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第一章 地下大都市トウキョウ
4.啓司
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混雑のピークを迎えた食堂に遠夜と貴彦が入っていくと、少しざわついている気がした。
貴彦は何げなくやり過ごしているようだが、遠夜はなんとなく違和感を覚えた。
あまりいい空気感じゃない。
なんだろう、何かの通達があった後のようだ。
成人たちがそこここで声を潜めて話している感じ。
声高ではないのが、却って不気味さを感じる。
定食を取り、やっと空いている席を見つけて二人で向かい合って座る。
これは不味いこれも不味いと文句ばかり言う遠夜を貴彦がなだめながら食事する。
いつもの夕食の風景に、近づく人影があった。
遠夜は後ろから近づいてくる大きな威圧感に、思わず首をすくめた。
思ったより早かったなぁ…
「遠夜、もう終わったのか?
終わるまで食うなと言っておいたはずだが」
遠夜の真後ろに立った少年は凍るように冷たい声で遠夜に話しかける。
「・・・・・・」
遠夜は首をすくめたまま声が出ない。
怖すぎる。
「え、まだ終わってなかったのか…」
貴彦は呆気にとられたように言って慌てて少年に弁解する。
「啓司、僕が誘ったんだよ。
遠夜はまだやるつもりだったんだから、その…」
「貴彦が遠夜の精神状態を読まずに誘うわけがない。
思い切りサボってただろう」
冷静に正確に看破した。
「さっさと食え!戻って仕事しろ!」
一喝され、遠夜は急いで食べ始める。
くっそ~、なんで俺はいつもこいつの言うなりなんだ!
冷静になって考えてみると不思議なのだが、遠夜はなぜかいつも啓司には逆らえない。
このトウキョウでは異端児中の異端児の自分が。
遠夜の隣の席が空き、啓司はそこに座って向かいの貴彦の方へ身を乗り出して声を潜めて言った。
「あの話、本決まりらしいぞ」
途端に端正な貴彦の顔が曇る。
「そうか…可哀相に。
属性は?」
「ブレインだ」
「珍しいな。
ブレインが発覚しないとは」
「特殊なギフテッドだったみたいだ。
サイキックでもあるらしいな」
「…ふうん…」
「貴彦の仕事が増えるな」
貴彦がフォークを持ったまま考え込み、啓司は気遣うように言葉をかけた。
そのやりとりに遠夜は納得できず、食べる手を止めて二人を見た。
啓司は遠夜以外の人間には極めて人間的にふるまうのだ。
気遣いの人、と言われているらしい。
啓司の言葉に「いやいや」と貴彦は本心から言う。
「遠夜に比べれば、誰でも素直ないい子ちゃんだよ」
「ちょっとそれどういう意味」
ぼそっと遠夜が呟く。
「言葉通りの意味だ!
とっとと部屋へ戻れ!」
啓司の雷が落ちる。
へえへえ。
遠夜はそそくさと夕食を済ませると席を立った。
「遠夜、終わったら連絡くれ。
話がある」
啓司が後ろから声をかけてきた。
「あー終わったら。
そんで気が向いたら」
遠夜は振り向かず精一杯の反抗を試みる。
また何か言われるかなと背後を伺うと、啓司は貴彦に何事か話しかけている。
貴彦が目線を上げ、こちらをちらっと見て微笑んだ。
『頑張って、また後でね』
貴彦の声が頭の中に直接響いてくる。
へえへえ。
遠夜は心の中で返事をして部屋に向かって歩き出した。
貴彦は何げなくやり過ごしているようだが、遠夜はなんとなく違和感を覚えた。
あまりいい空気感じゃない。
なんだろう、何かの通達があった後のようだ。
成人たちがそこここで声を潜めて話している感じ。
声高ではないのが、却って不気味さを感じる。
定食を取り、やっと空いている席を見つけて二人で向かい合って座る。
これは不味いこれも不味いと文句ばかり言う遠夜を貴彦がなだめながら食事する。
いつもの夕食の風景に、近づく人影があった。
遠夜は後ろから近づいてくる大きな威圧感に、思わず首をすくめた。
思ったより早かったなぁ…
「遠夜、もう終わったのか?
終わるまで食うなと言っておいたはずだが」
遠夜の真後ろに立った少年は凍るように冷たい声で遠夜に話しかける。
「・・・・・・」
遠夜は首をすくめたまま声が出ない。
怖すぎる。
「え、まだ終わってなかったのか…」
貴彦は呆気にとられたように言って慌てて少年に弁解する。
「啓司、僕が誘ったんだよ。
遠夜はまだやるつもりだったんだから、その…」
「貴彦が遠夜の精神状態を読まずに誘うわけがない。
思い切りサボってただろう」
冷静に正確に看破した。
「さっさと食え!戻って仕事しろ!」
一喝され、遠夜は急いで食べ始める。
くっそ~、なんで俺はいつもこいつの言うなりなんだ!
冷静になって考えてみると不思議なのだが、遠夜はなぜかいつも啓司には逆らえない。
このトウキョウでは異端児中の異端児の自分が。
遠夜の隣の席が空き、啓司はそこに座って向かいの貴彦の方へ身を乗り出して声を潜めて言った。
「あの話、本決まりらしいぞ」
途端に端正な貴彦の顔が曇る。
「そうか…可哀相に。
属性は?」
「ブレインだ」
「珍しいな。
ブレインが発覚しないとは」
「特殊なギフテッドだったみたいだ。
サイキックでもあるらしいな」
「…ふうん…」
「貴彦の仕事が増えるな」
貴彦がフォークを持ったまま考え込み、啓司は気遣うように言葉をかけた。
そのやりとりに遠夜は納得できず、食べる手を止めて二人を見た。
啓司は遠夜以外の人間には極めて人間的にふるまうのだ。
気遣いの人、と言われているらしい。
啓司の言葉に「いやいや」と貴彦は本心から言う。
「遠夜に比べれば、誰でも素直ないい子ちゃんだよ」
「ちょっとそれどういう意味」
ぼそっと遠夜が呟く。
「言葉通りの意味だ!
とっとと部屋へ戻れ!」
啓司の雷が落ちる。
へえへえ。
遠夜はそそくさと夕食を済ませると席を立った。
「遠夜、終わったら連絡くれ。
話がある」
啓司が後ろから声をかけてきた。
「あー終わったら。
そんで気が向いたら」
遠夜は振り向かず精一杯の反抗を試みる。
また何か言われるかなと背後を伺うと、啓司は貴彦に何事か話しかけている。
貴彦が目線を上げ、こちらをちらっと見て微笑んだ。
『頑張って、また後でね』
貴彦の声が頭の中に直接響いてくる。
へえへえ。
遠夜は心の中で返事をして部屋に向かって歩き出した。
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