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しおりを挟む下校途中も家に帰っても、上の空だった。
父さんは帰りが遅いから、母さんと二人で夕飯を食べているときだった。
母さんはパートでの話やら、テレビに出ている男性アイドルの話やら喋っていたが、適当に相槌を打っていると、シュウ兄はそのままあっちで就職するつもりらしいと言い出した。
初耳だったが、まぁそうなんだろうなと思っていた。
俺も大学はシュウ兄がいる県の大学にしようと考えていたから別にいい。
だからこの夏、オープンキャンパスに行くがてらシュウ兄に会いに行こうとこっそり計画もしていた。
今日、木村と伊藤の二人に言われたことを思い出す。
シュウ兄、もしかして俺とは付き合いたくないのかな……実際、もし俺が高校にいる間に他に好きな人が出来たらどうするつもりだったんだろう……俺のことを好きと言ったあの時、実は他に気になる人でもいたのかもしれない。そんな、悪い想像ばかりしてしまう……
考えても仕方がない。会って、ハッキリさせよう……もし、シュウ兄が本当は俺と付き合うつもりがないのなら、大学も考えないと。
「気をつけてね」
「うん」
「シュウには、ほんとに連絡しなくて良かったの? どうせなら、シュウの部屋に泊めてもらえば?」
夏休み中、俺は二つの大学のオープンキャンパスに行く予定だ。一日違いの日程だったので、ホテルをとった。ニ日目に行く大学は、シュウ兄がいる大学だ。
「就活に卒論にアルバイトで、しかもオープンキャンパスも手伝ってるから、結局今年の夏も帰ってこれないんでしょ? 疲れてそうだしさ。邪魔しない方がいいかなって……」
「でも……せっかく、シュウがいる大学にも行くのに。教えてあげたら? いきなり会ったらビックリするんじゃない?」
「うーん……でも、学部も違うから会わないかもよ? まぁでも、ニ日目終わったらすぐ帰るつもりだったけど、もしシュウ兄に会えたら、予定変更してシュウ兄のところに泊めさせてもらうかも。シュウ兄が良いって言えば」
「そう。泊まることになったら、連絡いれてね」
わかった、と返事をして家を出た。
シュウ兄のゼミを探すのに、迷ってしまった。
昨日は第一志望の大学ということもあって、講義やゼミ、食堂など色々時間をかけて見学した。
今日来ている大学は第二志望なので、本当に見たいところだけ見て目ぼしいものは見終わったからシュウ兄を探していた。
いや、ここどこだよ。とウロウロしていたら、かすかにシュウ兄の声が聞こえた気がした。
声のした方に歩いていくと、やはりシュウ兄がいた。
後ろから声をかけようとして止まる。シュウ兄の側には、綺麗な女の人がいた。髪が長くて、女性にしては背が高め。見るからに、スクールカースト上位って感じの出で立ちだ。俺とは、正反対。やたらとくっついて、仲良さように話している。
「ねぇー、お願い。いいでしょ?」
「分かった、分かった。今度、うちに来たとき持ってけよ」
「ありがとう!」
そんな会話をしていたかと思えば、その女の人はシュウ兄に抱きついた。
なんだよそれ。やっぱり、そういうことかよ。声をかけるのも忘れて、二人が遠ざかるのをただ眺めていた。
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