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しおりを挟むなんで? どうして? こんな事になっているの?
お父様なんて大っ嫌い。
あれからまったく、まっっったくといっていいほど何も進展せずにお兄様達は王立学園を卒業してしまった
そうつまりこの三年、私の想いは届かなかった。
去年あたりからはあまりの進展のなさに流石に焦って、直接的な態度を取っていたのに。
お父様達には毎日のように結婚はエドワルド様としたいと言っていたら、すっかり冗談だと思われて流されてしまった。
周りの人たちにも結婚するならエドワルド様がいいわ、と話していたのにこれも冗談だと思われていた。
また直接、エドワルド様にお慕い申しあげていますとなりふりかまってられずにお伝えしたら、『恐縮です。でも、むやみにそのようなことを言ってはいけませんよ。大抵の男は勘違いしてしまいますから』だって。
エドワルド様のご両親にも、リンダ様ではなくて私がエイガ公爵家に嫁ぎますよと伝えたら『もう昔のことは気にしなくてもいいのですよ。そこまで感謝していただけるなんてありがとう存じます』って。
もう、全く話しが通じなくてむしろ怖くなってきたくらいだもの。
なぜ、お父様のことが大っ嫌いかって?
さっき、晩餐の席で『そうそう、エイガ家のエドワルドくんの婚約の承認を先程したんだよ。これでエイガ家も安心だね』なんて言いやがったのです。
私が、何度も何百回も結婚はエドワルド様としたいって言ったのに! 結婚相手は、よほどのことじゃない限り私の意にそうようにするって言ってたのに!
私はあまりのショックに、お父様なんて大っ嫌い! って、飛び出して自分の部屋にこもっている。
ひどい、私が今まで勉強もマナーも魔法も頑張ってきたのに。それもこれも、ゆくゆくはエドワルド様の妻に相応しいと思ってもらうためだったのに。
もう、何もかもやる気が出ない。
一方、その頃食堂では。
ミリアリアの放った言葉に呆然としているサイフォルト王がいた。
「え、今、ミリーが『お父様なんて大っ嫌い』って、言ってないよね? 幻聴だよね?」
「いえ、確かに言っていましたね。だから、何度も申し上げたではないですか。ミリーの言葉をきちんと聞いてくださいって。昔から、ミリーはエドのことが好きだったんですよ」
父上も母上もようやく、本当にようやく、ミリアリアはエドワルドを好いているとやっと理解した。
「いや、だって、まさか!」
「アリサ嬢という私のことを好いてくれる奇特な人がいるんです。ミリーが、エドの事を本当に好きになったっておかしくないですよ」
両親はあまりのことに言葉を失う。まさか冗談だと思っていたことが本心だったとは。
その場にいた使用人たちも、内心では『嘘だろッッ。ミリアリア様は本気だったのかよ』と驚いていたが、仕事中なのでそんな素振りはまったく見せない。
「あ、え、じゃぁ、エドワルドくんの婚約を承認したのはまずかったかな」
「そりゃぁ、まずいに決まっていますよ」
さぁーっと、顔を青ざめさせて席を離れてミリーを追いかけて行ってしまった。
「まさか、ミリーがエドワルドくんの事を本気で好きだったなんて……全然思わなかったわ……」
「僕も最初は本気にしていなかったんですけどね、学園に入学する前に『エドワルド様に女を近づけさせないでください』って、お願いされましたし、ミリーの言動をちゃんと振り返って、やっと気づいたんです」
「そうね、確かにずっと結婚相手はエドワルドくんとって言ってたのに……なぜ、冗談だと思ってしまっていたのかしら。どうしましょう……」
「正直、どうしようもないのでは? もう、エドの婚約は承認してしまったのでしょ?」
「はぁ……困ったわ」
ベッドの上で泣きじゃくっていると、部屋の外でお父様がドンドン扉を叩いている。
「ミリー、済まなかった」
だんまりを決め込む。
ドンドンと扉を叩く音がうるさくて、ライザに帰ってもらうようにお願いする。
