障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第1障『禁断症状』

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今から約2万5000年前、ここ『エゲツ大陸』の中心に『エツピ王国』と呼ばれる大国があった。かつて、そこには大魔王を倒した8人の勇者達が住んでいた。人は彼らを『障王しょうおう』と呼ぶ。

現在、カイムの村にて…

「んッ…ダァァァァァァァァァァァァァァァァァア~!!!?!?!??!!!」

とある青年が地面に倒れ、もがき苦しんでいる。
この少年の名はナツカ。この物語の主人公である。

「兄ちゃん!しっかりして!!!」

そこへ、弟のリョウカと村人たちが駆けつけてきた。

「いつもの発作か⁈」
「俺、ナツカの母さん呼んでくる!」

ナツカの家にて…

村人がナツカの家にやってきた。

「大変です!ナツカが!」
「え⁈またぁ⁈早くコレをあの子に…!」

ナツカの母は村人に、白い錠剤型の何かを渡した。

ナツカの元にて…

「おーい!持ってきたぞ!」
「ありがとう!!!」

リョーカは村人から、その白いブツを受け取り、それをナツカに飲ませた。

「あ…あぁ…あぁ~~~~~~!!!おいしぃ~~~~~~~!!!」

ナツカは正気に戻った。

その夜、ナツカの家にて…

ナツカ,リョーカ,ナツカの母は夕食を食べている。

「ダメじゃないの!お薬ラムネは常備してなきゃ!」
「スマネェ…」

ナツカは薬物ラムネ依存者である。その為、ラムネを定期的に摂取しなければ、昼間のように禁断症状が起こるのだ。

「ホント、ナツカったら白ラムネが好きなんだから…」
「兄ちゃん、白ラムネがこの世で一番好きって言ってたもんね!」
「あぁ~~~⁈一番はルゥミアたんじゃい!!!」

ナツカの言うルゥミアとは、ナツカが薬物ラムネ摂取により、どうかしてしまった頭の中で生み出された架空の女の子である。ちなみに自身でルゥミアのグッズも作ったりしている。

