仲の悪かった金の一族と銀の一族は、一組のツガイによって運命が変わる

多賀 はるみ

文字の大きさ
7 / 10

6

 
 時が流れるのは早いもので、今日でこの学園を卒業する。

 温室でのひとときは、とても心地よいものだった。
 あそこでアリアに出会わなければ、俺はきっと一生シルバー家の事を誤解したままだっただろう。

 俺達が温室で過ごしていても他の奴らにまったくバレなかったのは、ルイやゼンがそれとなく人を来ないようにしてくれていたおかげだと今なら分かる。

 卒業式も無事終わり、クラスメイト達が別れを惜しんでいる中、俺はいつものように温室へ足を運ぶ。

 きっとアリアと気軽に話せるのも今日が最後だろうから、話がしたかった。
 別に今更好きだったとかそういう話じゃなく、温室にいることを許してくれたお礼と、ここで過ごした時間はとてもいい思い出になったと伝えたかった。

 約束はしていなかったが、アリアはきっといると思って温室に入ったが、そこには誰もいなかった。

 まぁ、約束なんかしてなかったからな……諦めて帰ろうと思い、温室を出ようとした時、走ってくる足音が聞こえた。
 足音のする方をジッと見ていると、その音の主はアリアだった。
 アリアも俺がいることに気がついたのか、ホッとした表情を浮かべたように見えた。

「もう、帰るの?」

「いや、ちょっと最後に温室を見ていこうと思って」

「良かった、なら最後のお世話と手伝いをお願いしてもいいかしら」

「お安い御用」

 アリアと最後に話したかったから来たのだとは、恥ずかしくて言えなかった。

 学園の最後の日だというのに、今日も草花の世話をするアリアを見て、俺達が卒業したら誰がここを世話するのだろうか。

「今度からは、緑化委員の子がここの面倒を見てくれるそうよ」

 俺の考えていたことが分かるのか、そんな事を教えてくれた。

「そっか。それなら良かった。せっかくこんなに綺麗に咲いているのに、今度から誰が見てくれるんだろうと少し心配だったんだ。でも、緑化委員なんてあったっけ?」

「私が先生たちにお願いしたの。そしたら、今年からは緑化委員会を作るから安心してって言われたわ」

「まじか。わざわざ委員会作ってくれたのか。良かったなー、お前ら」

 草花に話しかけながら水を与えていく。心なしか、花たちも喜んでいる気がする。

 作業が終わり、さていつ話しをしようかと考えていると、アリアがベンチに座り、その隣をトントンと叩いて俺を見る。
 これは隣に座れってことか。そう思って、隣に腰を下ろす。何も言われないところを見ると、合っていたようだ。

「ウィリアム、あなたにお礼を言いたかったの」

「え?」

「ずっと、作業を手伝ってくれてたでしょ。とても助かったわ。ありがとう」

「あ、いや、それを言うなら俺だって。ここはいい隠れ場所だった。ここにいることを許してくれてありがとう。それに、ここで過ごした時間はとてもいい思い出になった」

「ふふっ。私もとてもいい思い出になったわ」

 そう言って笑った顔がすっげー可愛かった。アリアは表情が変わらないことが多くて、クールビューティ的な感じだが、笑った顔が可愛くて俺は一番好きだ。

 もう少し話していたいと思い、何か話題はないかと咄嗟に出たのが「卒業したら結婚するの?」だった。
 いや、なんでそんな話を振ったんだ俺は。
 アリアもなぜそんな事を聞くんだというような表情をする。

「あー、そのー、ルイがさ!   ずっと好きだった子と婚約してたんだけど、すぐにでも結婚したいって言ってて、卒業したらすぐ結婚するとかなんとか言ってたから、アリアって婚約者とかいるのかなとか思って」

 こんな事を聞いてどうするんだ俺。いつ結婚しようがアリアの勝手だろ。いや、でも急に結婚したと知るよりは、あらかじめいつ結婚するのか聞いていたほうが、失恋の心の準備はできるな。

「……詳しくは決まっていないけど、二年か三年後に多ゼンと結婚すると思うわ」

 え?

「あ、え、あー。そうなんだ」

 そうか。ゼンとか……アリアの側近候補だもんな。基本いつも一緒にいるし。てか、聞いていなかったが二人はそもそもそういう関係だったってことか?
 まじか……それなのに俺と二人っきりで会ってて良かったのか?

 自分で聞いたくせに、思った以上にダメージがでかい。ぐるぐる頭の中で、アリアとゼンが仲良く恋人同士として二人並んでる姿が浮かぶ。と、同時になぜか【このオメガは俺のだ】という考えが頭を埋め尽くす。

「あ、別にゼンと恋人同士とかじゃ……」

 アリアは慌てたように何か言っているが【このオメガは俺のだ。ツガイにしなければ。他の男に取られないように】と、俺の頭はそれしか考えられなくて、俺はアリアを押し倒した。










 ふと正気に戻った。
 アリアを押し倒したことまでは、何となく記憶に残っている。
 はっ、と自分に組み敷かれているアリアを見ると、制服は無理に脱がされたせいで所々破れていて、声を押し殺して泣いていた。
 しかも、俺は無意識にアリアのうなじを何度も噛みついていたようで、うなじからは血が流れている。

 さぁー、っと血の気が失せた。

「アリア!   ごめん、大丈夫か?」

 押し倒されたままでいるアリアの手を引いて起こそうとしたら、鳩尾を思いっきり蹴られた。
 ゲホッっと、うずくまった隙にアリアは俺の下から抜け出した。「なんでこんなこと……」とボソッと言って、ボロボロの体で温室を出ていってしまった。

 その後ろ姿を見て、何をやってるんだと自分を責める。
 何が『俺のオメガだ。ツガイにしなければ』だ。
 アリアはアルファだからそんなの無理に決まっているのに、あんな無理強いをするなんて。
 こんなのただの強姦じゃねぇか。

 最悪だ。なんであんな事をしてしまったんだ。
 いくらアリアが好きで他の男と結婚するかもとショックを受けたからって、何をやってるんだ俺は……


感想 0

あなたにおすすめの小説

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです

阿里
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。 けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。 助けた騎士は、王の右腕。 見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。 王城で評価され、居場所を得ていく私。 その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。 「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。 選ばれるのを待つ時代は、終わった。

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

良綏
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

愛を知った私は、もう二度と跪きません

阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。 家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。 「呪われた男にでも喰われてこい」 そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。 彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。 その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。 「エカテリーナ様、どうかお助けを!」 かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

皇太子殿下は、幼なじみに触れていないと落ち着かない

由香
ファンタジー
幼い頃から一緒に育った皇子は、なぜか距離が近すぎる。 後ろから抱きしめられ、手を取られ、頬に触れられるのが当たり前の日常。 やがて彼は皇太子となるが――その距離は変わらないどころか、むしろ深まっていき。 「触れていないと、落ち着かない」 公の場でも離してくれない彼の執着に、周囲は騒然。 けれどその腕の中は、どうしようもなく安心してしまう。 これは、幼なじみの距離のまま始まる、逃げ場のない溺愛の物語。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。