三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第十二章 終わらない物語

4.変則・三日夜の餅

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皆が席に着いたのを見計らい、主上が咳払いして、低く艶のある声で話し出す。
 
 「では、治部卿と月子姫の三日夜の餅の祝いの会を始めよう。
 皆、昼から準備をしてくれてありがとう。
 まあ、普通ではあり得ない三日夜の餅の儀式だが…
 この二人ならではの祝い方ということで」

 まったく、あたしも元信様もイジられ倒してるよね。
 もうこれ一生続くんかな。

 ま、それも良いか。
 誰にも構ってもらえない淋しさは、あたしが一番よく知っている。
 無関心ほどつらいものはない。

 「乾杯…といきたいところだが。
 今宵は、酒は無しだ」

 えーっ?!という不満そうな声が上がる。

 「月子姫の話を聞くのに、素面で居ないとな。
 また凄い話のようだから」
 主上はくつくつと笑いを零す。

 ああ…と餅撒きに行った面々は頷く。
 「月子姫に何かが乗り移ったのかと思いました。
 篝火を背に堂々と宣言なさる姿、カッコ良かったです。
 我らも何かをしなければと思わせられた」

 蔵人頭様が言うと、東宮が「イヤ、もともと物の怪憑きの月子姫だからな。本領発揮ってとこだろう」とまぜっ返す。
 
 こーのやろー!
 目の前の餅を投げつけてやろうか!

「ともあれ、治部卿と月子姫夫妻に幸あらんことを」
 主上が良く響く声で寿ぎの言葉を紡ぎだす。
 皆が拍手で唱和する。

 元信様とあたしは、深く頭を下げる。
 よく考えるとめっちゃ恥ずかしいんだけど(だって、三日連続で同衾どうきんしましたっていうことを皆さんの前で公言しているようなものでしょ)、それこそ皆さんの気持ちが嬉しいからさ。

 手を合わせ「いただきます」と言って箸を取る。
 さっきの餅撒きで見た、飢えた人たちが頭を過《よ》ぎる。
 あたしはこうやって、美味しいものを毎日お腹いっぱい食べられる、そのことに感謝しよう。

 東宮が言っていたように、絡み餅やお雑煮がある。
 その他に梅の実を刻んだ甘いソースに和えたものや、味噌を蜂蜜でペースト状にしたソースをかけたもの、小豆餡と枝豆のずんだ餡もある。

 美味しい…
 あたしはひとつひとつ口に運んで味わった。

 「さすが月子姫の育てた厨司長だな。
 珍しくて美味しいものばかりだ」
 兵部卿様が目を見張って言い「我が家の厨司長にもご教示いただきたい」と穏やかに微笑む。

 「そうだ、月子姫にお伺いしようと思っていたのです」
 相変わらずロボちっくな参議様が、ぎくしゃくとあたしの方を向いて言う。

 「何でございましょう?」
 あたしは箸を置いて、お餅を飲み込む。

 「四日後の庚申待には、どのような催しをなさるのですか?
 私はもう、楽しみで仕方ないのです。
 妻にも土産話をせがまれて居りましてね」
 カクカクという効果音が聞こえてきそうな口の動きで、堅っ苦しく述べる。

 「あ、私も聞きたかった!
 夜通しですからねえ、蔵人頭殿や左近衛中将(義光)・右近衛中将(伊靖君)とも何か面白いことはないかと考えようとしたのですが、やはりいつもと同じようなものばかりでね」
 左衛門督様が元気よく笑って言う。

 ああ…うーん。
 考えてることは、あるにはあるんだけど。
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