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あれから五年があっという間に過ぎた。
アリアには訴えられたりしていないし、俺の所に警察が来ることもなかった。
卒業したばかりの頃は、あの時の事をなんとかして謝ろうと二人で話せる機会はないかと伺っていたのに、話すどころか会うことも殆どなかった。
お互いに家の仕事をするようになれば、王城で会うこともあるかもしれないと思ったのに、最初の頃はとにかくお手伝い程度の仕事しかさせてもらえなかったから、城に行くなんて出来なかった。
なんとか仕事をこなして城にも連れて行ってもらえたのは、それから半年ほど過ぎた頃だった。
アリアも家の仕事の手伝いをしているなら、城にも来ているだろうと思えば、体調が悪いということでしばらく別荘で療養しているとの噂を聞いた。
別荘で療養しなければならないほどの体調不良なんて心配でしかない。でも、もしかしたら俺に会いたくないからそうしているのかもなんて勘繰ってしまった。
卒業して二年が過ぎたあたりから、城で時々アリアを見かけるようになった。
体調不良での休養だったのは、事実のようだった。
肌の白さはむしろ青白いくらいだし、目の下には隈があった。頬も少しこけていて、まだ療養が必要なんじゃないかと心配になる。
それでもシルバー家の当主、ジェームズ様の後について仕事をこなすアリアを何度も見かけた。
もう思い出したくもないだろうが、なんとか謝罪がしたい俺は二人で話せないか様子を伺う。
しかし、常にジェームズ様かゼンが側にいてなかなか話しかけられずにいた。
そんな感じで五年も過ぎでしまったのだ。
もう五年も過ぎてしまったが、俺はまだアリアに未練がある。謝罪したいのはもちろんだが、アリア以上の女性にこれから出会える気がしない。
周りからはそろそろ身を固めるべきだという圧も強い。
そういえば、アリアは卒業後ニ、三年したらゼンと結婚するかもと言っていたのに、アリアが結婚したなんて話は聞いたことがないな。
今日も今日とて、仕事の手伝いで城へ向かいアリアと話すチャンスはないかと思ったのに、そもそも今日はアリアは城には来ていなかった。
はぁ……いつになったら、アリアと話せるんだろうか。
そんな鬱々とした気持ちを抱えながら、仕事終わりに街をブラブラしていると、見知った顔がこちらに手を振って向かってくる。
「おーい、ウィリアム様! ちょうど良かった、迷子です」
そいつはゴールド家の者ではないが、鍛冶屋の息子で交流のある男だった。
「ダッドか。それで迷子って……」
ダッドの足の後ろから半分だけ見えた男の子は金の髪をしていた。特徴からいって、ゴールド家の近親縁者だろうから、俺に声をかけたのかと合点がいった。
「それにしても、ウィリアム様もなかなかやりますねぇ。隠し子がいたなんて」
「は?」
何を言っているのか意味がわからない。
だってほらこの子、と迷子の男の子を抱き上げて俺に見せる。
驚くことに、子は小さい頃の俺にそっくりだった。
「は? え?」
「ほら、坊主。パパだろ?」
なんて、ダッドが男の子に話しかけると不安そうにしていた顔がいきなり泣き出した。
「うわーん、パパじゃない。パパじゃない。ママー」
えぐえぐと泣き始めた男の子に、大人の男二人でオロオロしてしまう。
「ごめん、ごめん。すぐにママを探そうな。って、ことでウィリアム様あとよろしくお願いしまーす」
そう言って、男の子を俺の腕に押し付けるとダッドは走っていってしまった。
まじかよ、どうしろっていうんだ。
「ひっぐ、ひっぐ。ママぁ」
「あー、ママを探そうな。お前、名前は?」
「……」
「どうした? お名前言えないか?」
「し、しらない人に、おなまえ、いっちゃ、ダメって」
「なるほど。でも、ほらみろ。俺と君の髪と目の色が一緒だろ。仲間だ」
男の子はジッと俺を見るとさっきまで泣いていたのが嘘のように、泣き止みパッと顔を明るくさせた。
「ほんとだ! おじちゃん、ぼくといっしょだ」
「おじちゃんって……まぁいいや。仲間だから、お名前教えてくれるか?」
「あのね、ぼくね、リアンっていうの」
「そっかそっか。リアンか。きっと、俺の家に行けばお前のママを知っている人がいると思うから一緒においで」
「うん!」
元気よく返事をしたリアンは俺に抱っこされながらニコニコしている。
こんだけ俺に似ているけど、俺には心当たりがない。それなら、きっと俺の父親なら心当たりがあるはずだ。
きっと、家に帰ったら修羅場になるだろうが早くママを探してあげるのが一番だよな。うん。
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