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しおりを挟む「ミリアリア様、おはようございます」
ううーん、もう朝かー。昨日、慣れない調べ物をして頭を使ったせいか、まだちょっと眠い。
「朝食は、アガルト様が食堂に来てくださるそうですよ」
そうだった! お兄様を朝食に誘ったんだった。
「ライザ、支度をお願い」
急いで支度をして、食堂へ向かう。
食堂の中に入ると、既にお兄様は着席されていた。
「おはよう、ミリー。どこに座ればいいか分からなくて、ここに座ったけど大丈夫かな」
「おはようございます、お兄様。お席はそこで大丈夫ですよ」
いつもは、私が座っている席。お兄様は少し居心地悪そうに座っているけど、本来そこはお兄様が座るべき場所だから否定しない。私はお兄様の隣の席に着く。
次々と、朝食が運ばれてくる。
「ミリーは昨日何をしていたの? 全然見かけなかったけど」
「昨日は、図書館などで色々調べ物をしていました」
「調べ物?」
「はい!」
「そっか。お昼や夜も一緒にご飯食べれるかな、と思っていたけど見かけなかったからさ……今日も、朝ご飯に誘ってもらえて嬉しかったよ」
あぁー、違うんですお兄様。本当は、昨日お昼も夜もご一緒したかったのに調べ物が……
でもでも、嬉しいって思ってもらえて良かった。
「お兄様、これからはずっと食事を一緒にしましょう」
「えっと、いや、でも……今日は、お父様たちがいないから食堂に来たけど……」
そう言った表情は悲しそう。
私でさえ、あの噂を聞いたことがあるんだもの。
お兄様だって、聞いて気にしているはず。
「大丈夫です。大丈夫ですから!」
お兄様は、曖昧に笑うだけ。
「そうだ、ミリー。今日も調べ物で忙しいのかい?」
「いいえ、特になにもないはずです。病み上がりなので、今日まではお勉強もマナーの先生もお休みにしてもらっていましたから」
「それなら、この後一緒に訓練場に来るかい? エドが来るよ。今度、エドに謝りたいって言ってただろう。昨日も来ていたからミリーを探したんだけど、どこにいるか分からなくて」
「はえっ。エドワルド様が今日いらっしゃる!」
「うん、やっぱり止めておく……?」
「いえ、行きます! 行かせてください!」
「うん、それなら30分後にミリーの部屋に迎えに行くね。一緒に行こう」
「はい! お待ちしております」
自室に戻ると慌てて鏡の前で確かめる。
「ど、どうしましょうライザ。まだ、心の準備が出来ていないわ! それに、このドレスで大丈夫かしら。変ではない?」
「??? 大丈夫ですよ、いつも通りお可愛らしいです。その薄ピンクのドレスもよくお似合いです」
「でもでも、このドレス、ヒラヒラってしてるでしょ。訓練場には不似合いだと思うの。今からでも、もうちょっと簡素なドレスに着替えたほうがいいかしら。あぁ、でもエドワルド様に会うのなら可愛いドレスで会いたいわ。うーん、どうしたらいいと思う、ライザ」
「その、恐れながら。最近のミリアリア様は、エドワルド様を気にし過ぎではないでしょうか……」
「え、そ、そうかしら?」
そうよね、今までと態度が違いすぎて戸惑うわよね。むしろ、怪しさ満点よね。
でもね、もうこれ以上エドワルド様に嫌われたくないの。少しでも、印象良くしたいの! そして、あわよくばエドワルド様と将来結婚……げふんげふん。
ドレスをどうしようかとうんうん悩んでいるうちに、もうお兄様が迎えに来てしまった。
あーん、しょうがないこのままで行くわ。
訓練場へお兄様と向かうと、何人かの騎士たちが既に訓練を始めていた。その中に、エドワルド様もいらっしゃった。
ここへ来る途中、エドワルド様に会うのだと思うと緊張してしまって、お兄様になにか話しかけられていても、言葉が右から左へと通り過ぎていってばかりだった。
あぁ、エドワルド様がいらっしゃる。
はぁー、なんて素敵なんでしょう。うっとりと見つめていると、お兄様が声をかける。
「エド! ちょっとこっちへ来てくれるかい」
エドワルド様は、こちらを振り向くと私がいることに怪訝な表情をした。そのまま、こちらへ歩いてくる。
「おはようございます、アガルト様、ミリアリア様」
「うん、おはよう」
私が、モジモジとしているとお兄様に背中をそっと押される。
「ほら、ミリー」
「あ、えっと……」
謝りたいのに、緊張して言葉が出てこない。
「先日は申し訳ありませんでした」
エドワルド様が深く頭を下げる。
え、なんで? 私が謝ろうと思ったのに、先に謝罪されてしまったと。
「あ、そんな! お顔を上げて。エドワルド様が謝らないでください! あれは私が悪くて! むしろ、私の方こそごめんなさい」
負けじと深く頭を下げる。
「お兄様の静止を振り切って、魔法を暴走させたのは私なのに……助けてくれたお兄様とエドワルド様に怪我を負わせてしまって本当にごめんなさい」
ちらりと、エドワルド様のお顔を見上げるとポカンと口が空いていらっしゃる。
あ、その顔可愛い。いつも、どこかキリッとしていて、人を近づけさせないような雰囲気のエドワルド様にしては珍しい。
私に謝られたのが予想外だったのだろう、「あぁ、えぇ、はい。俺、いや、私は大丈夫ですから」と返された。
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