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ルイは風邪が治って今日から学校に登校してきた。
やっぱり、ルイがいると女の子たちが近寄ってこなくて楽だ。
「昨日は大丈夫だったか?」
ルイが昨日、自分が学校を休んだせいで、俺が女の子たちから付きまとわれたんじゃないかと心配して声をかけてきた。
「あー、まぁ、大丈夫だったかと聞かれたら、大丈夫ではなかったけど……まぁ、最終的には大丈夫だったかも」
「なんだよそれ。結局、どっちだったんだよ」
「やっぱ、ルイがいないとなぁ」
「おい、だからどっちだったんだよ」
昨日、シルバー家のアリアと話したことは内緒だ。
ルイが今日も休むなら、またあの温室に行こうと思っていたが無事に登校してきたから、『また来てもいいか?』なんて、彼女に聞いたが別に行かなくてもいいか。
いやいやいや、なんで俺、昼休みに温室に向かってんだ?
別に行かなくてもいいかなんて思ったはずなのに。
昼休みに近づくにつれて、俺はソワソワと落ち着きがなかったと思う。
ルイにどうしたんだと聞かれても適当に返事して、昼休みになった途端、俺は用事があるからとルイに告げてあの温室に向かっていた。
ルイにバレるわけにはいかないから、誰にも見つからないように注意して。
そっと温室に入ると彼女は既にいた。
今日は水やりはしていなくて、軍手をしてなにか作業をしているようだ。
「何してんの?」
チラと俺を確認すると「本当に来たのね」って。
「来てもいいっていったのは、アリアだろ」
なんだよ、来ちゃ悪かったかよと少し拗ねたような言い方をしてしまった。
彼女は目をパチパチさせて、名前……って口にした。
「なんだよ、あんたの名前アリアだろ。シルバー家の。俺は……」
「知ってる。ゴールド家のウィリアム」
「ああ、そりゃそうだよな。昨日あの女の子たちが言ってたわけだし」
「……」
「なんだよ。名前で呼んじゃ悪いかよ」
「いえ、悪くないわ。ウィリアム」
アリアに名前を呼ばれるとなんだかソワソワする。
「で、今日は何してんの?」
「小さい植木鉢から少し大きめの植木鉢に移してる」
「なんでそんな面倒くさいことしてんの」
「土を新しくして、必要なミネラルの補給と根の成長する場所を確保するの。老廃物とかも捨てるために」
「へぇー」
よく分からないが、成長するのに必要な作業なのか。
ずらっと並んだ鉢はまだ沢山ある。それをアリアが一つずつ、一人でやるのは大変そうだ。
俺も見様見真似で手伝ってみる。
「そう、そうして小さい鉢から出したら、少し土を落としてあげて。そしたら、大きめの鉢に新しい土が入ってるからそっちに植え替えるの」
所々でアドバイスが入り、それを聞きながら作業を進める。
そうやって二人で黙々と作業をして、ふと思う。魔法でちょちょいと出来ないのか?
「なあ、こういう地味な作業ってさ、魔法でちゃちゃっと出来ないの? それとわざわざこんな風に手をかけて育てるより、花を咲かせる魔法とかあるんじゃないの?」
そう疑問を口にしたら、アリアにはぁーっと長い溜息を疲れた。
「もしあなたが、一年努力して修得する事になる剣の技術があったとして、今すぐ魔法で努力もせずにその技術を修得出来ますって言われて嬉しい?」
なるほど、嬉しいとは思わないな。そんな努力もせず、一瞬で魔法によって手に入れたものは自分の技術とは言えない気がする。
「あぁ、なるほど。言いたいことは分かった」
そうして俺はまた黙々と作業に戻った。
「手伝ってくれてありがとう。ウィリアムのお陰で早く終わったわ。三日はかかるかと思っていたから」
「いや、別に。ここには避難させてもらってるから。その礼っていうか、なんていうか……」
最後はなんかモゴモゴとした言葉になってしまった。
その後も俺は適当に理由をつけては、温室に行くようになった。昼休みだけではなく、放課後も足繁く通っている。
ルイは昼も放課後も姿を消す俺を怪しんでいるようだが、アリアと会っていることはバレていないと思う。
気づいていたら、何かしら言われるはずだ。きっと、多分。
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