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あの二人の様子を見て、すぐに帰ろうと思った。
でも、どうしても、俺との約束を最初から破るつもりだったのが許せなくて、シュウ兄にひとこと言ってやらないと気がおさまらない。
大学で話しをするのも憚られたので、シュウ兄のアパートで帰ってくるのを待つことにする。
もし、大学で会えなかった時のために、アパートの住所はメモってきていた。
アパートの二階の角部屋が、シュウ兄の部屋だった。
玄関前で待っていたが、夕方になっても、シュウ兄は帰ってこない。真夏の暑さと相まって、不機嫌さが増していく。
時々、近くのコンビニで飲み物を買いに行く以外は、ずっと帰ってくるのを待っていた。とっくにオープンキャンパスは、終わってるはずだ。あの人とどっかデートにでも行ったのかな……そして、そのままアパートに二人で帰って来たりして……そしたら、浮気者! と罵ってやろう。
男にそんなことを言われるシュウ兄をみたら、あの女の人は驚くかな。修羅場になったとしても知るもんか。もう、ここまで来たら、何時に帰ってくるか分からないが、話をするまで今日は帰らない。親には泊まっていくから、今日は帰らないと連絡した。
シュウ兄と話しをしたら、ネカフェかなんかに泊まろう。そして明日、始発の新幹線で帰って、志望校を変えるって親には相談しよう。シュウ兄がいる県の大学には行きたくない。
結局、シュウ兄が帰ってきたのは22時を少し過ぎた頃だった。想像していたような二人で帰ってくることにはならず、一人だ。
最初、シュウ兄は自分の部屋の前に誰かいることに気がついて警戒していたようだが、それが俺だと知ると驚いた顔に変わった。
「ハル、お前なんでここにいるんだよ!? てか、ずっとそこで待ってたのか?」
「……大学のオープンキャンパス。こっちの大学を受けようと思ってたから……シュウ兄に話したいことがあって待ってた」
アパートの他の住人は、おそらく帰省しているのか、誰とも会わなかったのが救いだ。こんな、時間に自分の部屋の前ではないが、ずっと立っている人がいたら不審に思われただろう。
俺の言葉を聞いて、シュウ兄は少し嬉しそうな顔をした様に見えたのは気のせいだろうか。
「こっちに来てるなら、連絡すればいいだろ。ずっと、外で待ってたなら暑かったろ。すぐには冷えないだろうけど、今からエアコンつけるしとりあえず入れば」
鍵を開け、部屋の中に入るように促された。玄関先で止まった俺を見て、シュウ兄は訝しげな顔をする。
「何してんだよ、突っ立ってないで早くあがれよ。てか、ほんと、来るなら言えよな」
「ごめん。話ししにきただけだから、終わったら帰るからここでいい」
「あ? 帰るって、お前、もう最終の新幹線も間に合わないだろ。お袋に、俺の部屋に泊まるって言ってねぇの?」
「泊まるとは言ったけど、シュウ兄の部屋とは言ってない。駅前のネカフェかどっかに泊まるからいい」
「は? ネカフェ?……てか、お前さっきから何怒ってんの?」
「…………」
「だんまりかよ。で、なに。話しって」
「浮気者」
「どういう意味だよ」
ほんとに意味がわからないらしい。
「そのまんまの意味。彼女できたなら、早く言えよ。俺が卒業したら。なんて言っておいて、ほんとは最初から俺と付き合う気なんかなかったんだろ! シュウ兄、こっちで就活してるって聞いたから、もしかして俺がこっちの大学受けるの期待してるのかなって、勘違いして、俺こっちの大学しか考えてなくて……俺だけ、早く一緒にいたいって思ってて、バカみてぇ」
「なに言ってんだよ。彼女なんているわけねぇだろ」
「嘘つくなよ。俺、見たもん……オープンキャンパス、今日シュウ兄のとこも行ったんだよ。シュウ兄探してたら、髪の長い女の人と仲良さ気に一緒にいてさ、『今度うちにこい』とかシュウ兄が言ったら、その人抱きついてたじゃん!」
「はぁ? そんなこと言ってな……」
否定の言葉を途中まで口にしたのに、考えこんだ表情になる。
「ほらな……」
「ちげぇよ。確かに、そんな感じのこと、あの時言ったかもしれないけど、それ誤解だから! そもそもあいつ、彼氏いるし。それでその彼氏は俺のダチ。誤解させたなら、悪い。でも、ほんとに違うから、説明させてくれ」
本当に……? 誤解? とりあえず、俺がこくん、と頷けば、シュウ兄はホッとした表情を浮かべる。
「玄関で話すのもなんだから、こっちこい」
感想
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