「兄ちゃんの唐揚げもぉ~らい!」
「こらこら、リョーカったら…」

取られている唐揚げを気にも止めず、ナツカは微笑んでいた。

「…幸せダなぁ…」

ナツカは思わず口ずさんだ。

「ん?兄ちゃん今なんか言った?」
「んんん!なぁんでもねぇよ!バカやろぉ!」

翌朝、村はずれの畑にて…

ナツカは畑を耕していた。

「はぁ…しんどい…(でも、母ちゃんやリョーカの為にも頑張らねぇとな…)」

その時、とある村人が血相を変えて、ナツカの元へ走ってきた。

「大変だー!魔物の大群が攻めて来たぞー!」
「はぁ~⁈ヤベェじゃん!!!さっさと村に戻ら…んッッッッ⁈グハッ!!!」

その時、ナツカは禁断症状を発症し、地面に倒れた。

「く…そ…ッ!こんな時に…禁断症状が…ッ!!!」

ナツカは予備の白ラムネを探した。

「(無い⁈そ、そうダった…全部、畑に植えちまったんダ…!)」

ナツカは、ラムネを植えるとラムネの木がなると信じていた。
ナツカがアホな事してる間も、魔物達は村を破壊し続けている。

「(は…早くしねぇと…みんなが…母ちゃん達が…!)こ、コレは!!!」

なんと、ナツカのパンツの中から、昨日描いたルゥミアのスケベェな絵が出てきた。

「あら可愛い…♡」

ナツカは絵が上手い。

数十秒後…

「はッ!ダメじゃ!見惚れてる場合じゃねぇぞワシ!」

ナツカは立ち上がった。

「(ありがとう、ルゥミアたん。君のおかげで、何とか禁断症状を抑える事ができた。)流石、ワシの嫁。」

ナツカは急いで村へと向かった。

「(待ってろい!母ちゃん!リョーカ!今行くからな!)ダァーーーー!!!」

カイムの村にて…

家や畑は破壊され、地面には村人達の死体が転がっていた。

「ひ、ひでぇ…」

その時、ナツカの背後から老人の声がした。

「ナツカよ…」
「長老様。」

ナツカの背後には、長老、数人の村人、そして、ナツカの母とリョーカの姿があった。

「母ちゃん!リョーカ!良かった!無事ダったんダな!」
「ナツカ…」

ナツカの母は涙を流していた。

「な、なんダ…?何で泣いてんダよ…?」
「とうとうこの日がやって来てしもうた…」

ナツカの母はナツカを抱きしめた。

「か、母ちゃん…?」
「ナツカ、よく聞いて。私は貴方の本当の母親じゃないの。」
「は…オメ、何言っちゃってくれちゃってんの…?」

ナツカは母と周りの村人たちの様子を交互にキョロキョロ見ている。皆、深刻な面持ちだ。

「でもね、ナツカ。私にとって貴方はリョーカと同じ…かけがえのない私の息子だから…!」

その時、リョーカがナツカに話しかけた。

「兄ちゃん…」

リョーカは泣きそうな顔をしている。

「何があっても…兄ちゃんは俺の兄ちゃんだから!」
「リョーカ…」

ナツカの母も涙ぐんでいた。

「ナツカ…愛してるわ…」
「…どういう事ダよ…!」

そこへ村人が運転する馬車がやってきた。

「ナツカよ。お主にはやらねばならぬ使命がある。こんな所で死んではならんのじゃ。」
「ちょっと待てよ!訳分かんねぇよ!使命って何ダよ!!!」

その時、馬車の運転をしてきた村人が強引にナツカを引っ張り上げ馬車の荷台に乗せた。

「母ちゃん!!!リョーカ!!!」

その時、ナツカのポケットからルゥミアのスケベェな絵が落ちた。

「ルゥミアた~~~~ん!!!」

村から少し離れた湖にて…

馬車は湖の周りで止まった。

「…みんな…」

揺れる馬車の中、ナツカはずっと下を向いていた。襲われている村や家族のことを考えていたのだ。
運転していた村人が荷台に乗り、俯き続けているナツカの前でしゃがみ、肩に手をかけた。

「長老様からの伝言だ。ココから北、チハーヤ王国へ行け。そうすれば全てが分かる、との事だ。」

村人はナツカの肩から手を離し、立ち上がった。
それと同時に、ナツカはその村人の顔を見上げた。

「一緒に来てくれねぇのか…?」
「俺は村へ戻る。」

ナツカは再び、下を向いた。

「ダメだ…今更行ったって…もう…」

村人は目を閉じて言った。

「コレが俺の使命だ…」

村人は荷台から降りた。

「使命…」

ナツカは渋々荷台から降りた。
それを見た村人は馬車で村へ戻っていった。

カイムの村にて…

とても筋肉質で2mを優に超える身長を持つ魔物が、馬車を運転していた村人の千切れた頭部を鷲掴みしている。

「エロイエロイサバクタニ…」

静かな村でドスの効いた濁声だけが響いている。
そこへ、二匹の下っ端の魔物がやってきた。

「すみません!レイパーT様!何処にも見当たりません!」
「おそらく、逃げられた模様…」

どうやら、この魔物はレイパーTという名前らしい。
報告を受けたレイパーTの顔が険しくなってくる。

「何やと⁈んん~~~ッ!!!」

それを見た下っ端の魔物らは己の死を悟った。

「罰ゲーム!!!レ~イ~プ~!!!」

レイパーTは怒り狂い、その2体の魔物を殴りつけた。

「「うぎゃぁぁあ!!!」」

魔物らは死んだ。

「殺すの早いねん…あーん!!!」

そこへ、漆黒のローブで体を覆い隠している魔物が現れた。身に纏ったローブからは細長い首を覗かせ、その首の先には一本の毛もない頭部が太陽に照らされ、光り輝いている。

「マイアンか…」

レイパーTはそのローブの魔物、マイアンに気づいた。

「魔王様は復活してまだ間も無いねん。やから、おっちゃん達は部下を大切にせなアカンねん…あーん!!!」
「役立たずはってもらんでも同じやろ!姦淫かんいんして終いや!」
「お前さん、めっちゃ鬼畜やねん。めちゃきち♡」

マイアンは興奮している。

「ところでマイアンよ!姦淫って意味知ってるか⁈」
「レイプやねん…あーん!!!」
「ん~!!!大正解!!!ご褒美!!!クレ~イ~プ~!!!」

次の瞬間、何も無い所から突如クレープが現れた。そして、そのクレープをマイアンにあげた。

「ありがたいねん!おっちゃん甘いもの大好きやねん!まぁオチンチンも大好きですけど…♡」

魔王城にて…

猫を頭に乗せた少年が、何やらモニターのような物を覗き込んでいた。

「ナツカ…か…」

少年は頭の猫を床に下ろした。
するとその時、なんとその猫は少年を見上げて人語を喋り出した。

「行くのか?」
「うん。アイツ、見込みあるから。ちょっかいかけてくる。ヤブ助、留守番よろしく。もょもとの事、頼むわ。」
「…油断するなよ、ガイ。」
「するよ~ww油断は強者の特権だぞぉ~ww」

猫はその少年を見つめている。

「そうか…」
「んじゃ。」

少年は何処かへ消えた。

「…見込み、か…(それは、どっちのお前の言葉だ…?)」
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