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しおりを挟む「お父様とお母様は、この肖像画、誰だと思いますか?」
誰って……と、二人顔を見合わせて「アガルトだろ?」と、期待通りの反応をしてくれる。
「いつの間にアガルトの肖像画を描いてもらったんだい?」
「ち、違います。僕は肖像画なんて、描いてもらってません!」
お兄様は、自分が肖像画を描いてもらったなんて思われるのが嫌みたいで、全力で否定している。
「ここ、ここの文字を読んでください」
肖像画の右端に書いてある、文字を指差す。
「「「ルシウス・フォン・シュツット」」」
三人が声を揃えて言う。
「はい! その通りです! これはお兄様ではなく、ルシウス様という方です」
「いや、それにしてもアガルトにそっくりだろう」
「でも、よく見ると絵の方とお兄様とは瞳の色が違うでしょ」
本当だ、と頷くお父様。
「私、たまたまこの肖像画を見つけたんです。お兄様にそっくりで驚きました。それで色々調べてみたんです。そしたら面白いことが分かりました」
「ほぉ、それは?」
「家系図を調べたらルシウス様という方は、三代前の王弟様でいらっしゃいました。お父様のひいお祖父様の弟ですね」
「そうなのかい?」
お父様が知らないのも無理はないと思う。王族として、ある程度歴史を学ぶし、歴代の王については名前を覚えさせられるけど、何代も前の王弟や王妹などはそこまでは覚えさせられないから。
「ルシウス様はとても優秀な方だったらしいですが、その見た目の為に遠方の国へ王配としてこの国を出ていかれたそうです。ですが、当時の王との兄弟仲はとても良く、王は弟が遠い異国の地へ行ってしまうのが寂しくてこの肖像画を書かせたそうです。図書館にあった王の伝記にもそのことが書かれています」
図書館から持ってきた他の資料もお父様に見せる。
「どれ……確かに」
「また、他にもお兄様やルシウス様のような外見で生まれてきた王族は度々いるようです。なんでも、600年ほど前の王がユニーカ大陸出身の方を妻に迎えたそうですよ」
「ユニーカ大陸だと!」
私もその記述を見つけた時は、とても驚いた。
ユニーカ大陸は私達がいる大陸から、魔法の力を使った船でも半年はかかるくらい遠い大陸だ。
たまに海に近い国だと、ユニーカ大陸出身の人がいたりもするが、私達の国は海からだいぶ離れているので滅多に会うことなんてない。
このユニーカ大陸の人たちの見た目って、まさにお兄様みたいな目が大きくて、鼻が高くて、はっきりとした顔立ちの方々ばかり。
前世を思い出した私からすると、美男美女しかいない大陸って感じ。
「はい、その女性はリア様と言うそうです。ユニーカ大陸から渡ってきた移民だったと。そのリア様を妻に迎えたのが当時まだ王子であったオーガスト様。後のオーガスト王ですね。オーガスト王はとても変わったお方だったみたいです。物心つく頃から、周りから絶世の美男と呼び声が高かったのに自分の見た目が嫌いだったそう。そして、目が大きくてお胸もお尻も大きい女性が好みだったみたいです」
「胸と尻……」
びっくりですよね! でも、オーガスト様の伝記に嫁にするなら胸と尻がでかい子がいい! って、はっきり書かれているんだもの。
まったくこれだから男って。と思ったけど、この国ではお胸もお尻も小さいほうが好まれるから、やっぱり周りの人からは変わった趣味の人だと思われていたんだろう。
オーガスト様は第三王子で、王位継承権はあるけどそれほど高くなかったことで、ふらふらと放浪癖があったみたい。
それでユニーカ大陸から来た好みドタイプなリア様と港町で運命の出会いをし、結婚された。
第三王子でまぁ、自分には王位がまわってこないだろうと国には内緒で結婚しそのまま港町で生活していたら、当時の王と第一王子と第二王子も事故と病気で亡くなってしまって、自分に王位が巡ってきてしまって、さぁ大変。
色々揉めたけど、リア様を王妃として認めてくれないなら王位継承権を放棄するって言ってなんとかかんとか、リア様を王妃として認めてもらったんだって。
お二人の子どもは、みんなオーガスト王に似た子たちばかりで王はすっごくがっかりしたって書いてあった。
でも、隔世遺伝なのか孫はリア様に似て目が大きくてはっきりした顔立ちだったらしい。
それからは、何代かに一人か二人ほど、ユニーカ大陸出身のようなお顔立ちの方が隔世遺伝で生まれてきていたんだって。
そういった方達は王位を次ぐ立場ではない人が多かったのか、他国に婿に行ったりお嫁にいった人がほとんどだった。
そんなわけで、我が王家にはユニーカ大陸人の外見を持った子どもが時々生まれるそうだ。
今までは定期的にその見た目の子が生まれてくることもあって、外見での差別はあったみたいだけど、不義の子のような扱いはされていなかった。
でも、お兄様は珍しく何代もあけてユニーカ大陸人の見た目で生まれてきてしまったために、あらぬ疑いがかけられちゃったみたい。
そういった事を、私はみんなに説明した。
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