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しおりを挟むさて、昨日調べた資料と肖像画は今は私の部屋にある。
ルシウス様の肖像画は、瞳の色以外ほぼお兄様とうり二つ。
つまりイケメンの肖像画が私の部屋にある。目の保養があるっていいわね。
くふくふ、と満足げに笑っているとライザが紅茶を入れてくれた。
「その資料と肖像画を、両陛下にお見せするのですか?」
「えぇ、そうよ。これで誤解が解ければきっといい方向にいくと思うの」
きっと、上手くいくわ。いいえ、上手くいってみせる。
そうじゃないと、お兄様の状態は変わらないままになってしまう。
「晩ご飯の時に、食堂に持って行くの手伝ってちょうだいね」
「かしこまりました。上手くいくといいですね」
念の為、どのタイミングで話し始めて、どう話そうとか色々とライザにも協力してもらってシュミレーションしていたら、もう晩ご飯の時間になっていた。
嘘でしょ、まだまだシュミレーションは不十分だよ。私、臨機応変とか苦手だから、今のうちにあらゆるパターンを試したかったのに。
でも、そろそろ食堂へいかなきゃ。その前に、お兄様のお部屋に寄ってからにしましょう。きっと、お兄様は自分では食堂に行ってない気がするもの。
案の定、お兄様の部屋に行ってみると部屋にいらっしゃった。
「もう、お兄様、私と約束したじゃないですか」
「あ、いや、これは、今から行こうと……」
「さっき、お兄様の分のお食事を部屋に持ってきてた者には、食堂で食べますって伝えましたからね」
「あ、うん」
渋々といった感じで一緒に食堂まで移動する。
「ねぇ、ミリー。なんだか色々持ってるみたいだけど、それはなんだい?」
「うふふ。それは秘密です」
そう、とお兄様は不安そうなお顔に。あ、もしや私が何か企んでると思われたかしら。違いますよ! あ、いや企んではいるんですけど、お兄様にとってマイナスなことではないですからね。
食堂へ着くと、お父様もお母様もまだいらっしゃらない。
まじか。もしかして、まだ帰ってきてない?
私のシュミレーションでは、私が色々持ってきているものにお父様達がそれは何? って、所から始まるはずだったのに。
うわーん、私イレギュラーには弱いのよ。どうしましょう。
しかし、お兄様はどこかほっとした表情をされている。
先に席につくと、お父様の侍従が食堂へ入ってきて「先ほど、両陛下が帰ってこられました。もうしばらくお待ち下さい」と伝えに来た。
よしよし。作戦は明日以降になるかもと思ったけど、今日決行できそうね。
今のうちに、シュミレーションをし直す。
隣りに座っているお兄様は、ソワソワし始めたのが分かった。
多分、10分くらいだろうか。それくらいで、お父様達が食堂へ入ってこられた。
椅子からおりて、お帰りなさい。お父様、お母様。と、ちょこんと礼をする。お兄様も同時に、礼をした。
お父様は最初部屋に入ってきて、お兄様がいることに少し驚いた表情になったけど、ああ、ただいま、と笑顔で返す。
お母様は表情は変わらず、いい子にしていましたか? と私だけに聞いてくる。
ぐぬぬ。お兄様にも聞いて下さいよ! あー、お兄様がショボンとしたのが感じ取れる。
席につきなさい、とお父様に言われてみんなが席につこうとした。やるなら、今でしょ。
「お父様! お母様! お二人にお見せしたいものがあります!」
「うん? 見せたいもの?」
お父様はコテンと首を横に倒す。
こくん、と頷きライザを振り返る。
「こちらを見てください」
ライザに持ってきてもらった肖像画の布を取り払う。
「「これって」」
お父様とお母様は驚いていたし、お兄様に関してはギョッとした顔になった。
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