いくらお父様だからって簡単に許さないんだから。
ライザが今は動揺しているので、そっとしておいてあげてください。って、お父様を追い返してくれた。
もうやだもうやだ。絶対にお父様のこと許さない。
その後、三日三晩部屋の外には出ずに泣き明かして、ご飯も全然手につけなかったことで、これは本当に取り返しのつかないことをしてしまったとお父様達は気づいたみたい。
毎日のように、済まない。どうしたら許してくれる? ご飯はちゃんと食べなさい。心配だよ。って、部屋の前まで来ていたけど、絶対に許さないんだから。
しかも、事もあろうに『エドワルドくんの婚約を解消するように働きかけるから』なんて言い出したりもして。
バカじゃないの。王族が私的な理由で、せっかく整った婚約を解消させようとするなんて、そんなことあっていいわけないじゃない。
それをそのまま扉の向こうのお父様に叫ぶ。
お父様はショボショボとその場をあとにしたらしい。
ライザが陛下も深く反省されているみたいですよ、って言ってきたけどそんなの知るもんですか。
お父様が来ていないタイミングで、お母様が来てくれたけど会おうとしなかった。
お母様も本当にごめんなさい、って言ってくれたけどもうどうにもならないもの。
いいわよね、お父様とお母様は相思相愛で結婚したんだもの。
私はもう絶対に無理なのに。
お兄様にも凄く謝られた。
「ミリー、ごめんね。もっと父上達にミリーは本気なんだよって言えばよかった」
「いえ……それを言うなら、私ももっと分かってもらうように言い続ければよかったのです」
「もう、三日もご飯を食べていないでしょ。サンドイッチ、持ってきたから一緒に食べよう」
確かに流石にお腹が空いてきた。時々、ライザがご飯を運んでくれてきてくれたけど、全然喉を通らなくて食べていなかった。
扉を少しだけ開けて、お兄様の他に誰かいないか様子を見て、中に入ってもらう。
サンドイッチを受け取り、モソモソと食べ始める。
「今回は残念だったけど、エドの他にも良い人がいるよ」
「エドワルド様以上の人なんていません……」
「うん、そうかもしれないね。でも、このことが原因でミリーが病気になったりしたら、大騒ぎになってしまうよ。とにかく、体調のことも心配だからご飯は食べにおいで」
コクンと頷く。王の承認を得たキチンとした婚約なのだ。もうどうしようもないのだから、今回のエドワルド様達の婚約にケチをつけるわけにもいかない。それに、そもそもエドワルド様にはなんとも思われていなかったんだもの。
その日の夜から家族の食事に顔を出すようにしてお父様からたくさん話しかけられたけどガン無視だ。
「ミリー、次こそは、次こそはちゃんとミリーの話しを聞くからね」
ふん、どうせまた冗談だと決めつけるに決まっているし、エドワルド様以上の人なんていないのに。
「結構です。エドワルド様と結婚できないのなら、誰と結婚しようと同じですから。政略結婚で構いません。どこの家でも、どこの国でも文句はありませんので好きにしてくださいませ」
「だ、大丈夫。次こそは絶対に。だから、相思相愛の人と結婚しなさい」
ニコッと笑うお父様。
「エドワルド様の他は好きになれないと思うので、その場合は私は一生結婚できませんね」
ピシャリと言い返す。
お父様もお母様も、オロオロしちゃって。
行儀は悪いが、さっさと食べてさっさと部屋へ帰る。
ちなみに、今回の一件は箝口令のようなものがしかれているらしい。
せっかく息子の婚約が整って嬉しそうにしているエイガ公爵夫妻の事を思ってのことだろう。
たとえ、あのリンダ様が相手だとしても結婚できるか怪しかったエドワルド様に婚約者が出来たんだもの。
その婚約者は私だったら良かったのに……
数日後には、私も王立学園に入学する。それまで、できる限りお父様に会わないようにしよう。
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