちろん、国内外視察や戦のときにも必ず一緒に行動した。
アレク様はいつでも私の意見を聞いて、それから周りに下問したので、私はなるべく公平で正大で思いやりを示すように心がけた。
いつしか国内のみならず諸外国の王侯貴族や庶民からも「一心同体大公夫妻」とか呼ばれたりしていたらしい。
リーチェが笑いながら教えてくれて、私は思わず苦笑し、アレク様は「その通りだからなあ、まあ褒め言葉と受け取っておこう」と私の頬にキスする。
アレク様は生涯に渡って愛妾を持つことはなかった。
私は常にお傍にいて、公私ともにただ一人の人として大切に愛し愛されて幸せな人生を送った。
そしてここに、私の逃亡顛末記は完了する。
ダイアナ様は何もごまかすことなく、お父上である国王様にすべてを包み隠さず話して正々堂々と恋人と一緒に、エセルバート様に護衛され、グレート・スカイルランド国に帰って行った。
嫋やかでか細い外見に似合わずすごい度胸だと、私もアレク様も、そしてダリスカーナの民も感心したことだった。
紛争が起こりはしないかとの大方の危惧は外れて国王からは丁寧な謝罪の文章と大量のお詫びの品が届き、無事に国交は存続されることとなった。
ロレンシオ王子は兄王を説き伏せて本当にダリスカーナに留学してきて、アレク様やエルヴィーノ様をやきもきさせた。
しかし、しばらく経った頃、たまたまダリスカーナを通りかかって王宮に挨拶に来た、アレク様の従姉妹である他国の王太女に一目惚れし(惚れっぽいのよねこの人...)、すったもんだの挙句になんと婿入りしてしまった。
結婚後は女王となった妻を助けて、一途に愛を貫いたので良かったけど...
ヴァネッサは、しばらくは心を病んで寝たり起きたりの生活を余儀なくされたが、奥方様や近隣の住民達の心のこもった介護を受けてやがて少しずつ心身ともに回復していった。
ダリスカーナの新たな領土となった地方から来た明るく働き者の青年と結婚し、シエーラに農地を拓いて5人の子供を設けて幸せに暮らした。
ヘイデンスタムはアレク様と私の結婚式にも出席し、アレク様の生い立ちから書き起こした壮大な叙事詩を書き上げて、世界中から喝采を受けて後世にまで名を残す吟遊詩人となった。
その一大叙事詩には当然のことながら我がステファネッリ家の数奇な運命も書かれていて、私が大公妃になるまでのことも詳細に描かれたので、国民からは私も何だか可哀想な運命に翻弄されながら幸せをつかんだシンデレラのように思われてしまった。
そんなに酷い運命ではなかったと思うのだけど…
愚痴る私に、アレク様は「アレッサンドロの運命の女神なんだから、そのくらいドラマチックでなきゃな」と笑って言う。
レオ兄様は伯爵としてシエーラとビトリア=ガンティス州を立派に治め、元々肥沃で豊かな地方は大公国内有数の穀倉地帯となり、遠く首都の私達の食卓をも豊かにしてくれた。
何年かに一度はカルロッタお姉様や子供たち、それにお母様も一緒に首都に来て、サン=バルロッテ館やにぃ兄様の屋敷で会ったりした。
にぃ兄様とベアトリーチェお姉様はシエーラが落ち着くと首都に帰ってきて、トランクウィッロ家の屋敷で暮らした。
生涯、お子には恵まれなかったけれど、いつも仲睦まじくお互いをとても尊重していて、羨ましく感じることもあった。
エルヴィーノ様はラ・カドリナ国の王太子が即位して、情勢が落ち着くまで待ってから妻となったセレスティナ王女を伴って凱旋帰国した。
国軍の再編成に関して、我が国の将軍たるエルヴィーノ様が先頭に立たなくてはならず、副将軍やアレク様と頻繁に手紙のやり取りをしていた。
その経緯でエルヴィーノ様の近況は常に私にも報されていたのだけど、帰国したエルヴィーノ様は穏やかな表情になっていて、とても幸せそうで私は心から嬉しかった。
最終的に公爵に叙せられ、首都の城の近くに新たに大きな屋敷を築いて、元王女様のワガママに振り回されながらも4人の子供を設け、幸せな家庭生活を送った。
また、国防の面でも歴戦を勝ち抜いて国を守り抜き、近隣のみならず遠い諸外国からも恐れられる大将軍として名を馳せた。
私は結婚式の後すぐに身ごもっていることがわかり、秋の終わりに男児を出産した。
アレク様はとても喜んで、乳母に任せきりにせず私と一緒に育児をしてくれた。
宰相は孫のように(ひ孫かな?)目に入れても痛くないほど可愛がり、最期は第一王子に看取られて生涯を終えた。
その後、私達は更に王子ひとり王女ふたりを授かり、計四人の親となった。
アレク様と私はパーティや外交で国外に行くときにはもちろん、国内外視察や戦のときにも必ず一緒に行動した。
アレク様はいつでも私の意見を聞いて、それから周りに下問したので、私はなるべく公平で正大で思いやりを示すように心がけた。
いつしか国内のみならず諸外国の王侯貴族や庶民からも「一心同体大公夫妻」とか呼ばれたりしていたらしい。
リーチェが笑いながら教えてくれて、私は思わず苦笑し、アレク様は「その通りだからなあ、まあ褒め言葉と受け取っておこう」と私の頬にキスする。
アレク様は生涯に渡って愛妾を持つことはなかった。
私は常にお傍にいて、公私ともにただ一人の人として大切に愛し愛されて幸せな人生を送った。
そしてここに、私の逃亡顛末記は完了する。
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続きは書かれないのですか?面白いのに。。。
(⁎⁍̴̆Ɛ⁍̴̆⁎)(⁎⁍̴̆Ɛ⁍̴̆⁎)(⁎⁍̴̆Ɛ⁍̴̆⁎)
コメントありがとうございます!
お返事遅くなりすみません。
こんな拙い物語に過分のお言葉を頂戴し、感謝の念に堪えません。
本当に嬉しいです。ありがとうございます。
何とか…続けてエンディングまで書きたいと思っています。
少しずつでも更新するよう頑張りますので、生暖かい目で見守ってくださると幸甚に存じます。
最後までよろしくお願いいたします!
更新をありがとうございます~♪
次の続きを楽しみにワクワクしながらお待ちしています。
素敵な物語を有難うございます。
感想ありがとうございます!
とてもとても嬉しいです!
頭の中に次の展開は決まっていても、それを文章化するというのは、作者のような文才のない偏差値もIQ も地を這っているような人間には至難の業で…
毎日うんうん唸りながら書いております(誰も頼んでねえよ、というツッコミは無しで)。
それを一気に解消したばかりか、天にまで押し上げてくださるhiyo様のコメント、本当にありがたいです。
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あと少しお付き合いいただければ、幸いに存じます。
更新ありがとうございます!
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